校正、締切、書籍のルールについて

以下、隙間時間にざっくりと書くので、粗い書き方になっています。時間があれば直します。

【締切について】

勁草書房編集部さんが、下記ツイートをされていました。

「「本当の締切」「ガチの締切」「とりあえずの締切」「表向きの締切」「○○先生用の締切」というものは断じて存在しません!締切はただまっさらに「締切」でしかないのです!(山)」

15:05 - 2016年5月17日 @keisoshoboedit

同感です。それに対して、私は下記ツイートをしました。

「杓子定規に時期だけ厳守すればよい、ということではありません。双方の信頼関係のもと、良いものを作ろうということです。勝手に「このぐらいは余裕が」と推測されるのではなく、何をどう進行するのか、きちんと話し合いたいです。」

「締切後にも時間があるだろう、と思われがちなのですが、その時間を寝かせているのではなく、編集者が確認したりDTPの人が作業しています。それらの時間を充てて締切を押すと、誰かが徹夜するか手を抜くかで、結局は本の質に影響します。」

【校正について】

私は、校正の返送について、下記のお願いをしています。

①スキャンして頂いてPDFにしたものを添付、②FAX、③宅配便 ※着払いにて、ヤマト、郵便、その他どの会社でも大丈夫ですが、普通郵便以外の、追跡番号が必ずついているものでお願いいたします。④メールによる指示(例;p2の2行目「〇〇」を「××」とする

※1 大変恐縮ですが、ワードの原稿データの書き込みによる修正のご指示、という方法はご使用にならないようお願いいたします。 ※2 PDFの校閲機能では指示をしないようお願いいたします。

※1がついてるにもかかわらず、一定数ワードの原稿データを修正して返送されてこられる方がおられます。著者の手元に完成原稿を残したい、という気持ちはわかるのですが、校閲機能を使っていても、うっかり機能をオフのまま更新されていたり、様々な可能性を考えて、結局一字一句対応しなければいけません。

※2は時と場合によってつけていませんが、DTPのオペレータさんが手元に紙をおいて、その紙を一か所ずつ赤字にチェックをいれながら作業をされる、ということを想像して頂ければ、訂正箇所がマウスオンしなければ隠れてしまうPDFは出力しての訂正作業に不向きだということです。PCの画面上に2つのファイルを並べて作業することはできます(そしてその方が楽、というオペレータさんもいるかもしれません)。短いものはそれでもチェックしきれると思いますが、作業負担はおそらく出力紙の方が少ないです。

作り方や作業の仕方は、編集者や出版社それぞれなので、このやり方だけが正しい、ということではありません。ただ、著者の方に留意して頂きたいのは下記の2点です。

①ご自身が執筆された後、誰かが何かを作業している

②本は工業製品=規格化されたものである、ということ

①は、編集者が構成校閲したり、DTPの人が作業する時間があるということ。「まだ印刷ではないでしょ?」という言い方をされることもあるのですが、ただ印刷するだけなら、同人誌で十分なのです。ご執筆のように、大きく内容には関わらないかもしれませんが、些細なクオリティを確認を重ねて担保しているのが商業出版です。

②は、「例外も可能だけれど、基本的なやり方がある」ということです。上記したPDFでの校正やワードでの校正提出など、どこかで誰かが頑張ったり無理したり、あるいは個人の技をもってすれば対応できたりします。なので「他社では対応できた」ですとか「自分ならこうする/こうできるから、できるはず」という言い方をされることがあります。

たしかに、ワードの修正原稿をお預かりしても校正紙に修正はできます。ただ、それをもう一度頭から一字一句、校正し直すことになる時間やコストはどこが負担するのでしょうか。

情熱でもってカバーできるのは、編集者までです。出版社がその編集者に残業代を払うのは、ただのコストです。出版社から外、DTPの人にその負担を回すのは、ブラック労働の発生です(それで割増賃金をだせるなら別かもしれませんが)。そして、他の本の工程へ影響したりします。

繰り返しますが、全くこの通りにしなければいけない、ということではありません。ただ、現在、商業出版という形のなかで、様々な人たちを巻き込んでひとつの製品=本をつくる、ということは、自分の少しの例外発生が、他所での負担や質の低下になる可能性がある、ということをほんの少しでも頭の片隅においてもらいたいのです。

では、ただ四角四面に締切をまもって機械的に作ればいいのか。そうではありません。そのために、様々な関係者を代表して、編集者がいるのです。

「このくらい遅れそう」「こういうやり方でも大丈夫か」「こうしたい」

担当編集者にご相談ください。「では何日までに」「これはそのやり方でも大丈夫です」「これはこうしてください」私たちは調整することが可能なのです。

締切は締切です。余裕はありません。ただ、前もってお伝えいただければ、関係各所を調整することができるかもしれません。ただ、それは少しずつの無理の寄せ集めであって、元からサバを読んでいたわけではありません。当日になって「今日無理」やびっくりするようなデータが届くことが問題になりやすいのです。

特に、初めて執筆される若い著者の方は、自分の今までのやり方のみ、もしくは全く知らないことも多いと思います。わからないことは、担当編集者にどんどん聞いてください。

私の説明不足が悪かった、と思うこともしばしばあります。その場合は、ちょっとうるさく思われるかな、と思っても、説明します。私が「まあいいか」で受け取れても、その後、その著者は他でも書き続けられるときに、他所でも同じやり方をされるのであれば、よくないからです。

良い本をつくるために。

たくさん、皆さんときちんとお話したいです。



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小林えみ よはく舎代表、編集者。1978年東京都生まれ。 担当書籍に哲学思想雑誌『nyx(ニュクス)』、『戦う姫、働く少女』、『ハンス・ヨナスを読む』、『資本主義リアリズム』(堀之内出版)、『きゃわチョゴリ』(トランスビュー)など。

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小林えみ の私見です。

コメント (1)
「訂正箇所がマウスオンしなければ隠れてしまうPDFは出力しての訂正作業に不向きだということです。」とのことですが、Adobe Reader では訂正箇所(アノテーション)を右側で一覧表示できます。これならどんな小さな訂正でも見逃すことがなく、一覧の訂正箇所をクリックすればそのページにジャンプできます。既にご存知でしたらすみません。なお「校正機能がオフになっているPDF」は完全に発注元の責任ですね。Adobe Acrobatで校正機能を有効にしておくのはマストですね。
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