彼が選ばない道、それが正しい道
2003年3月。中学校の卒業式を無事に終えたヘッポコ兄は、高校の教科書を購入するために、高校指定の本屋へ自転車で出かけて行った。
我が家は地下鉄沿線。
その指定の本屋はJR沿線。
我が家の最寄りJR駅からは一駅だが、その最寄りJR駅までは徒歩で10分ほどかかる。
自転車で行くのが一番速い。
(2020年追記:最寄り駅まで徒歩10分なんてあたりまえのことだったと転居して初めて知った)
「一緒に行こうか?」
「いや、地図持ってけばわかる」
そう言うので、地図を見せて懇切丁寧に説明する。
「大きい通りをまっすぐ行って、隣の駅で交差点を左に曲がって、次の交差点を右に曲がって、地域センターを左に曲がる。それだけだからね」
「こんな道で迷えって言われても迷えないよ」
と、ヘッポコ父が言う。
でも兄だからね。
迷いようがない所でも、軽く迷うからね。
少なくとも、途中まではテリトリーの範囲なのだ。
買い物の時間を入れても40分前後で帰れるだろう。
ところが1時間以上たっても帰って来ない。
「今、どこにいる?」と聞くと、
「KTD4丁目」と言うではないか。
うちとは、真反対の方向じゃないか!
「どうして来た道を逆戻りしなかったのよ!」
「行きの時点ですでに迷ったんだ!」
なんだかお互い、喧嘩腰になる。
どうして、正反対の方向へ向かうんだ。
道を知らなくても方向感覚という物があるだろうが。
第一、この近辺なら、どこからでもよく見える高層ビル街がある。
それをめざして進めば間違いなく知っている場所に出るはずなのに。
コレだけ続くと、もうおもしろくもなんともない。
この真逆男は実在した。
そしてまもなく伯父になる。
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