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Alternative Bill Evans "音響空間をデザインする録音芸術へ"のためのPlaylist

『文藝別冊 ビル・エヴァンス 没後40年 増補決定版』

に増補用の追加論考「音響空間をデザインする録音芸術へ」を寄稿しました。

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この原稿では「Peace Piece」という曲を出発点に『From Left to Right』『Symbiosis』への考察を中心に僕なりのエヴァンスの聴き方を提案してみました。

その原稿を読むためのプレイリストを準備しました。

ここではエヴァンスとフェンダーローズオーケストレーションとのコラボへの言及がほとんどですが、そういった様々な試みがマイルス・デイヴィスが行ってきた試みとも共振しているのではないか、というようなことを考えてみました。ここにはひと通りエヴァンス曲を聴いた後に、マイルス・デイヴィスギル・エヴァンスとのラージアンサンブル作品群や、エレクトリックなサウンドの中にあるいくつかの曲を聴くと、通じるものを感じてもらえるかもしれません。

原稿ではそこまで言及できませんでしたが、そういった文脈で聴くとマイルス・デイヴィスが晩年に発表した『AURA』でのパレ・ミッケルボルグ(※現在、挾間美帆が主席指揮者を務めるダニッシュ・レディ・ビッグ・バンドの元主席指揮者)が作編曲したオーケストラのサウンドが魅力的に聴こえてくる気がします。

ここからは原稿には書けなかった部分。プレイリストの最下部です。

エヴァンスのフォロワーは世界中にいますが、その中でも特に面白い人でギタリストのラルフ・タウナーという人がいます。

ヨーロッパの名門レーベルECMを代表するアーティストで、ジャズと枠で括るのが難しい奇才ですが、エヴァンスの和声をギターで奏でたいと言うような発言をしている人でもあり、エヴァンスゆかりの曲を何度も演奏している人でもあります。

ラルフ・タウナーのギターを聴いていると、エヴァンスの「Peace Piece」を聴いているときに感じたような響きや立体感を感じることがあります。ECMならではのリヴァーヴとクールな質感も相まって、ラルフ・タウナーの作品には演奏の素晴らしさだけでなく、レコーディングやミックスも含めた作業の中で生み出した音響空間がデザインされている面白さがあるように思います。もしかしたらこの河出の論考に書いた僕が魅了されているエヴァンスの側面をもっとも鮮やかに体現しているのはラルフ・タウナーなのかもしれないと思ったりします。

自分で原稿を書きながら、ビル・エヴァンスにはまだまだ発見できる余地がありそうだなと思いながらワクワクしていましたが、そこからラルフ・タウナーに飛んで、

古楽やインド音楽などを取り込んでいたグループのオレゴンや、

(そのオレゴンのメンバーを迎えて)サイケデリック・ジャズからニューエイジへと向かったポール・ウィンター率いるウィンター・コンソート

あと、チック・コリアとの『Crystal Silence』など音響にも意識的で、ロックにも踏み込んでいたゲイリー・バートン

など、ラルフ・タウナーが関わってきた様々な点をエヴァンスを聴く視点から聴き直していくとすげー面白かったり。

そんな話もいつか書いてみたいですね。

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