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【2024年大統領選】トランプ前大統領は共和党予備選で勝てるか

 こんにちは。雪だるま@選挙です。今回は、トランプ前大統領が2024年に共和党予備選で勝てるのかを考えます。まずは予備選に向けた党内の状況から見ていきます。

トランプ前大統領 予備選勝利のカギ

 トランプ前大統領は、2021年1月の退任から1年半が経ちました。トランプ氏は2020年の大統領選が不正選挙だったと主張していて、トランプ氏の支持者は2021年1月6日に連邦議会議事堂襲撃事件を起こしました。
 トランプ氏は、2024年大統領選での再選を狙って出馬する意向であると伝えられていますが、再選出馬に向けては共和党の予備選で勝利することが基本的には必要となります。

 トランプ氏の弱点は、「不正選挙」の主張への強いこだわりです。

 トランプ氏が中間選挙の予備選に向けて擁立した不正選挙を主張する刺客は、必ずしも勝利できているわけではありません。2020年の大統領選で僅差でバイデン氏が勝利したジョージア州のケンプ知事やラッフェンスパーガー州務長官(いずれも共和党)は、不正を否定し選挙結果を覆すよう求めるトランプ氏の圧力に応じませんでしたが、今回の予備選ではトランプ氏が立てた刺客を大差で破りました。

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 このことから、トランプ氏の不正選挙という主張自体は選挙結果を決める重要な要因になっていないことがわかります。一方で、トランプ氏の立てた候補はオハイオ州やペンシルベニア州、アリゾナ州など各地で勝利しており、トランプ氏のendorsement(推薦)が選挙結果に影響を及ぼしていることもまた事実です。

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 一見すると矛盾するように見えるこの事実は、トランプ氏の業績や政治的主張と不正選挙が、共和党員の中で分けて考えられていることを示唆しています
 共和党員の中で、反トランプは2割弱、トランプ支持者は4割程度で、残りの4割が「浮動票」の役割を果たしていると考えられます。これらは、1月6日事件の公聴会の結果、トランプ氏への投票可能性が上がったか下がったか、あるいはトランプ氏に今後投票することはあるか、など世論調査の設問から概ね推測できます。

世論調査からの推測手法は少し細かいですが、以下に例示しておきます。この調査は、議会襲撃事件の公聴会(7月)に関して行われました。
トランプ氏が2024年大統領選に出馬すべきでない、という設問に「強く賛成する」と答えた人は共和党員の中で19%で、この人たちは反トランプといえます。一方で、「強く反対する」と答えた人は共和党員の中で41%で、この人たちはトランプ氏の強固な支持者であるといえます。
「多少は賛成する」「多少は反対する」と述べた人は合わせて30%いて、少し解釈は難しいですが、少なくとも強いトランプ支持でも反トランプでもなく、実際の投票行動では2020年の選挙が不正選挙だったかどうかは決め手にならず、政策次第で投票するという点では「浮動票である」といえます。
なお、この調査では9%が「分からない」と回答しています。        
    Reuters/Ipsos Poll: January 6th Committee Hearings, July 20-21,2022

 選挙結果を左右するのは4割程度の「浮動票」ですが、この浮動票は「トランプ氏に投票するかどうかにおいて、不正選挙が主要な要素にならない」と考えられます。言い換えると、2024年の大統領選においてトランプ氏に投票するかは、トランプ氏がこれからどのような政策を行うか(未来)で決まり、不正選挙だったか(過去)は投票行動に影響しないという層です。

 さらに、この層は実際の政策で投票先を決定するので、トランプ氏が不正選挙にこだわるほど票は伸びにくくなります。実際、ジョージア州のケンプ知事は不正選挙は否定するものの共和党内では保守派といえるため、政策を見て投票する層はトランプ氏推薦候補ではなくケンプ知事に投票したと考えられます。
 一方で、トランプ氏が刺客を立てた相手が共和党の主流派(中道派)である場合には保守派の票がトランプ氏推薦候補に集中すると考えられます。

 トランプ氏が予備選で勝つためには、不正選挙の主張を抑え、バイデン政権への批判など政策に選挙の重点を絞ることが必要です。

トランプ氏の対抗馬となりうるのは

 トランプ氏に現時点で対抗できる勢力をもつ政治家は、共和党内にはいません。しかし、潜在的に来年以降はトランプ氏にとってかわる可能性がある政治家はいます。

 1人目はデサンティス知事(フロリダ州)です。現時点では最も有力な対抗馬といえるでしょう。世論調査ではトランプ氏に次ぐ2番手の位置をキープし、「非トランプ」候補では頭一つ抜けた存在といえます。

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 デサンティス知事は保守派で、イデオロギーの面でもトランプ氏から支持層を吸収しやすいといえ、また大統領選では予備選・本選ともに重要州であるフロリダ州の知事を現職で務めていることから、選挙戦略上も優位な立場だといえます。
 トランプ氏とは適度な距離感を保ち、24年の出馬に備えていつでも不正選挙からは離れる位置にはいますが、政治的体力を温存するためかトランプ氏との表立った対立は控えています。

 2人目は、ペンス副大統領です。トランプ政権下で副大統領を務めたペンス氏ですが、2020年大統領選でバイデン氏の勝利を最終的に認証したことから、トランプ氏とは関係が冷え込んでいます。

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 世論調査ではデサンティス氏に次いで3番手ですが、少し離されているように思われます。ペンス氏は不正選挙ではないと公式に宣言した以上、デサンティス氏のように不正選挙論との関係性を曖昧にすることはできず、トランプ氏の熱心な支持者からは敵とみなされており、政治的体力を徐々に奪われている印象はあります。

 3人目は、ヘイリー元国連大使です。ヘイリー氏は、トランプ政権下で2年間国連大使を務めました。女性でサウスカロライナ州知事を務めた経験があり、しかも非白人系であり本選では有色人種への広がりも期待できます。

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 一方ヘイリー氏については、2021年2月にトランプ氏を批判するインタビューが発表され、「トランプ氏との関係を曖昧にする」ことが重要な段階で少し踏み込み過ぎた感はあり、世論調査でも良い数字は出ていません。公職から離れて4年が経とうとする中、存在感を示せていないのが現状です。

 現段階では、世論調査の結果などからトランプ氏とデサンティス氏のどちらかが共和党候補として指名される可能性が高いといえます。トランプ氏が今のところ支持率では1位ですが、デサンティス氏はこの1年で支持を拡大しトランプ氏に迫る調査も見られるようになりました。

 中間選挙が終われば大統領選レースが本格化することとなり、予備選はこの2人を軸に展開していくことになりそうです。 

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