2-1-a.) 抑圧されたエロース
『エレクトラ』において「性」の抑圧という要素が最も顕著に語られるのは、再会を待ち望んでいた弟に対し、エレクトラが自身の「女の成長」を語る場面であろう。この部分はヒューザスも講評で取り上げている(この部分はオペラにおいても一部短縮、改訂されて引き継がれている)。
分ってくれるでしょう、オレスト、甘美な戦慄を
わたしはお父さまに捧げてしまったのよ。
たとえわたしが肉のよろこびにひたったとしても、
お父さまの深い溜息が、お父さまの苦しげな呻き声が
わたしの閨にまでひびきわたらな