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「COVID-19とジャズ:非常事態宣言下のアメリカのジャズ・シーンの取り組み」と「個人と社会のこと」

ビルボード・ジャパンからCOVID-19禍での音楽の状況について計4回で連載してほしいとオファーがあり、以下の4つの記事を書きました。

僕が書くということはジャズについて書くということになるのと、僕が書くということは音楽ビジネスとは別の側面の文脈になるので地味な話になりますがいいですか、たぶん話のメインは「教育」になると思います、って感じでやり取りしてOKもらってから書いたので、革新的な技術も、斬新なアイデアも出てこない実に地味な話の連載になりました。

1回目はかなり早く動いていたスナーキー・パピーのレーベル”GroundUP Music”の取り組みについて。

日本のように”自粛”ではなく、営業自体が”禁止”だったアメリカで彼らが今までやっていた演奏活動をインターネット上に持っていくのではなく、オンラインでのレクチャーやレッスンを始めた彼らについて書いてみました。

2回目はbandcampについて。COVID-19禍で存在感を増しているこのサービスをジャズ・ミュージシャンやレーベルがどう利用しているかについて書きました。

実は1回目の延長の意味合いもあって、スナーキー・パピーのGroundUP Musicが自身のサイトでライブ音源を販売していることに繋げて、SpotifyやAppleMusicのように定額で聴き放題のサービスが主流の時代に音源を販売することについて書いたものでもあります。

3回目はジャズの中心地ニューヨークのライブハウスの取り組みついて。

ジャズのシーンにおいてライブハウスがどういう役割を担っているのか、みたいなことにもつながる話を書きました。以前書いた挾間美帆にアメリカのビッグバンドのシーンについて語ってもらったインタビューを併せて読むとThe Jazz Galleryのことについてはより理解しやすくなるかもしれません。これもGroundUP Musicのオンライン・レクチャーと併せて読むと通じるものがあるのがわかるはず。

4回目、最終回は総括的な意味で、アメリカのジャズ・シーンがどういう取り組みをしていたかを公共的な施設やNPOから見てみるという記事。リンカーン・センターとハービー・ハンコック・インスティテュートについて書いていて、つまりこれまたGroundUP MusicやThe Jazz Galleryの延長のような記事になっています。
こういう状況になったときにまずは若者への教育サポートをどれだけやるかってところから動き出している、って話になってます。トリニダード・トバゴ出身のトランぺッターのエティエンヌ・チャールズが作ったアフリカン・ディアスポラを子供に解説するための動画とか、ぜひ多く人に見てもらいたいかなと。

以上の4点です。

この連載について相談されたときに、浮かんだアイデアがあって、それは「COVID-19以後、新しいことに取り組んでいる事例というよりは、これまでの活動の延長にあるものを、この状況下でいかにやるかに取り組んでいる事例を紹介する」ということでした。

そういう地に足の着いた活動をしている例をあげつつ、同時にCOVID-19禍で何を優先するかってところで真っ先に「教育」的なところに向かったアメリカのシーンを紹介しておくのも重要かなと思ったのもあります。それはもしかしたら、音楽シーンと社会の関係みたいなことと繋がる話かもしれないなと思ったからです。それにそこにアメリカのジャズシーンの哲学もしくは本質みたいなものがある気がしたのもあります。

そんなことを念頭に置きながら書いた連載でした。

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