『ベルリンは晴れているか』の取材写真noteを読んで

最近の私は、ノンフィクションばかり読んでいて、小説という物をほとんど読まなくなりました。だから、今年の芥川賞や直木賞についても全く興味が無く、別世界のことのように感じていました。

ところが、ある日、noteの「おすすめ」を見ていたら、深緑野分さんの

この記事が出てきて、つい興味本位で読んでみたのです。そこで初めて、このnoteを書かれた深緑野分さんが「直木賞」候補に挙がっていることを知りました。そして彼女が書いた小説『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)の存在を知ったのです。(スミマセン・汗)

この小説の舞台になったのが、第二次世界大戦が終結した直後のベルリンで、ナチス独裁時代から敗戦にかけてのドイツ・ベルリンの様子が描かれていることを知り、私は胸が高鳴りました。

ドイツとは今世では全く縁がない私ですが、非人道的な政策を行ったナチス政権下のドイツのことを、私は子供時代から何故かよく知っていて、ずっと気になる存在でした。自分の中では「非常に気になるけど、怖くて直視できない」・・・そんな特別な存在だったのです。テレビや本でナチスのことやユダヤ人迫害のことが出てくると、鳥肌が立って怖くて居ても立ってもいられなくなりました。実は、ドイツだけでなく、第二次世界大戦そのものが苦手でした。日本国内の戦争遺稿も幼い頃から私はすごく怖く感じられ、成人してからも絶対に近寄れませんでした。今はリゾート地になっている南方の島々も同様です。昔から感受性が強かったので、目に見えない何かを直感的に感じ取っていたのかもしれません。

そんな私も、ようやく40歳半ばを過ぎて、第二次世界大戦に対する潜在的な恐怖心が収まっていき、戦争でたくさんの人が亡くなられた場所を訪れることが普通にできるようになりました。と同時に、自分の中にあった「ナチス時代」に対する潜在的な怖さも薄らぎ、以前よりは冷静に落ち着いて受け入れられるようになりました。

そんな最中の、深緑野分さんのnoteとの出会い。心惹かれるまま、この取材写真の記事を読み始めました。

これを読んで驚いたことが、ベルリンには今も昔の名残が沢山残っている・・・ということです。日本だと、今の東京には「東京大空襲」の爪痕は街中にはほとんど残っておらず、街は新しく再生していますが、ベルリンでは、今も銃撃戦の跡が街の至る所に残っていて、戦争中の生々しさを今に伝えています。おそらく写真から察するに、きっと日本のように開発をされることなく、当時のまま街がそっくり残っているのでしょう。日本の場合は、空襲で建物が全て燃えてしまい焦土と化してしまったから、残しようが無かったことも大きいと思いますが、ベルリンの場合は、東ドイツ時代があったせいか、比較的よく保存されているようです。ヒットラー時代に設計され建てられた建物が今も現役で使われていて、当時の様子がイメージできます。そんなベルリンの街の風景のお写真を見せていただきながら、ふと、この街の中を亡くなられた人々の魂が今も彷徨っていらっしゃるような・・・。そんな不思議な感覚を覚えました。

また、ベルリンに今も残る建物のお写真から「実直堅実な佇まい」と「デザインの素晴らしさ」そして「あの時代特有の品の良さと美しさ」を感じて、すごく心惹かれました。日本でいうなら大正から昭和初期にかけての、あの時代特有の雰囲気でしょうか。戦争という暗い時代のエネルギーも含めながら、でも、当時、美しく花開いた文化の華やかさも感じられて「素敵だな」と思いました。

しかし、豊かさの象徴である当時の文化も、人々の暮らしも、幸せも、全て戦争によって破壊され、分断され、傷つけられ、踏みにじられていくのです。いや、戦争だけでなく、戦争を生み出していく時代の空気感も、人々を監視し、拘束し、追い詰め、自由を無くし、精神を摩耗させ、破滅へと追い込んでいきます。それは、ドイツだけでなく、日本でも世界各国でも、それぞれの国でそれぞれに起きてきたことです。世界を巻き込んで、多くの人々が苦難の海に放り投げられた・・・そんな時代でもありました。

今の日本には、そんな当時の名残は、一部の戦争遺稿と人々の記憶の中にのみ留まっているだけですが、ベルリンでは今も街ごとゴッソリと戦争の記憶が刻み込まれて保管され、いつでも人々の心の中で復元できるような状態で固く保持されているのを感じました。

私はヨーロッパにはまだ行ったことが無かったので、とても興味深くこのnoteを読ませていただきました。

そして、この取材写真のnoteは、当然のことながら『ベルリンは晴れているか』の登場人物や場面に沿って写真が掲示され説明されています。ですので、このnoteを読めば読むほど、ますます『ベルリンは晴れているか』を読みたい・・・と強く思うようになりました。

ちなみに、小説『ベルリンは晴れているか』は、単行本だけでなくKindle版も出ています。

【単行本版】

【Kindle版】

私はKindleで読んでみることにしました。読んでみて「大正解」!

こんなにも深く、しかも心にズドンと残る物語、久しぶりに出会いました。読み始めたら、一気に物語の世界観に引き込まれ、止まらなくなりました。まるでこの時代に生きていたかのような深緑野分さんの情景描写に、心がまた強く引き込まれました。取材写真を見ているので、情景が具体的にイメージできて、それもスゴく良かったです。

(この本の感想文は、次回に書きたいと思います。)


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