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我が党必読の作品「愛と幻想のファシズム」-厨二病のバイブル-

もし自分が一冊だけ親しい人に、これだけは読んで欲しいと薦める本があるとするならばそれは村上龍の『愛と幻想のファシズム』だ。

1984年から連載が開始され、1987年に単行本が出版された作品なのでまさに日本経済が絶頂期の時に書かれているのだが、内容はその日本の浮かれムードとはうって変わる。


まるでその先の時代を予見していたかのように、バブルや好景気に浮かれる日本社会が破滅へと向かっていく時代が描写され「狩猟社」という独裁政党が誕生するというストーリーが描かれている。

余り内容について語るとネタバレになるので、詳しいことは読んでからのお楽しみということにしたいのだが、とにかくこの小説が今あまり読まれていないのはもったいないし、むしろ今だからこそ読むべき内容であるように思う。


当時村上龍が書いていたことは、浮かれムードにある日本人に響かなかったかもしれないが、今の衰退に向かう日本社会にこの作品はまさに合致している。30年遅れでいま正当な評価を下される時が来たのではないか、むしろ今に最も必要な作品なのではないか。


この作品は何も昔の小説というだけで終わるものではなく、実は今を生きる世代に大きな影響を与えている。

『愛と幻想のファシズム』は日本のおける厨二病文化の原点であり、現代で親しまれている作品に通じている。

例えば『新世紀エヴァンゲリオン』といえば、オタク文化の代名詞的存在であり「エヴァを見ていなければオタクは始まらない」とさえ言われる象徴的な作品だ。


このエヴァに大きな影響をもたらしているのがまさにこの愛と幻想のファシズムであり、この作品の登場人物の名前が、エヴァの登場人物の名前にアレンジされて使われていることはファンの間では有名な話だ。

つまりこの年代の厨二的な作風を持つアニメ監督なら、一度はこの小説を読んだことがあるほど当時はセンセーショナルな作品だったのだ。


そして『愛と幻想のファシズム』や、『限りなく透明に近いブルー』『半島を出よ』などの作品に影響を受けた作品が今に伝わり、間接的に村上龍の影響が現代にも受け継がれている。

ある年代からの厨二的な傾向のスタートはもしかしたらここから始まっているともいえるし、今に残っている作品のバックには更に影響を与えた作品がある。


とにかくこの手の厨二っぽい作品が好きな人ならば『愛と幻想のファシズム』を読んで損はないし、何より自称厨二病学の研究者である自分がこの作品の愛読者だ。

それどころか自分は村上龍に憧れており、彼のような作品を描きたいとすら思っている。ここ最近よく本を読んでいるのも、村上龍が圧倒的な読書量や勉強量によって作品を作っているからであり、トガッっている時代の作家はかっこいいなとゆとり世代ながらに思うのだ。

まだ自分は村上龍の作品すべてを読んでいるわけではないので、これから全部読んでいくのが楽しみでもある。そしていずれは彼のような作品を書けるようになりたいし、もちろん模倣だけではなく自分のスタイルも取り入れたい。史上最高に厨二な作品を作り上げるというのが密かな自分の野望だ。


『愛と幻想のファシズム』に関しては、大学生活を始めた当初に読んで思い出になっていたので、そのころが懐かしくなって去年の夏に読んだ。そしてその去年の夏が懐かしくなって今年の夏にまた読もうという気になっていて、もういっそのこと毎年夏の恒例イベントにしてもいいなということも考えている。


よく「エヴァンゲリオンは10代の内に見ておくべき」と言われるけども、この作品もまた10代の内に読んだほうが楽しめる作品だと思う。自分は高校の頃にこの作品の存在を知りいつか読むと憧れていて、そして実際大学に入ってから最初の年に読んで今もこうして語りたいほどには思い入れを持っている。

厨二的なもどかしさを持つ今の若い世代には特におすすめしたいし、もし感想など書きたかったらここのコメント欄を使ってもらっても構わない。いかんせん昔の作品なのでリアルタイムに語っている人がいないのがこの作品の難点だ。

書評などを調べてみても10年目に書かれて今は更新されていない所などが多く、読んだところでその思いを発散する場所が無い。自分のここのコメ欄はもっとそうした多くの人が参加する言論空間にしたいと思っているので、リアタイで語りたいという人がいれば遠慮なく使ってもらっても構わないし、そういった参加者は常に歓迎だ。

新しい厨二世代が育ってほしいという思いもあり、そこから新しいムーブメントが始まっていき世の中が変革していってほしいという壮大な計画もある。


いわば我が党にとって、愛と幻想のファシズムは聖書であり必須教養である。

キリスト教に旧約聖書と新約聖書があるならば、この書籍の上巻と下巻はまさにそこに当てはまる。あるいはナチスにとっての『我が闘争』や、社会主義にとってのカール・マルクスの「資本論」や「毛沢東語録」といった側面もある。

自分の中の「厨二病度」を上げたいと人、より厨二として修行したい人にとってこの本は間違いなく欠かすことができない。

混沌とし不安が覆う現代だからこそ、この作品はこの社会の未来と行く末を映し出してくれるかもしれない。


面白いとおもたら銭投げてけや