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おかんが埋めました #生きるコント3 #1

わたしは植物が好きで、うちのマンションのベランダ、そして

玄関までの階段で公共のスペースでないところ、に、所狭しと

植物を置いている。ミントも10種類あるし、レモングラスや、

インド菩提樹もあるし、ユーカリ、オリーブの木、そして、

クレマチスにムスカリ、ラッパスイセン、バラなどの

お花たちから、パセリ、バジル、レモンなど食べれるものまで。

ただどれもなんとなく買ったものはなく吟味して、すべてのバランス

世界観が、私的には楽園になるようにしている。だから、いきなり

朝顔、とかペチュニア、パンジーとかはない。少し学校感、花壇感がでるの

がいやなのかもしれない。それから、食べれるものを置いているからといっ

て、ナスとかきゅうり、トマト、は、ない。畑感も違うのだ。自分なりの

センスで置いてある。ハーブ園とか秘密の花園みたいなのが、イメージなん

だと思う。

ただ、出張が多いので、長期不在にするときは、おかんに水やりを

頼んでいる。ありがたい。せっかくのかわい子たちが枯れずに済む。

いつも仕事にでかけるとき、いってくるねーと話しかけてでかけるし、

帰ってきたときは、みんなが出迎えてくれて、草原にもどってきたような気

持ちになり落ち着く。

やはり私には自然が大事。植物が大事。

バラの花が咲いたり、水仙が咲いたりしているのをみつけると、

本当にしあわせな気持ちになる。ささやかな楽しみである。

なのにだ。なのになのにだ。

ある日、大きな鉢植えに、ふしぎなものが生えているのを見つけた。

「ん?」

この大きな鉢植えあったっけ。あったとしても、この、よくわかんない

草みたいなの、買ってない。育ててない。

雑草でもない。だって、かなりツンツンした、太くて、三角の葉っぱが

いきなり土からニョキニョキと生えている。それは例えて言うなら

パイナップルの頭の葉っぱみたいな、、、と思ったとき

あいつだ、と思った。

おかんに電話した。

「ねえ、なんかした?」

「なにが?」

「水やりは頼んだけど、他になんかした?」

「なんもしてないよ」

「見慣れないのがあるんだけど」

「…」

「なんか知らないもんが植わってるんだけど、植えた?」

「…」

しばらく沈黙の後、バツの悪そうに、おかんは言った。

「植えた、、、」

やっぱり。

「パイナップル食べておいしかったから、上だけ切って

頭のとこな、植えた」

なんでそんなことをするんだろう。

「あれな、生えてくるねんて」

うそやん、生えてこないよ。しかも、2個も。

頭が植わってるみたいでいやだった。しかもでかい鉢植えなので

クロネコヤマトの人がくるときもすごく邪魔そうだった。

「もうさ、勝手に植えるのやめてって言うたやん」

「ごめんごめん」

これははじめてではない。

数ヶ月前も、なんか、ん?って芽がでていて、これはなんだろうと

思った。どうみても雑草ではない。雑草はもう少し弱々しいけど

なんか作為を感じたのだ。

「ねえ、なんか植えた?」

「植えてへんで」

「いや、ミントの横に、なにもなかったとこに、

緑のもんが生えてるけど」

「…」

「あれ、なんや」

「アボガドや‥‥美味しかったから」

美味しかったからって食べたもんをひとんちに植えるのはやめてほしい。

昔は、グレープフルーツを植えられたことがある。

このときは猛烈サラリーマンで全く気づかず、しばらくしたら

木みたいになってきて、「これ、なんだっけ?」と聞いたら

「グレープフルーツ」と言われた。

「あんたたべて、おいしいおいしい、言うから、その種うえといた。

 またおなじの食べれるで」

食べれるかい!何年後や!

でもそのときは、おかんは初犯だったので、わたしもまだ甘く

ふたりで、グレ子と、フル子と名付け、育てていた。

が、引越しをすることになったある日、気づいたらその

グレ子とフル子がいなくなっていた。

「おかん、あれ、どうした?みないけど」

おかんは言った。

「ああ、あれか、もっていかれへんから」

「え?え?捨てたの?」

「いや、かわいそうやし。昨夜、公園に植えた」

「やめんかい!」

その晩、暗くなるのを待って、おかんと掘り起こし

また持ち帰った。

「エリーちゃん、なんでよ。公園で、大きくなったらええやん。

なんで掘り起こすんよ。この子らもここがええって」

「いや、ここ公共のとこやから、植えたらあかんのよ!」

「誰も気づかへんやろ」

とおかん。気づくわ!明らかに、ブナとかナラとかと全然違う

ギラギラとテカった葉っぱ。ん?!ってみんななるよ!

子供らも、なんだこれ?ってなるよ!

「グレープフルーツが公園でなったらおもろいやん。

 感謝してほしいくらいやわ」

おかんは不服そうだった。

再び植木鉢へ。結局引越し先に、おかんが植えてしまった

2本のグレープフルーツを運んだ。

ちなみに今もあり、今現在も、全く実はならない。ただのへんな

きれいでもなんでもない低木。

このまえ、じぶんの事務所に家の鍵を忘れたまま、帰路へ向かったことに

気づいた。かなり事務所から離れたのと、もうしんどかったので

取りに戻る気力がなく、近所に住んでいるおかんに電話した。

「おかん、家の鍵のスペアあったよな。あれ、玄関前に

ぶらさげるかなんかして、おいといてくれる?」

「わかった」

そう言ったと思ったが、家に着くとドアノブにはなかった。

LINEをみたら、

「植木鉢に植えました」

とあった。なぜ?なぜ植えたの?鍵を?埋めたんだよね?

「ドアノブはわかりやすくて危ないやんか。だからわからんように植えた。

グレープフルーツの木の鉢に植えた」

真っ暗な暗がりで、私はその鉢の土をほじった。

爪に土が入る。むかつく。

なにかビニールみたいなものが出てきた。

ひっぱりだすとサランラップでぐるぐる巻きにつつまれた鍵。

なぜ、包むんだろう。本人曰く、さびるという。そんなに長く埋めとかへん

のに。まったくもう、これを剥がすのにもまた時間がかかり

この暗がりでかがみこんで植木鉢でごそごそしている姿をみられたら

わたしが怪しい。

水やりを頼んだばっかりに、おかんの箱庭みたいになってしまっている。

なんでも植えちゃうおかん。植えんなよ。もう何も植えないで。

唯一のわたしの楽しみの場所の秩序を乱さないで。

怒るたびにごめんごめんと言うおかんだったが、現在も、数ヶ月に1つ

ふしぎな、生ゴミ感あふれる鉢が増えているのであった。







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週刊文春やサンデー毎日で毎週連載していましたが、やめてから怠惰な生活を送っていました。十分休んだので、また連載をみんなとつくる場でやってみたいなと思いました!よろしくお願いします! 「生きるコント」方向や、「思いを伝えるということ」方向、くすくすから、ふむふむまで、どーん!