自分が出雲市長であれば
たぶん、迷いなく中止にしたと思う。物事はいろんな角度からみることが必要で出雲駅伝の「開催or中止」だけにフォーカスすると話がぼやけてしまう。
記者会見で市長がもらした「ボランティアをはじめとしたスタッフが65歳以上」ということに焦点があつまったが、たーくさんの問題をいっぺんに解決する方法が、出雲駅伝を断念することであったはずで、ある側面だけをみて、論ずることはできない。市長の仕事は出雲駅伝だけではない。世界中のあらゆる国と同様に、出雲市でもコロナにまつわる問題は山積しているはずだ。市長の頭を悩ますたくさんの問題のひとつが「出雲駅伝」だからだ。
市民や職員といったリソースをいつもより開催へのハードルが高めに設定された出雲駅伝に投入するよりは、目の前にある問題解決に注力を注ぐべきだし、年間3000万投入している出雲駅伝への予算は少なくとも3000万円以上の経済効果を見込めるから使うわけであって、出雲駅伝を開催にともない「駅伝はやるけど、極力、出雲に来ないでくださいね」サイドブレーキをひいたまま、ガンガンアクセルを踏むキャンペーンに3000万円を使うのはやはり得策ではないのだ。
出雲の本当にかきいれどきは全国の八百万(やおよろず)の神々が出雲の国に集まる旧暦10月「神無月」。出雲駅伝よりはるかに歴史のある、こちらを大事にしたい。せっかく神様があつまるときに、「観光客は来ないでください」とはいいたくないですからね。
ロードレース開催は難しいかもしれないけれど、観客を制限できるトラックで競技会を行うことはできなくはなかった。とは思うが、それはあくまで競技としての代替案であって、出雲市が観客がこない競技会に予算を割くことはできないし、自分が出雲市民だったら、もっと別のことにリソースを注力してもらいたいというはずだ。たとえば、旅行・観光産業向けの給付金とかさ。
いま、各地方自治体が主導になってはじまったマラソン大会が軒並み中止となっている。県外から多数の参加者が見込める市民マラソンを観光資源として目につけたことから、近年、あらゆる地域で観光と結びついたマラソン大会が産まれた。これまでが市民マラソン大会バブルであって、多すぎたともいえる。新聞社が主催(共催)の全日本や箱根と違い、出雲駅伝も出雲市が主催であるから、同じような対応になるのは当然だ。
一方で全世界的に小さなトラックレースがポコポコ再開している。バーチャレ福島をみて、「わが町でもバーチャレをしたい」という人たちがうまれている。観光資源としてのトラック・レースではなく、自分たちの地域での「陸上コミュニティーを活性化させたい」という思いが動機だ。
これまで「OTTを地方でも開催してください」という声をたくさんいただいていた。スタッフの移動費だけで、収益がでないことから見送ることが多かったのだが、「それならば自分たちで作ってみよう」という動きがはじまったことが面白い。いくつかの大会はOTTのスタッフやボランティア経験者がかかわっていくことで、ノウハウが広まっていってるようだ。
楽しみにしていたロードレースはなくなったけど、かわりとなる楽しみを人々はみつけたようだ。それまで受動的に「レースに出る、観る」ことから、能動的に「レースそのものを作ってみる」ということにシフトしはじめたのだ。
だから、「みなさん出雲に来てくださいね」というメッセージが発せられる状況になるまで、これはこれで静かに見守るのがいいのかなと思ってる。
ところで中継所で旗をもっている審判は若い女性だよ。
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月刊といいながら、一日に何度も更新する日もあります。「いつかビジュアルがたくさんある陸上雑誌ができるといいなあ」と仲間と話していたんですが…
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