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The 1975全アルバムレビュー

The 1975。Rockを基調としながらも、Synthe Pop, Hip-Hop, Jazzなど様々な音楽をミクスチャーした多様な音楽性で世界中の音楽ファンを魅了する当代きってのロックバンドである。

「21世紀ロックの救世主」「Rock is Dead!と言われたロックを今一度再定義したバンド」「ミレニアム世代の代弁者」など多種多様な賞賛の声は絶えない。何を隠そう筆者最愛のアーティストである。

そんな幅広い魅力を兼ね備えるThe 1975をアルバム別にレビューしていこう。

① 1st Album『The 1975』

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2013年に出たセルフタイトルアルバム『The 1975』の中で特筆すべきは、シングルカット曲の力強さと衝動性であろう。

前身バンド Drive Like I DoのEmo路線を受け継ぎ、コーラスにおける雄渾なギターリフとボーカルが頼もしい「The City」
シューゲイザーを思わせる激しいギターサウンドが青臭い衝動性を想起させる「Sex」はその最たる例。

1stアルバムに似つかわしい若々しい熱情が目立つ一方、彼らは大衆を魅了するPopさを忘れることもない。
親しみやすいリフレインサウンドとメロディアスなボーカルが最高にキャッチーな「Chocolate」
心地よいエレキギターが清涼な風を吹かせる「Girls」
これらの楽曲は実験的でありながらも大衆性を兼ね備えた彼らの音楽性を象徴するものである。

アルバム全体を通してはモノクロのアルバムアートワークが彩る通り、もの懐かしいPopサウンドと青年時代の熱いパッションが印象的な作品だ。


② 2nd Album『I like it when you sleep, for you are so beautiful yet so unaware of it』

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タイトルが長い...。邦訳『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』も長い。しかるにこのわざとらしい長さのタイトルこそが、僕たちがThe 1975を愛する所以な気がする。

そんなキザなアルバムの幕開けを飾るのが、「Love Me」と「UGH!」だ。衝動性あふれた1stと比して、良い意味で気が抜けた洒脱なサウンドメイキングが特徴的である。

2ndアルバムにおいて、彼らはより大衆性への接近を見せ、80sシンセポップやダンスポップへの傾倒を強めていく。
コーラスのベースの躍動感がダンサンブルな80sシンセポップを思い起こさせる「She's American」
80sポップの中にどこかムーディな情景を差し込んだ「Somebody Else」は同アルバムの代表曲であろう。

そしてなんといっても忘れてはいけないのが、「The Sound」である。「Fu*kin Jump!」の号令と共にフロアがわく、押しも押されぬライブの大ラス曲。
猛々しいシンセサイザー、ロックバンドのお手本のようなギターとベースサウンド、そして憎々しいまでキャッチーなMattyのボーカル。
このライブアンセムを嫌いな日本人はいないだろう。


③ 3rd Album『A Biref Inquiry Into Online Relashioships』

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PopとRockの絶妙な融合を見せた1stと2nd。そんな二つのアルバムを土台にし、新境地を切り開いたのが本作である。批評面・セールス面の両面で大成功をおさめ、最高傑作の声も根強い。

本作はアルバム全体を一貫して、コンセプトアルバムとしての特徴を強く帯びる。彼らはミレニアム世代の代弁者として、インターネットと資本主義に表徴される現代世界を痛烈に批判すると同時に、矛盾あふれる現代社会の中にも希望を見出す重要性を表す。

Joy Divisionをオマージュした荒々しいギターリフがアルバムの力強い幕開けを告げる「Give yourself A Try」
シャウトするかのような猛然たるボーカルが現代社会への怒りを伝える「Love It If We Made It」
はそんな彼らの激情やメッセージ性を象徴する。

メッセージ性の強いアルバム前編に比して中盤では、
Lo-Fi Hip-Hopの影響を受け『ズラす』音楽性に挑戦した「Sincerity Is Scary」
シンセサイザー・ギターサウンド・ベースラインの全てがキャッチーながらもこれら三要素が見事に調和し完璧なポップソングと化した「It's Not Living (If It's Not With You)」
など希望に満ちた様相を呈する。

そしてアルバム終盤では包容力と落ち着きを取り戻し、
ファンへの絶大な愛情を表した陶酔感あふれる「I Coundn't Be More In Love」
A・Bメロとコーラスのコントラストがカタルシスを形どり、そのスケール感の大きさに圧倒される「I Always Wanna Die(Sometimes)」
にて大団円を迎える。


④ 4th Album 『A Notes On A Conditional Form』

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アルバムを通して一貫したコンセプトがあった3作目に対して、4作目(邦訳『仮定形に関する注釈』)は彼らの持ち味であるPopさを忘れることなく、様々な音楽性に挑戦している。

インダストリアルロック的なザラついた音像が特徴的ながらもキャッチーさを保つ「People」
UKガラージのエレクトロニクスを導入しつつ心の脆さをうたう「Frail State of Mind」
アルバムの起首を務めるこれらの曲は彼らの振り幅を知るには十分だろう。

「Then Because She Goes」~「Me & You Togther Song」に至るEmo Rock路線は、とことん明るくて爽やかな各音楽隊が光りながらも、どこかもの悲しく切ない気持ちを彷彿とさせる。

アルバムは80sポップの質感をベタベタな程飽くなき攻める「If You're Too Shy (Let Me Know)」にて最高潮を迎え、
バンドメンバーへの心からの愛情と友情を歌う「Guys」で穏やかな締めくくりを告げる。



⑤5th Album 『Being Funny In A Foreign Languange』


4thアルバムが一時間越えの超大作にあったの比して、今作は44分のミニマムな楽曲構成の中に彼らのソリッドなポップさと傷心を癒す優しげなメロディが詰まっている。

Taylor SwiftやLana Del ReyをバックアップするJack Antonoffをメインプロデューサーに添えたことで、各音楽隊が浮き出るような音像でボーカルを惹きたてる。
リリック面では愛や現代社会に皮肉めいた冷笑を浴びせる前作までとは一転して、愛・幸福・一体感といった極めて刹那的な目標に向かって努力することを哀愁を漂わせながら歌っている。

お馴染みの多幸感あふれる80sサウンドをモチーフにした「Happiness」やThe 1975史上最もピュアで暖かいリリックとサウンドに胸が暖まる「I'm In Love With You」がA面を鮮やかに彩るとともに、

B面ではブルージーで懐の深い至高のロックバラード「All I Need To Hear」やストリングスと囁くようなヴォーカルが乾いた冬曙に似合う「When We Are Together」で慇懃に幕を下す。

Cf.
「It's Not Living (If It's Not With You)」のカラフルな情景に心躍らせ、
「Sincerity Is Scary」にて夕暮れの秋空に黄昏て、
「Guys」の ♪The first time we went to Japan was the best thing that ever happened♪を皆で合唱し、
「The Sound」でファッキンジャンプする。

そんな最高のライブがまた見られるといいね。

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