【空想日記167日目佐々木さん34歳】重たい鞄と壊れた靴の踵と

11月16日
スニーカーが壊れた。踵のところに穴が開いてしまった。
気付いたのは電車に乗ってから。
気になる。もうどうしようもないのに気になって仕方がない。

気付いてから踵が痛い気がする。
会社の帰りに買って帰ろう。
履きやすいものにするか、デザイン重視にするか。
どうせなら彼に選んでもらえばよかった。
彼がいいとするものを身に着けてみたかった。

歩くとやっぱり踵が痛い。
パンパンに詰まった鞄が重くて肩が痛い。
たぶん、今日もこの中のほとんどを使わないと思う。
何かあったら心配だから詰めてしまう。
いろいろと、ぎっしりと。

何かあったら彼に分けてあげよう。
喜んでくれるだろうか。
彼の役に立てるだろうか。

わかってる。
彼はそんなに重みがあることなんて望んでない。
そして、そんなにも彼に寄りかかることは危険だということを。

だから靴は自分で選ぶし、
鞄の中身は減らして私だけの量にする。
彼はいる。
私はおそらくこれからも1人で、
誰かがそばにいることを望みすぎてはいけない。

それでも鞄はずっと重いままなんだと思う。