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まっかなイチゴ。露地のロマンを考える。

東京おひさまベリー。
こんな名前のイチゴを知っていますか?

昨年、本格的に流通しはじめたばかり。しかも収穫量は少ない。そんなイチゴなので、知らない人も多いと思います。
実の大きさと、中まで赤いのが特徴です。

イチゴとひとことに言っても、品種は多種多様です。
そのなかでも、東京おひさまベリーは、露地専用として開発されました。
"おひさま"の名前がついているのはそのことを表しているのですね。

東京にも公設の農業試験場はあります。
立川にある財団法人東京都農林水産振興財団では、いろいろな品種を日々、開発中。東京おひさまベリーはそこから生まれました。
ほかにも、銘柄豚「TOKYO-X」キウイフルーツの「東京ゴールド」なども世に出ています。東京都の農産物はすごくマイナーですが、意外と東京生まれの品種というのもあるのですね。
あ、申し遅れましたが、今回の記事は、エマリコくにたち代表の菱沼がお送りしています。私、東京都生まれの品種の販売促進を考える検討会の委員もしております。

ところで、露地栽培、と言われても、外で作っているんだろうな、とは思いますが、「だからなに?」って思いますよね。

露地栽培と施設栽培

イチゴや多くの野菜には、露地栽培と施設栽培(ハウス栽培)があります。

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栽培の効率では、施設の方が圧倒的にいいんですね。
害虫を防げる、温度や湿度は調整できる、冬も暖かい。だから収穫量は多いのがふつうです。
そして何より、雨の影響を受けない。
雨が少ない分にはまだいいんですが(水道代はかかります)、雨が多いときに露地は困る。雨が多いと病気になりがちですし、水をたくさん含むと味がぼけたり、果菜だと割れてしまったりします。

ちょっとマニアックな話だと、野菜栽培では受粉のためにハチを放すことがよくありますが、当然ながら露地栽培ではそれはできません。

ということで、スーパーに並ぶほとんどのイチゴがハウスものです。

イチゴは初夏の季語

では、イチゴを露地で育てる意味はなんだろう?

突然ですが、イチゴの旬はいつでしょうか?
12月のクリスマスがもっともイチゴが売れる季節ですが、植物生理上の旬ではありません。春から初夏、まさにこの記事を書いている今ごろが旬なのですね。
それは露地で育てていると分かります。

春から初夏の風物詩。
それが本来のイチゴ、ということになるでしょう。
俳句ではイチゴは初夏の季語です。

もちろん、365日、欲しい野菜が手に入る現在の状況を否定するつもりはありません。私もその恩恵に常日頃あずかっています。

でも、季節を感じるというプライスレスな価値も、街のなかにちょっと残したいな、とも思います。

露地の方がエコですしね。

(写真)4月上旬、国立市内の農家・佐藤英明さんの畑を訪問。東京おひさまベリーの一番花が咲いていた。

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東京おひさまベリーが開発された背景には、東京には体験農園をやっている農家が多いという事情があります。
体験農園は果菜を収穫するときがやっぱり一番盛り上がりますよね。なかでも子どもが喜ぶ作物がいい。
そういうことで、露地のためのイチゴ品種が作られたわけです。

おひさまがさんさんと照っている青空のもと、真っ赤なイチゴを子どもたちが収穫する。そんな風景を夢見て、試行錯誤の末にできた品種です。

天候が直接影響する露地ものは、形が悪くなったりしがちです。
でも、今年は昨年よりも形がよいイチゴの比率(秀品率という)がアップしたそうです。農家さんも日々、工夫を重ねているのですね。

今回は、東京おひさまベリーについてツラツラと書いてきました。
東京には意外とたくさんの農家さんがいて、しかも十人十色のやり方で農業を営んでいます。じつにカラフルな世界なんです。
イチゴの栽培方法ひとつとっても延々と語り合えるのですから!

ということで、エマリコくにたちがまもなく開始する「イート・ローカル探検隊(略してE探)」
こんなにもカラフルな、地元の美味しい食の世界へいざないます。

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