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【夢日記】NiziUに加入した

いつか話した知り合いに、還暦くらいのお姉様がいる。

たまたま話した日がインパクトに残ったのだと思う。そのお姉様が夢に出てきた。以下、お姉様はIさんとする。

私は御手洗いで手を洗っていた。
Iさんと鏡越しに目が合う。

「NiziUのライブが近いんですよぉ〜」

Iさんの鼻にかかった舌足らずの甘い声が、狭い御手洗いの中でハウリングしかけている。

「ダンス、早く覚えないとねえ。うふふ」

そう言いながら、覚束ない足取りでステップを刻み始めたのだ。

咄嗟に情報が大波となって押し寄せてきた。
そうだ。

IさんはNiziUのメンバーに選ばれたのだった。

あれ?NiziUのメンバーって、最初からIさんいたっけ。年齢制限はなかったか?まあ、そういうのに拘る時代は終わったのかもしれない。Iさんは膝の調子があまり良くなさそうだが、ダンスの動きで他のメンバーより遅れが出ないか少し心配だ。深く話してきた訳では無いけれども、失礼ながら運動が得意な印象はない。それで人気が低迷したらどうしよう。でもNiziU自体は応援したい。ファンには慈愛と博愛精神が求められているのか。なぜIさんが選ばれたんだ?歌もダンスもやっていたっけ。オーディション番組の虹プロジェクトを観ていたはずなのに、経緯が思い出せない。

しかし…何よりも、プロデューサーのJYParkが選んだのだから、間違いないのだ。IさんがNiziUのメンバーに選ばれたのは厳然たる事実だ。Iさんはアイドルの才能を見出されたのだから。

それにも関わらず、私は目の前にいるIさんを受け入れることができない。メンバーの一人であるのは確かだ。理解はしているのに、流星群が降る日のような湧き上がる歓声一つもかけてあげられなかった。これは幼さ故だと恥じると、葛藤は声にすらなってくれなかった。私は勝手に生み出したNiziU像と、現実のギャップが苦しかったのだ。

「推し」というのは極めて難しい概念だと思う。抱き始めたら、もはや三大欲求に加えて四大欲求と言えるかもしれない。現実逃避への憧れと、こうした姿で輝いてほしいという最大限の利己的な願望。会う度に目の肥えたファンであるという自己肯定感まで芽吹くのだから、メカニズム的に行き着く先は生命力だろう。

かつて、気持ちは最盛期を常に貫いてほしいと願っていたが、突然プロ意識が綻び、「推し」が私生活を切り売りした瞬間に、はっきりとした憎しみを覚えた事がある。愛と憎しみは常に表裏一体なのだ。何の説明のない凋落なんて、まるで現実世界じゃないか。罪深い裏切り行為に等しい。

そんな過去を見送り、鏡で苦虫を潰した顔をしながら、Iさんのゆっくりとしたステップを見守る。茫然自失の時が溶けると、朝、漸くIさんがメンバーではなかったことに気づいた。
焦った…

いや


なんで?


明晰夢を見たことがないから、
いつか見てみたいと思った朝。

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