広告代理店がどうやって事業共創をやっていくべきなのか本気で考え始める

これからの広告代理店は、広告だけじゃなく、クライアントと一緒に事業を共創して新しい稼ぎ方をつくっていかなければならないということが業界全体で言われている。そして、企業とのコネクションと広告の企画作業で培ったクリエーティブがあればなんとかなるはずだと多くの中の人は楽観的に捉えている空気を感じる。しかし、そんな簡単に画期的な事業を考えられるなら広告代理店はGoogleの広告市場破壊を許していないはずだし、事はそう簡単な話ではないと思う。


新規事業開発=DX化という風潮。テクノロジーに詳しいんだっけ?

社会を見てみると、新規事業開発といってもイチから全く新しい事業を立ち上げるのではなく、既存の事業をシステム化するいわゆるDX化がメインとなっている。DX化という言葉は何年も昔から聞く単語で、AIの次はIoTでその次はロボティクスという社会の流れを見ていると、大学では何年も前からやってることを追いかけている今更感が激しい。しかし、まだまだ日本企業には内部にエンジニアがおらず、システム開発するリソースを持たないため、どの会社も、新規事業という名のDX化を推進するために外部のコンサルを雇っているようで、この分野は想像以上に需要があるらしい。最近ではリアルからWEBへの転換を図る動きが活発になっていて、さらに追い風が吹いている。ということで、新規事業開発を支援するというなら、テクノロジーの知識はほぼ必須だろう。広告代理店自体が内部エンジニアがほぼいない側の業態であるという問題があるが。


新規事業開発支援の主流はデザイン思考。個人の能力はあまり重視されない。

今の先進国では、テクノロジー領域でのイノベーション成長スピードが鈍化してしまったことで企業の中央研究所は力を失い、デザインファームとともにユーザーエクスペリエンス(広告代理店的に言うとコミュニケーションデザイン)領域でイノベーションのあるプロダクト開発を行う流れがある。デザインファームは、デザイン思考ワークショップを開いてクライアントと一緒に考えるスタイルを取る。デザイン思考というのは、ユーザーのインサイトを掘り起こして形にするというデザイナーのデザインプロセスを、大人数で行うことで誰にでも再現性を持たせるフレームワークで、デザインイノベーティブなプロダクトを発想するのに相性が良いということでIDEOが広めた結果、今ではさまざまな企業が取り入れている。


かといってデザイン思考はイノベーションを生まない気がする。

自分は最初、デザイン思考というかワークショップの必要性に疑問を感じていた。何よりも、ブレストがアイディエーションに適さない。どう考えても、大人数での議論の内容を常に把握し、誰も予想だにしないアイデアをぱっと思いつける天才が参加していることを前提にしている。そうでないなら、いくらアイデアが出てきても煮詰めて考えられてないアイデアの中からはイノベーションは出てこないのは想像に難くない。それは意外性のあるものなのか、実現可能なのか、儲かるのか。ユーザーの顕在化されたニーズを元にするデザイン思考は、既存のUI/UXの改善には役立つが、イノベーションを生み出すには色々なものが欠落している。そもそもデザイナーは、発明家でも起業家でもない。

濱口秀司さんのバイアスブレイクの考え方には、一考の価値がある。本気で会社としてやっていくなら、個人のひらめきに依存しない理論武装が必要だ。出てきたアイデアからバイアスを炙り出し、そこからさらに飛躍するといったもう一段階何かをかますのは筋が良さそうだ。


とはいえ、開発を含めた集中ワークショップはマスト。

デザイン思考には否定的だが、何度かワークショップを体験し、ワークショップという形態自体は必要だと思い始めた。リスクの高い判断が求められる事業開発の提案で、広告代理店のこれまでのやり方の通り、想像上のクライアントの課題と想像上のユーザーのインサイトを元に企画書を詰め、月に数回の打ち合わせで意見を擦り合せていくのではコミュニケーションもスピードも圧倒的に足りないし、クライアントの信用は得られない。どう設計するかは課題だが、短期間で集中して濃密な打ち合わせを行うことは理にかなっている。広告代理店がクリエーティブを活かしたいなら、このワークショップ設計に力を入れるべきだろう。また、やはり実際に動くものがあると説得力が段違いにつく。いくら立派な企画書をつくっても、本当に実現可能なのか、ユーザーが欲しいと思うかは検証できない。以前にも指摘したが、プロトタイプをつくらずにいるのは、工学研究者が開発もせずに空想で論文を書くようなものだ。スタートアップのように研究開発ができるエンジニアと一緒になってプロトタイプ開発を繰り返すプロジェクト体制も必要となってくるだろう。

クリエーティブの部署にいると相変わらずCMやPRで話題になってTCCやカンヌライオンズとかで賞を取ることでしか評価はされないし、自分こそやってやろうという気概や意識がある人はあまりないように見えるが、今、社会で求められているのは誰も予想だにしなかったイノベーションを起こせるクリエーターなのは間違いない。


参考にした本たち








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スキされちゃった?!
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大学院で生体計測やロボティクスに関する研究に従事.現在,広告代理店にてテクノロジー系とコピーライティングが仕事.Ph.D取得したさが今MAX.
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