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短冊

暑い。暑すぎる。朝8時30分頃、僕はバイト先の最寄り駅に降りた。外は快晴。この時刻にして32℃を超えていた。そこから1.5kmほど歩いてバイト先へ向かう。もうこの時点で体力の8割を使い果たしてしまった。
バイト中はほとんど意識がなかった。惰性で客を捌き、10秒に一度は欠伸をしていた。後で調べてわかったことだが、夏にやたらと眠くなるのも熱中症の症状のひとつらしい。なんと言ってもバイト先は空気の通りがとても悪く、ほぼ外気が入ってこないような空間で、温度は30℃に達しようとしていた。そんな中4時間も突っ立ってたわけだから、気を失うのも仕方ない話だ。
そしてやっとこさ昼になり退勤すると、30℃の地獄から飛び出し、37℃の地獄へと移動する。もう訳が分からない。行きも通った道のはずだが、帰りはその5倍は長く感じられた。
こんな辛い思いをして電車に乗り込んでも、たった6分後には降ろされてしまう。ドアの前で開くのを待っていると、乗り込もうとしてくるババアが数人、進路を塞いだ。降りるのが優先だ、お前らに譲る筋合いは無ぇ。そう思ってお構い無しに突き進むと向こうもお構い無しに乗り込もうとしてきた。酷暑の中の正面衝突。方や若造、方や老いぼれ。どう考えてもフィジカルで負ける相手では無いと思った。しかし、負けてしまった。ババアに当たられ、いとも簡単に僕の体は揺らいでしまった。幸い転倒することもなく電車からは降りられたが、僕の若さは膝から崩れ落ちた。脳裏で物凄い音を立てながら崩壊した。もう無理だよ。どうしろってんだ。生きていける自信が全く無い。
だから僕は短冊に書いたんだ。『生ききる』って。


2022年7月2日の日記から抜粋。
8月も継続中なので是非...!

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夏の思い出

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