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かっこいい映画miscellaneousからのかっこいいクラシックその1

バーナード・ハーマン「北北西に進路を取れ」

そりゃこのメンツだもん。カッコいいに決まってるんだけども。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
タイトルデザイン:ソウル・バス
音楽:バーナード・ハーマン
youtu.be/xBxjwurp_04

佐藤勝「用心棒」

「用心棒」のサントラというのは、昔細野さんがある雑誌で子供の頃に衝撃を受けた映画音楽、というテーマで挙げていた作品でもある。このテーマ曲も不思議なサウンドなんだけど、劇中の音楽も、芸者が踊るシーンで「シング・シング・シング」みたいなリズムの曲を三味線でやってたりとか、とにかく変。基本ジャズ風の音楽。細野さんが子供心に心惹かれたのも頷ける。映画そのものも黒澤映画史上最も主人公がカッコいい映画(三船はこの作品でヴェネツィア国際映画祭の主演男優賞を受賞している)なので、絶対に見るべし。んで、このメロディにこのコードを付けるかね?っていう、すごいコード進行なんだよこれ。ジャズでありラテンでもある。映画そのものは「西部劇風時代劇」なのでこういうメロディ和風、アレンジは洋風、という音楽なのであるが、そうやって作られた映画が後に西部劇(マカロニだけど)に翻案されるというのもまたすげえ。

youtu.be/vBw99ghST1g

ウラジミール・コスマ「Promenade Sentimentale」 (DIVA)

おじさんたちはゴダールがどう、フェリーニがこう、とか言ってるわけだけど、1980年代育ちの我々には、そういったスカしただけの映画よりも、ちゃんとエンタメ要素もあって、しかも冴えない音楽オタクが主人公のこっちの方が、一言で言えば、我々にとっての「青春」な映画なわけなんだけども。

これがデビュー作となる監督:ジャン=ジャック・ベネックスは後に「ベティ・ブルー」でヒットを飛ばして有名になるんだけども、その頃には、この早朝のパリでのデートシーンの色味に代表される「ベネックス・ブルー」として名を馳せることになるわけだが、「キタノ・ブルー」よりこっちの方が全然先。
https://youtu.be/wQnpAcW-Pi4

エリック・サティ「グノシエンヌ1番」(「その男凶暴につき」)

この「DIVA」が1981年。北野武初監督作品の「その男凶暴につき」が1989年。「その男〜」では色調はまだ「キタノ・ブルー」ではないけど、主人公のテーマ曲として使われているのがサティのグノシエンヌ1番で、「DIVA」の「Promenade Sentimental」と似た雰囲気の曲。これは映画のサントラアレンジ版(ハープシコードやリズム楽器が追加されている)ではなく、より「Promenade Sentimental」に近い原曲版アレンジ=ピアノ演奏によるもの。
https://youtu.be/CiuIap2BJJ8

エリック・サティ「気難しい気取りやのための3つのお上品なワルツ:第2曲 鼻メガネ」

その、「ジムノペディ」や「お前が欲しい」などで有名な、「家具の音楽」を標榜したフランス近代の作曲家サティの小品。1980年代まではほとんど知られていなかったが、当時の「環境音楽」ブームとともに突如注目を集め人気のクラシック音楽作曲家となった。
https://youtu.be/PNeyOKdZl2A

クロード・ドビュッシー「夢」

ピアノ曲「月の光」「亜麻色の髪の乙女」「子供の領分」、オーケストラ曲「牧神の午後への前奏曲」「海」などで有名なフランス近代印象派を代表する作曲家の比較的初期の作品。冨田勲によるシンセサイザー版と比較して聴いてみて欲しい。

なお、ドビュッシーは生前からクラシック界の大作曲家として著名だったが、サティはポピュラーミュージックの歌曲などの作曲も手がける(「お前が欲しい」などはそういった曲のひとつ)、当時の「市井の作曲家」でもあったが、ドビュッシーはサティとも親交があり、サティの代表曲「ジムノペディ」のオーケストラ版のアレンジをドビュッシーが行っている。
https://youtu.be/-ElRrhWViC4

モーリス・ラヴェル「水の戯れ」

ドビュッシーと並ぶフランス近代印象派を代表する作曲家、ラヴェルのピアノ曲。代表曲は「ボレロ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「マ・メール・ロア」など。この演奏は時代を代表する女性ピアニストとして人気を博したマルタ・アルゲリッチによる。

ラヴェル、ドビュッシー、サティは同時期のフランスの作曲家で、20世紀初頭から第一次世界大戦前後くらいの時期に活躍した。その前の時代のロマン派(ショパン、チャイコフスキーなど)は西欧の中心地=イタリア・ドイツ・オーストリアの音楽に東欧やロシアの民族音楽を取り入れたが、この時代になるとジャズなどの影響も出てくるようになり、古典的な西洋音楽理論から意図的に外れた和声が取り入れられるようになる。
https://youtu.be/nSNGK6dJ0qs

ジョージ・ガーシュウィン「ポーギーとベス」(サマータイム)

https://youtu.be/lqDxsr-0w7c

「ジョージ・ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」

https://youtu.be/Sgj2ISyNkGM

サマータイム」など、後にジャズのスタンダードとなる名曲を多数残したアメリカ・ブロードウェイの作曲家ファームであるティン・パン・アレーを代表する作曲家の一人、ジョージ・ガーシュインはラヴェルにオーケストレーションを師事しようとしたが「二流のラヴェルになるより一流のガーシュインになれ」と断られたという。ちょっとイイ話、とかそういうんじゃなくて、そういう人が同時代に活動してた、って話ね。

ガブリエル・フォーレ「ベレアスとメリザンドより シシリエンヌ」

これらの少し前の時期、ラヴェルの師にあたるのが同じくフランスのフォーレ。和声やリズムの解釈は印象派の時代より穏当で、後期ロマン派に分類される。

https://youtu.be/EXrmL-SpknQ

カミーユ・サン=サーンス「動物の謝肉祭より 水族館」

同時代にフォーレとも親交が深かったのがサン=サーンス。後期ロマン派を代表するフランスの作曲家で、「動物の謝肉祭」の中では「白鳥」のバイオリンによる主旋律も特に有名。
https://youtu.be/HK0YPUDe5Ws

モーリス・ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調 第3楽章 プレスト」

フランス近代というのは現代のサントラやポップスに特に大きな影響を与えていて、かつ時期的にはジャズからの影響を受けた音楽も存在するので、今の音楽からクラシックに入っていくには好適だと思う。ジャズの影響を受けていると言われるラヴェルのピアノ協奏曲第3楽章。
https://youtu.be/qy_RzRVJtpo

クロード・ドビュッシー「子供の領分より ゴリウォークのケークウォーク」

これもジャズからの影響があると言われているピアノ曲の冨田勲によるMOOGシンセサイザーアレンジバージョン。冨田はこのアルバムで日本人初のグラミー賞を受賞。
https://youtu.be/XQcy5Y-1l6E

フランシス・プーランク「オーボエソナタ 第一楽章」

サティやラヴェルの少し後の時代に彼らと親交があり、「フランス六人組」として有名になった作曲家の一人がプーランク。印象派と現代音楽の中間の時代で、現代音楽ほど調性が失われていないという時期の、最後の近代音楽の時代と言えると思う。同時代には既にブロードウェイミュージカルやハリウッドサントラが全盛を迎えるが、そちらはより明瞭な響きを強調するロマン派からの影響がより大きい、
https://youtu.be/ZVHU9xzdxXk


アルチュール・オネゲル「夏のパストラール」

「フランス六人組」からもう一人。オネゲルは「パシフィック231」という、蒸気機関車を題材にした楽曲でも有名。この動画の指揮はバーナード・ハーマンとなっているが、「北北西に進路を取れ」や「タクシー・ドライバー」のサントラで有名なハリウッドを代表する作曲家のことがどうか不明だがおそらくそう。時代と影響の受け/与えの関係がよくわかる。
https://youtu.be/v6GI9zY-Pxo

オリヴィエ・メシアン「トゥーランガリラ交響曲 第2楽章 愛の歌1」

フランス近代の最後に現代音楽の始まりとも言うべき作品を。フランスの作曲家メシアンの戦後(第二次大戦後)すぐの作品。トゥーランガリラはサンスクリット語で「愛の歌」。最初期の電子楽器の一つ「オンド・マルトノ」を使用した楽曲で、曲的にはもはや明瞭な調性はほとんど感じられない。ただ、後代のホラー映画やSF映画のサントラに近いようなイメージは感じられると思う。交響曲と言っても全10楽章から成る(普通は4楽章)大曲だが、一つの楽章だけなら8分くらい。そんくらいから入れば飽きないで聞けると思う。
https://youtu.be/pTFfz1HpugY

イゴール・ストラヴィンスキー「春の祭典」1913年初演

ちなみに印象派や六人組からいきなりこうなったわけではなくて、ドビュッシー/ラヴェル/サティなどとほぼ同時代にパリで活動していたロシア人の作曲家ストラヴィンスキーによる「春の祭典」という、タイトルだけは誰もが知っているバレエ曲が、こういう非西欧的・土着的民族音楽のリズムや旋法を大胆に取り入れて、調性や西洋の伝統的和声法が徹底的に破壊さていく、そのきっかけとなった(これらの混沌は作為的に作り出されたものであることに留意)。

30分を超えるとっても長い曲なんだけど、こればっかりは断片で聞いてもしょうがない。ディズニーの名作「ファンタジア」ではこの曲にあわせて恐竜の時代をアニメで描いていたが、なんでもいいからなるべく映像的なイメージを勝手に頭に思い浮かべて聴くと良い。

この演奏は現代音楽の作曲家でもあるフランス人、ピエール・ブーレーズの指揮で、クリーブランド管弦楽団による1969年の演奏。一見でたらめのようにすら感じる曲だがこれを譜面にするとなると超難曲となるため、演奏ごとに表情の全然変わってしまう曲で、数ある「春の祭典」の演奏の中でも圧倒的な最高傑作だと思っている。
https://youtu.be/Dn-UOVxOmq4

イゴール・ストラヴィンスキー「火の鳥より 終曲」

ストラヴィンスキーだって最初からこんな暴力的だったわけではない。直前のバレエ曲「火の鳥」はとにかく美しいだけの曲。このFinaleを聴いて、涙が出ないような奴はダメ。

映像はディズニーがファンタジアをリメイクした(「魔法使いの弟子」の部分のみオリジナル通り。他は曲映像差し替えの新作)「ファンタジア2000」のエンディング部分。
https://youtu.be/3kw-ZQzOjA8


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