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不登校児の親が「子どもと一緒にビデオゲームで遊ぶ」だけのサービスをスタートした理由

子どもが不登校になって4年め。学校との付かず離れずの付き合い、続かない習いごとや自主学習、慢性的な運動不足、なんとなくの閉塞感や焦燥感……。そんなことにモヤモヤしているときに、知り合いの大学生にお願いし、「子どもとオンラインでビデオゲームをする」という遊びをやるようになりました。

それからというもの、子どもに活力が湧いてきたような気がしています。私の中でいろいろなことがつながり、ずっとこれを続けたい、さらには、他の人にも提供したい、と思うようになりました。

学校は行かなくてもいい……でも、学習はどうしよう

毎年、夏休みの終わりに不登校キャンペーンを目にします。

「学校へ行かなくてもいい」

「逃げてもいい」

それらは、本当に切羽詰まった子どもには絶対に必要なメッセージです。でも、私たち親子は焦って学校へ行こうとは思っていません。

「学校へ行かなくてもいい」のはわかったけど、そのあとどうすればいいのだろう。親だけでなく、子どももきっと感じていることだと思います。

ずっとゲームをしているのはよくない気がする。でも、だからといって何をすればいいのか。子どもがひとりで勉強するのはとても難しいことです。大人だって、時間がたっぷりあったとしても、それを学習に充てるのは簡単ではありません。

そのためのペースメーカーを探してもみました。スタサプ、家庭教師、塾、TanQuest、すらら、進研ゼミ……。それぞれはとてもいいサービスだと思います。ただ、親の時間が取れないのもあり、なかなかうまく続きません。

外の世界と接点が欲しい

それならせめて、子どもが外の世界を知れるように、イベントなどに連れて行ったらどうだろう? 楽しげなイベントは、いろいろな人や団体が企画しています。

どんなにいいイベントがあっても、子どもの行動範囲は意外と狭いもの。電車を乗り継いでいくのは骨が折れるようで、少し遠いと「行きたくない」と言います。

子どもはイメージできないところには不安が強いうえ、楽しみが想像できず、ネガティブな感情が先立ってしまうようです。近いところを探してみるも、参加できるのはたまに。情報集めも簡単ではありません。

近くのフリースクールも見てみましたが、子どもが「行かない」と言えば無理やり連れて行くわけにはいきません。

外の人との接点は欲しいものの、コロナだからままならない。そんなジレンマを抱えていました。

運動などの習い事を考えてみるも、「教える」ものばかり。うちの子どもたちは教えられるのが嫌いです。サッカーなど体を動かすことが大好きなのに、厳しいことを言われたり、上下関係が厳しいのも苦手……。人のことなら「そんな勝手なことを言って」と思いますが、わが子の場合は何かしら上手くいく場所を見つけたいと考えます。

学校に行っていれば、友だち同士で楽しめる活動はありますが、それ以外で「教えない」サービスがあまりないのです。大人は子どもをコントロールしたくて、親は子どもに何かしらの成長を求める。その結果「指導する」がサービスの中心になっているのでしょう。

指導せず、子どもに寄り添ってくれて、子どもの「やりたい」を優先してくれる……そんなサービスはないのだろうか。また、そんな教育者に出会えないだろうか。

全国各地にはいると思います。でも、子どもが通える範囲でなくてはなりません。子どものために引っ越しをする親御さんもたくさんいらして、とてもすごいと思います。ただ、我が家では今のところ引っ越しという選択肢を取っていないので、別の方法が必要です。

まず、日常を楽しくすることから

いきなり「学習へ向かってほしい」「外の人とコミュニケーションを取ってほしい」と期待する前に、日常を楽しくすることから始めようと考えました。

知り合いが「ときどき遊びに付き合おうか」と言ってくれましたが、わざわざ自宅の近くまで来ていただくのも申し訳なく……。「お願いしたい!」と思いつつ積極的に動けないままでした。お声がけくださった方、ごめんなさい。

そんなとき、私自身が子どもと一緒にマインクラフト(子どもに人気のビデオゲーム。通称マイクラ)をすることがありました。私は初心者で下手なのに、子どもはとても楽しそう。純粋にゲームを楽しむという意味では、下手な人と一緒にやると足手まといではないかと想像します。でも、なぜ楽しいのか。それは「自分の世界を誰かと共有したい」「楽しい気持ちを一緒に味わいたい」ということなのかと想像しました。

ただ、やはり私自身がそれほど頻繁には付き合えないでいました。

そんな折、不登校支援をしたいという大学生と知り合うことができました。その人は「ビジネスの相談」ということで私とのディスカッションを希望してくださったのですが、私は自分の子どもをなんとかしてほしくて「ときどきオンラインでマイクラしてくれませんか」と持ち掛けます。

うちの子どもは「Zoomの前に座っておしゃべりしよう」と言ってもすぐにつまらなくなってしまいそうです。あまり親しくない人とのおしゃべりで楽しいのは大人だけ。子どもは「一緒に遊ぶ」ことが大切なのだと思っています。

ボール遊びや鬼ごっこができればベストですが、それではハードルが高いから、オンラインで一緒に遊ぶ。その中で、「大人の人と本音で話す」というコーチング的なことができたらいいなという目論見もありました。

それが「ゲームdeコーチング」の始まりでした。

大学生とマイクラして、子どもに起きた変化とは

コーチング的会話をしてほしいと思ったものの、実際にはゲームの話しかしません。

「これ、作ったよ!」

「ここ、お願い!」

「ミスしちゃった、ごめん!」

「ゲーム、楽しいよね!」

「こうやるんだよ!」

「やってあげたよ!」

「また来週ね~!」

などなど。横で聞いていてコーチングには程遠いな……と思いつつ、子どもは楽しそうなので続けることにしました。

2~3回やってみると、なんだか子どもに変化が訪れたような気がします。

まず、何かに誘いたくて「やる? やらない?」と聞いても「わかんない」と言っていたばかりの子どもが、やりたいときには「やりたい」と言うようになります。

その後、一緒にプログラミングの動画を見ていると「これ俺もやりたい!」と言います。自分で見つけたアスレチック動画に「ここ行ってみたい!」、料理動画に「これ作りたい!」などなど。ほかに、「今日の晩御飯はこれ食べたいな~」なども積極的に言うようになりました(なぜ、今までは言ってこなかったのか? 子どものこころは不思議です)。

私自身、「子どもを思う味方学(記事の最後にリンク)」をしたり、子どもに関係するコミュニティに入ったりして、子どもとの接し方が変わった可能性もあります。でも、ゲームdeコーチングの影響は多大にあるような気がしました。なぜなら、セッションを実施した日にはとてもよくしゃべり、活動や笑顔が増えるのです。

ゲーム中、子どもに起こっていること

なぜこんなことが起きるのだろう? と考えたときに、私がこれまでに読んだり聞いたりしてきた子育ての知識がいろいろと重なってきました。

※これから説明することは、あくまで私の仮説です。

ゲームをしながら子どもの内面で起こっていること(私の仮説)

「これ、作ったよ!」→好きなものを共有する喜び

ゲーム内で何かを作っても、共有する人がいません。自分の好きなものを誰かと共有することは、大人でも嬉しいもの。普段友だちと話すことがない不登校の子どもにとっては大きな喜びなのではないでしょうか。

「ここ、お願い!」→社会の大人を信じて頼る練習

不登校の子どもは、いったん「学校」という「社会」に絶望したと言っていい。社会の大人に頼ったり、甘えたり、助けてもらうことができなかったのです。でも、ゲームの中でなら、相手を頼ることができます。大人でも、現代人はとても頼り下手。小さなことから頼る練習と経験が大切だと考えています。

「ミスしちゃった、ごめん!」→迷惑をかけても嫌われない経験

不登校の子どもの多くは、「できないこと=学校に行けないこと」を非難された経験があります。知らない人に迷惑をかけるのは怖いものです。でも、生きていくとは、お互いに迷惑をかけ合うことではないでしょうか。ゲームではいろいろなリスクを負ってチャレンジするので、ミスはつきものです。相手に迷惑をかけても嫌われないし、むしろ楽しい。その経験が自信を付けるのだと思います。

「ゲーム、楽しいよね!」→大好きなものを否定されない経験

多くの子どもは親にゲームをある程度は否定されています。「ゲームばかりしていないで早く○○しなさい!」と怒られる。でも、それを否定されず、さらには相手もゲームが大好きで、一緒に楽しんでくれているのです。改めて自分のこととして考えると、「自分の好きなものを否定される」のはどれほどつらい経験でしょうか。それが肯定される場所ができるのです。

「こうやるんだよ!」→教える喜び

子どもは教えるのが大好きです。「こういうことがあったんだよ!」「ママ、これ知ってる?」いろいろなことを教えようとします。でも、親はそれほど付き合ってあげられないうえ、大人のほうがよくわかっていることも多いもの。でもゲームの中は違います。自分がよく知っていること、体験から知ったことを、大人に教えることができる。「教える力が伸びる」と教育的な言い方もできますが、「教えるのが楽しい」という気持ちを満たせることに価値があるのではないでしょうか。

「やってあげたよ!」→役に立てる喜び

日常でも、家事の手伝いなど、親の役に立てることはあります。でも、それは親よりも上手ではないのです。でもゲームの中は違います。本当に自分が好きで自信があることで、人の役に立てる。「強い武器を用意しておいたよ!」と、大人の人に親切にして、感謝される。そのため、ゲーム内では優しさを発揮しやすいのです。少しの労力で、あるいは本当に好きなことで人に感謝されるなら、それを積極的にしてあげたいと思うものなのではないでしょうか。

「また来週ね!」→生活のメリハリや楽しみ

毎週の楽しみができることで、不登校の子どもの生活にも少しメリハリがつきます。大人でも、何か月も休みをもらったらメリハリをつけて生活するのは難しい。曜日の予定はあったほうが、リズムが取りやすいはずです。それが楽しいことならなおのこと。

ゲームdeコーチングを他の人にも提供したい

やってしまえばなんのことはない。大学生とゲームをしているだけです。でもそれくらい、不登校の子どもには、誰かと一緒の楽しみや遊びが不足しているのでしょう。

また、親がゲーム好きなら親が一緒に遊んでもいいでしょう。「外の人と接点がある」ということ以外は、親でもできることだと考えます。

でも、実現できる家庭(子ども)は多くはないのではないでしょうか。それは私自身がとても実感しています。

そのため、他の人にもサービスを提供したい、と考えるようになりました。子どもと一緒にゲームをしてくれる大学生を探して、不登校でニーズのある子どもとその親御さんにサービスとして提供する。また、事後のレポートで親御さんにお子さまの「好き」や「得意」を知ってもらう。そんな活動がしたいと思ったのです。

それで始めたのが「ゲームdeコーチング」です。

今後やっていきたいこと

すべての不登校の子どもに、このサービスが適しているわけではないと思っています。例えば、周囲の人たちを見ると、マインクラフトなどのゲームが好きなのは男の子に多いようです。

また、教えられるのがそれほど苦手ではない子ども、いろいろなことを学びたいと考えている子ども、運動が合う子どももいるでしょう。また、学習面は避けて通れません。まだまだ親子ともども試行錯誤中です。

不登校の子どもは、学校というレールから外れてしまった分、やることを自分で選ばなくてはなりません。だから、自分に合う道を探し、自分に合う環境を見つける必要があります。

だから、「他のサービスではあまりうまくいかなかったけど、ゲームdeコーチングならやってみようかな」という子どもに届いてほしいと考えています。

そのために、他のサービスにも詳しくなっていきたいと思っています。わが子にもいろいろなものを試してもらって(幸い、ゲームdeコーチングを始めてから、少しずつ他のものにもチャレンジするようになってきました)、情報発信していこうと考えています。

ゲームdeコーチング

子どもを思う味方学(2022年4月から)

子どもとゲームしてくれるメンターさん(主に大学生)も募集しています


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