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【Vol.02】ケンドリック・ラマーがいる時代にマイルス・デイビスを聴き直すためにfor『MILES : REIMAGINED』

『MILES : REIMAGINED 2010年代のマイルス・デイヴィス・ガイド』➡ https://www.shinko-music.co.jp/item/pid1643178/

「マイルスを今、楽しむためにはどう聴けばいいのだろうか」ということを最初に考えたのは、マイルスと今の時代の接点を考えることだった。その時に、このテーマは欠かせないと思って、真っ先に原稿を依頼したのはここだった。

これに関しては、ジャズ評論家ではなく、今の音楽を聴いている読者のためによりリアルな原稿を書いてくれる人でなくてはならなかったわけで、ヒップホップやネオソウルやファンク、そして、ロバート・グラスパーからマイルス・デイビスまで、ブラックミュージックをフラットに見渡しながら、ケンドリック・ラマーが『To Pimp A Butterfly』を、ディアンジェロが『Black Messiah』を、ビヨンセが『Lemonade』をリリースする時代に合わせて、マイルスのポリティカルな側面を書いてくれる人と考えた時に、僕らの頭には小林雅明さんしか浮かばなかった。僕はこれまで一切面識はなかったけど、オファーしたら快く引き受けてくださったことに感謝している。

そして、言うまでもなく、非常にわかりやすい原稿が送られてきた。ヒップホップに関心がある方はまずはここから読んでみてほしい。

※小林さんのテキスト:The Sign Magazine REVIEWS "TO PIMP A BUTTERFLY" Kendrick Lamar  ➡ http://thesignmagazine.com/reviews/kendrick-lamar-to-pimp-a-butterfly/

その小林さんの原稿を読んだ後で、次に掲載されているロバート・グラスパーのインタビューを続けて読んでもらえれば、僕が知ってもらいたかったことを理解してもらえると思う。マイルス・デイビスを今、聴く意味の一つがわかりやすく示されているし、今、ロバート・グラスパーがマイルス・デイビス関連のプロジェクトに関わる意味も見えてくるはずだ。この二つの記事は繋がっている。

そして、余裕のある方は、『Jazz The New Chapter 3』のケンドリック・ラマー特集の中にある《2015 Looks Like A Lot Like 1968》も併せて読んでみてもらえると更に理解が深まるかもしれない。ついでに言うと同じようなテーマのテキストは『Jazz the New Chapter 1』でも書いている。

ちなみにケンドリック・ラマーたちと同じようなメッセージを自身の作品の中で発したジャズメンとしては、晩年のマイルスのサウンドを支えたベーシストでもあるマーカス・ミラーがいる。2015年にブルーノートに移籍し、リリースした『Afrodeezia』に収録された「I Can't Breathe」という曲の曲名は、は警官に首を絞められ窒息死した黒人男性が、亡くなる前に繰り返した言葉だ。この言葉は人種問題へのメッセージを込めたラインとして多くの人によって叫ばれたことでも知られている。この曲についてはマーカス自身の言葉がここにあるので、ぜひ、読んでみてほしい。➡ http://www.marcusmiller.com/blog/about-afrodeezia/

この曲を久々に聴き返していて、気付いたことがある。2:21あたりのところで学校のチャイムとしても使われるウエストミンスター寺院の鐘の音(※キンコンカンコンキンコンカンコン)がうっすらと流れる。ジャズファンにとってこの音と言えば、マイルスの「If I Were A Bell」のイントロのピアノで奏でられるあのフレーズだろう。マーカスがどんな意図でわからないけど、自身の作品内で幾度となく人種問題へNOを突き付けていたマイルスのことを意識していたら、なんてのは考え過ぎだろうか。

『MILES : REIMAGINED 2010年代のマイルス・デイヴィス・ガイド』➡ https://www.shinko-music.co.jp/item/pid1643178/

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