【書評】企業の営業損害の算定 -裁判例と会計実務を踏まえて-

法務在籍時に読んでおいてよかったかもと感じた書籍【第4弾】です!

【概要】企業の営業損害の算定方法について,具体的なケース毎に裁判例の考え方を踏まえながら学ぶ
【難易度】★★★★
【法務役立ち度】★★★

著者は弁護士・公認会計士のダブルライセンスを保有する原口先生です。

1.概説

まず裁判実務における営業損害について触れた上で,営業損害の分析・算定に役立つ会計知識が紹介されております。

この項目については,法務担当者であっても企業に勤める以上,なるべく理解しておきたいところではあります。

2.事例

上記概説に続き,具体的なケース毎に営業損害をどのように算定していくべきか説明がされます。

いずれも裁判例を踏まえた事例でおり,「当事者の主張」や「裁判所の判断」を整理した上で著者のコメントがあるのがありがたいですね。

全ての案件が本書のケースにきっちり当てはまるわけではないですが,裁判例を踏まえた方向性を示唆してくれるので,頭の整理になると思います。

著者によれば,ケース毎に裁判例を詳細に分析した結果,裁判所が基本的な損害理論や会計の考え方に立脚しつつ,具体的な主張や証拠を前提として営業損害の額を可能な限り合理的に算定していく姿が見えてくる(?)そうです…

まずは依頼者が何を損害と考えているのかを把握し,その主張を裏付ける証拠(会計帳簿等)として何を収集しておくべきかを考える必要があります。

こうした主張・証拠に基づき,損害算定期間がどうみるか,当該期間において通常よりどの程度利益が失われているか,逆に支出を免れた費用が何であるか等を考慮しますが,こうした点を検討するにあたり会計の基礎知識は必要だと実感しました。

3.おわりに

弁護修習の時に損害賠償請求事件を担当することがあり,営業損害の算定根拠を論じる起案をする際,本書にお世話になりました。

実際に法務部門にいると数字に疎くなりがちであり,依頼部門からリスクの度合いを尋ねられた時に定量的な指標を示しずらい場面もあります。

本書は,こうした悩みに対する示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

自分自身企業に勤めておきながら,まだまだ財務・会計に関する知見に弱い部分があるので,今後も本書を読み込む努力義務を課していきたいと思います…(汗)

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