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卒業論文

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エレクトラの「死」ー2012グラーツ『エレクトラ』の演出についてー
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note版あとがき -Liebe Grüße,

この卒論が劇的に動いたとき、私はドイツ・ケルンに滞在していました。そして、生きるか死ぬか…

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目次 エレクトラの「死」–2012グラーツ『エレクトラ』の演出について–

序論 0-1. 『エレクトラ』との出会い 0-2. 『エレクトラ』変遷 第1章 2012グラーツ『エレ…

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結論 b.) 「芸術」と「学問」

 終わりに、私がもう一点確認したいことについて、オペラ作品をはじめとする「芸術」と、それ…

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結論 a.) 「演出」と「作品」

 「2-1. 分裂する評価」でも述べたように、今回2012グラーツ『エレクトラ』は多くの批評家の…

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結論 ―『エレクトラ』演出から見えてくるもの

a.) 「演出」と「作品」 b.) 「芸術」と「学問」 ここまで来てくださってありがとうございま…

3-3. 「演出」の到達点 ―「名前のない踊り」をもとに

 ではここからこれまでの考察を踏まえたうえで、エーラト演出の『エレクトラ』を例に「演出」…

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3-2-b.) 「自分」を見つける瞬間

 自身の演出意図についてエーラトがインタビューで特に強調した点に「瞬間的な共感」というものがあった。  これは「自身の演出に関して観客へ何らかのメッセージがあるか」という質問に対して現れた表現であり、以下が彼の回答である。 私にとってまず重要なのは、心理状態を照らす(diese Seelenzustände auszuleuchten)ということだった。 (中略) 私のメッセージとして一番好ましいのは、私が瞬間的に自分を登場人物の誰かと同一視できたとき(wenn ich

3-2-a.) 異化効果 ―「エギスト=フロイト」の錯覚

 次に、『エレクトラ』という作品に限定せず、エーラトの「演出」方法、彼の「演出」そのもの…

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3-1-b.) クリュソテミスへと引き継がれる「オレスト」

 次にエーラトが強調したのはクリュソテミスである。  自分の未来を見据え、結婚し母親にな…

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3-1-a.) 「死なない」エレクトラ / 「死んだ」オレスト

 インタビューに際し、まず私が明らかにしたかったのはやはり終局の「立ち尽くすエレクトラ」…

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第3章 エーラト演出についての解釈の試み

 2012グラーツ『エレクトラ』を土台としてエレクトラの「死」というものを考えるにあたり、20…

2-2. 分裂する評価 ―レジーテアターか「原作への忠実さ」か

 では、この2012グラーツ『エレクトラ』に関する実際の批評を確認していきたい。  多くの記…

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2-1-b.) 変形するタナトス

 次に、『エレクトラ』におけるタナトス(死の欲動)の要素を考えてみたい。  フロイトはこ…

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2-1-a.) 抑圧されたエロース

 『エレクトラ』において「性」の抑圧という要素が最も顕著に語られるのは、再会を待ち望んでいた弟に対し、エレクトラが自身の「女の成長」を語る場面であろう。この部分はヒューザスも講評で取り上げている(この部分はオペラにおいても一部短縮、改訂されて引き継がれている)。 分ってくれるでしょう、オレスト、甘美な戦慄を わたしはお父さまに捧げてしまったのよ。 たとえわたしが肉のよろこびにひたったとしても、 お父さまの深い溜息が、お父さまの苦しげな呻き声が わたしの閨にまでひびきわたらな