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デザインスクール留学からの就職・転職活動について:エンジニアからのキャリアチェンジ体験(3/3)

デザインに縁もゆかりもなかったエンジニアが、デザインスクールに留学してからのキャリア選択、デザインスクール出身者の転職市場でのニーズなどについて、実体験を踏まえて、まとめています。3つの記事に分けて書いています。

1.キャリアの選択肢についての探索活動

2.留学している現地での就職活動について

3.現地から日系企業へのリモート就職活動について

1つ目の記事はこちら、2つ目の記事はこちらです。

エンジニアやビジネス系職種の人がデザイン留学を検討するにあたり、日本の転職市場におけるデザインスクール出身者へのニーズは実際のところどうなの?どうやって就活進めるの?といった疑問や不安があるのではないでしょうか。

最後となるこの記事では、現地フィンランドから日本の企業へリモートで就職活動したときの経験をまとめます。私が就活した2019年2月〜4月時点での情報です。

(デザインのなかでも、海外デザインスクール出身者の希望が多いであろう、ビジネスデザイナー 、サービスデザイナー、ストラテジックデザイナーなどの経営や新規事業、公共サービスの上流から携わるポジションに絞ってまとめています。)

目次
3-1.デザインスクール出身者の転職ニーズ
3-2.  実際、就職活動してみて
3-2.  就職活動で活用した手段
3-3.  まとめ:フィンランドでの就職活動と比べて

3-1. デザインスクール出身者の転職ニーズ

まず、デザイン留学後のキャリアの選択肢を、コンセプチュアル(考える)ー実行(動く)、職人(ひとり)ーマネジメント(みんな)の2軸に分けて、次のように4領域に整理してみました。

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① コンセプチュアル×職人気質
・少数精鋭のデザインコンサルティングファーム
・0-1を専門とするイノベーションコンサルティング会社

② コンセプチュアル×マネジメント
・ワークショップを用いたデザインコンサルティング会社
・戦略系コンサルティングファームのデザインポジション
・広告系のデザインファーム・大企業のデザイングループ
・地方公共団体などのパブリック系のデザインポジション

③ 実行×職人気質
・アート系あるいは設計事務所的なデザインファーム
・制作系の中小規模の事業会社

④ 実行×マネジメント
・ハンズオン型のイノベーションファーム(VC機能を備えるコンサルなど)
・デジタル系のスタートアップ(デザインへの理解あり)
・大企業のデザイングループ、または、イノベーション部隊

※ あくまでもざっくりとした整理です。企業によって異なると思いますし、例えば、①の領域の企業でも、②〜④に含まれる仕事もするなどあると思います。

こうして整理して見ると、意外と多くの選択肢があります。

①と②の領域は基本的にクライアントワークで、クライアント(大企業が多い)の新規事業やサービス開発を支援するプロフェッショナルとして働くイメージです。海外デザインスクールの卒業生の多くは、こちらのコンセプチュアルな領域で働いている人が多いのではないでしょうか。この領域の企業は積極的に情報発信を行っているケースが多いと思います(クラインアントから知ってもらう必要ある)。デザインに関するイベントでの講演や、デザインの価値についての情報発信を積極的に行っている領域でもあります。そのため、就職活動を進めるうえで、どんな企業があるのか、どんなポジションを募集しているのかについて比較的容易に情報が手に入ったように思います。実際、求人も多かったように思います。

民間企業に加えて、国や地方の公共団体でもデザインに対する意識が高まっているような気がします。実際、一部の地方公共団体で、街づくりやベンチャー支援などの分野でデザインポジションを募集しています。

③と④の領域の企業では、自らがコンダクターとなり、新規事業の開発や、サービスの企画をする、ポジションになると思います。特に、デジタル領域の事業会社はデザイナーの採用を強化している気がします。大企業の場合は、HPを見れば求人情報がオープンになっていることが多く、海外に留学しながらも情報を集めることができます。

しかし、海外デザインスクール出身者にとって、事業会社への就職は一般的ではないのが現状だと思います。なぜなら、事業会社のなかでのデザイナーの役割は、ほかの事業開発者が考えた企画を分かりやすく伝えたり、エンジニアが途中まで開発したプロダクトのビジュアルを整えるといった、極端な言い換えをすれば、下請け的な業務が多いのが現状ではないでしょうか。このようなプロダクトデザイン、グラフィックデザイン、コミュニケーションデザインの領域は確かに重要ですが、海外デザインスクール出身者が強みとする(希望するであろう)、コンセプト段階からデザインしてくビジネスデザイナー、サービスデザイナー、ポジションはまだ少ないと感じています。


3-2.実際、就職活動をしてみて

上で③と④の領域は求人が少ないと書きましたが、それでも、私の場合は、④の領域である、事業会社のイノベーション部隊、あるいは、ハンズオン型のコンサルティングファームを留学後のキャリアとして志望していました。また、デザインポジションのなかでも、ビジネスデザイナー、あるいは、ストラテジックデザイナーとして、コンセプチュアルの部分から、実行フェーズに至るまで関わることができる企業を探していました。

上で書いた通り、事業会社やハンズオン型のコンサルティングファームのなかで、ビジネスデザイナーなどへの理解がある企業が少なく、そういった職種を設けている企業はほとんど見つかりませんでした。事業会社では、ビジネスデザインというポジションは、新規事業開発担当者という括りをされたり、コンサルティングファームでは、ストラテジーコンサルという形で表現されることが多く、デザインドリブンな事業開発の仕方は一般的ではありません。MBAで学ぶような事業開発プロセスをとっている会社が多いと理解しています。

それでも私の場合は2社希望にある会社を見つけることができました。ビジネスデザイナー、ストラテジックデザイナーのポジションで働ける事業会社とハンズオン型のコンサルファームの2社から内定をいただくことができました。そのうちの1社で現在働いています。

現状、求人の数は極端に少ない領域ですが、逆に言うと、マッチングする人も少ないようです。事業会社での事業開発やプロジェクトマネジメントなど、数字で考えたり、泥臭く行動をしすることと、デザイン留学によって培われるコンセプチュアルだったり、人間中心のアプローチを併せ持つことが求められるニッチな領域であり、その分、就職活動は進めやすかったと思います。デザイン・クリエイティブといった領域に全く関係のない、ビジネス系の職種やエンジニアをしている人が、逆張りともいえる、デザイン留学を経験することによって、スキルや経験の掛け算により、キャリアを構築していくことができる領域なのではないでしょうか。


3-3. 就職(転職)活動で活用した手段

中途採用における転職活動では、次の手段があるかと思います。

1.転職エージェントに登録して、紹介された求人に応募する
2.企業のHPから直接応募
3.ビズリーチやLinked-Inに自分の情報を登録して、スカウトを待つ
4.友人や知り合いの紹介

1の転職エージェントは一般的な方法だと思いますが、海外から登録できないエージェントが多く、あまり利用しませんでした。唯一使わせてもらったのが、デザイナーの転職に特化したRedesignerさんです。デザイナーとしての職能のところで触れましたが、デザインと言っても多様な選択肢があり、その事情を分かってくださるキャリアアドバイザーの人に相談できる点で、とても良かったです。

2の直接応募については、本当に行きたい会社があるなら、これが1番速いと思います。海外から応募できない(面接が受けられない)会社もあるのかもしれませんが、私が受けた会社はZOOM(オンラインウェブ会議)で面接を進めてくれました。回答もエージェントを通していないからか、早かったです。転職エージェント経由よりも、確実に志望度の高い人を採用することができるので、企業人事も採用しやすい(?)と言っていました。

3のビズリーチやLinked-Inには自分のキャリアを登録しておくといいのではないでしょうか。デザイン留学を挟むと、個性的なキャリアになることが多く、企業側がピンポイントで、サービスデザイナー、ストラテジックデザイナーを探している場合、連絡を受けやすいと思います。実際、私も2社から連絡をいただいて、オープンになっていない求人をいただくことができました。

4の友人の紹介はオススメです。デザインスクールに留学していたり、業界で働いている人たちに自分の希望を伝えて、相談に乗ってもらうのが良いと思います。希望に合いそうな会社を教えてもらうこともできるし、中の人を紹介してもらうこともありえると思います。私も一緒に留学している人に、相談していたら、相性の良さそうな会社の人に繋いでもらったことがあります。この場合、ミスマッチも少ないですし、お互い信頼できるので、話も進めやすいと思います。

他にもSNSを使う方法などもあると思います。それぞれの手段によって、異なる企業や人達と繋がることができたので、迷っている人はとりあえず、試してみるといいと思います。


3-4. まとめ:フィンランドでの就職活動と比べて

フィンランドでの就職活動と比べて、いろんな社会の仕組みにおんぶに抱っこされている感じで、比較的容易に希望する会社やポジションの話を聞くことができました。

また、日本でのビジネスデザイナーやサービスデザイナーといった新しいデザインの領域はニーズが増している一方で、この領域に精通しているデザイナーはまだまだ少なく、需要が大きい(ニーズがある)状態だと思います。

しかしながら、フィンランドと比べて、事業会社におけるデザイナーの役割や価値に対する仕組みは遅れている印象を受けました。フィンランドの事業会社の人と話すと、当たり前のように、インハウスのビジネスデザイナー、サービスデザイナーなどがいると聞きます。文化による違いもあると思いますが、日本でも、もっともっとデザインの力を、経営に、事業に、公共サービスに活用していく組織が増えるといいなと思います。

そのためには事例が大切だと思います。例えば、デザイナー出身の起業家やサービスオーナーがどんどん出てくる、サービスデザインの思想から生まれた公共サービスが世界から注目される、など理想をみんなで分かりやすく共有できるといいのだろうと思っています。

4.終わりに

私自身も、デザインプレナー(デザインドリブンな新事業開発者や起業家)の成功モデルとなれるようビジネスデザインの仕事をしております。コンセプチュアルな仕事から、実際の事業の実行・マネジメントに至るまで、関わることができるチャンスがあり、とても感謝しております。

並行して、デザインプレナーをハンズオン型のデザインプロジェクトを通して育成するため、企業やユーザーとコラボしながら価値を創出していくようなプログラムを作りたいと思っています。私がデザイン留学で最も学びが大きかったのが、この体験型学習(仕事)だったという原体験があります。こちらも徐々に活動しながら、つながりを作っていきたいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。少しでも参考になれば嬉しいです。他にも知りたい項目などありましたら、ぜひコメントください。

Photo at Turku City Library, Turku, Finland

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