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私が本当はやりたいこと、これまでやってきたこと、これからやりたいこと

私が本当はやりたいこと

私は手仕事と学問が好きです。本当は、自分の食べるもの着るものは自分で作りたいし、書物を読んで、自分の知らない歴史に触れていたいし、自分の世界を音楽や詩で表現したい。

でも、世界にはこれらを私より上手にやっている人たちがいるので、ずっと後回しにしてきました。むしろ、そういう人たちの表現を伝える方に魅力を感じて、アートマネジメントという仕事をやっています。

この仕事を通して、自分が本当にやりたいことに没頭して自分の世界にいたら、なかなかつながれなかった世界とのつなぎ役になることができていると感じます。今日はささやかに、この10年を振り返って、これまでとこれからについて記しておきたいと思います。

これまでやってきたこと

色々な業界・職種を経験してきましたが、文化業界に限れば、スタートは東京のとあるコンサートホールの職員でした。そのホールでは、市営ながら年間100本以上の自主公演をやっていて、どんなにマニアックな公演も常に完売がモットー(これで、どこに勤めていたか大体わかる人もいるかもしれない)。

日々、数百人、時には千人以上のチケットをもぎりながら、私はなんとなくやるせなさを抱いていました。名前も分からず、顔のないお客さま。どんなに公演の内容が良くても、空虚に聞こえる大喝采。私が仕事を通して表現したい世界は、これじゃない気がする。

そんな時に出会った「社会包摂を劇場に」という時代の流れ。

そうして私は、自分だからこそできること、自分が本当にすべての力を注ぎたいことを求めて、恩義のある故郷へ。しばらくしてご縁があり、地元のコンサートホールへ就職しました。

予算規模も、年間の主催公演本数も、東京とはまったく異なる中で、何とか私の見たい世界を表現できないかと、模索する日々。

これから、という時にやって来た身の回りの転機。それにともない出会った、縁もゆかりもない土地での新しい仕事。

これからやりたいこと

実は最近、誰かのために何かをするのをやめました。

誰かのために、というのが大抵は独りよがりで、見返りは期待通り戻ってこないこと、求められることをやってばかりでは、いつまで経っても自分のやりたいことをできないこと、そもそも誰も私のことを知らず、私も知らない土地では「誰かのために」という理由が成り立たないこと・・・。

理由は色々ですが、とにかく「誰かのために」をやめました。その代わり、これから出会うすべての人に、感情を揺さぶられる深い感動を味わってもらいたい。そういう感動が、明日を生きる力になることを知っているから。

私は2020年の4月から、長野県軽井沢町にある「診療所と大きな台所のあるところ ほっちのロッヂ」で活動しています。色々なこだわりや趣味をもつ仲間に囲まれながら、私は文化企画担当として「ケアの文化拠点」をつくるための仕掛け役を担っています。

コロナのせいもありますが、最近企画するイベントは以前よりもずっとささやかで小規模なものになりました。それは、顔の見える関係の中で、すべての人に感動を届けたいから。

去年は立ち上げの1年で、きちんと胸を張って発信できるための環境づくりに奔走していたので、たった2つですが、当時の社会状況やともに活動する仲間へのメッセージを込めた企画をしました。

環境づくりはまだまだ途中ですが、今年はさらにギアをかけていきます。7月から始まる滞在制作企画は、仲間たちの普段の活動や視点と、アーティストの活動が交わっていく仕掛けにしました。参加する1人1人に、新しい気づきや世界が見えたらいいな。

これからの課題と見たい世界

①「一部の人の楽しみ」から、本当の共感に基づく文化づくりを

新潟市の舞踊カンパニーや、豊岡市の演劇まちづくりをめぐる進退に見るように、行政主導の文化政策は、その時々の首長の一声で予算編成や評価基準がガラッと変わってしまい、とても不安定な構造とならざるを得ません。

予算が削られるとき、必ず問題になるのが「(文化施設での活動は)一部の市民のぜいたくだ」「市民に浸透しているとはいえない」という論点です。

私はこの状況を変えたい。誰もが人生に一度は、何らかのアートや文化活動に触れて明日を生きる力を得ていたら、こんな論点は出てこないはずなのです。感動によって救われたと感じる人が増えれば、誰かにそれを伝えたいという恩送りの循環も、起こっていくはずです。

だから、1人1人に丁寧に、感動を伝える。そのための質の担保と文脈づくりを、コツコツとやっています。

②チケット収支で採算を取るモデルから、共感に基づくお金の循環を

イベントが小規模になれば、必然的にチケット収入も減ります。これでは、経費を動員数で割ってチケット料金を設定するという従来の計算の仕方では太刀打ちできません。収入源を多様化する必要があります。

助成金や補助金、協賛やボランティアに頼る他に、少しずつ新しいお金集めの実験を始めています。それは持てる者が持たざる者を応援する仕組みです。そのココロは、同じコンテンツを誰もが同じ価格で「買う」のではなく、同じコンテンツを共有するコミュニティに感じる価値に、自分のお財布の余裕に応じて投資するというものです。

いずれ実験が成功すれば、その仕組みも報告できればと思います。

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