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タコスの読書:読書という荒野

本好きにこの人のことを知らな人はいないでしょう。本が売れないと言われているこの時代に24年間で23本のミリオンセラーを世の中に送り出した天才編集者、見城徹。代表作は『大河の一滴』(五木寛之)『弟』『天才』(石原慎太郎)などなど。また、最も封鎖的な業界と噂の出版業界に風穴を開けた幻冬舎の創業者でもあり、最近話題の箕輪さんの師匠にあたる人でもあります。

本書は、本を貪り読んで苦しい現実を切り拓け!と叫び、見城徹という人間がいかにして自分の言葉を獲得し、道を切り拓いてきたかを語り尽くす一冊。読書とは、著者の言葉を全身に浴びる行為。膨大な言葉の中から、自分にとって必要な言葉を選ぶ必要があります。自分で選び、自分で行動し、自分で血肉にするしかない。
読書を続ければ続けるほど、このように思っています。しかし、この本を読むと「まだまだ読書への姿勢はお子様だな」そう挫折感を味わうほど、著者の読書の世界は圧倒的です。でも、挫折感を味わせてくれた言葉の数々を糧に、読書を続けていく。それが読書なんだと思わせてくれる一冊です。

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人間と他の生き物の違いは何か。それは、人間という生き物だけが言語を操れることに他ならなりません。猿は「ライオンが来た、危険だ」という意思疎通が可能です。彼らはこのような1次的情報(事実)を伝えることができますが、それ以上高度な情報を伝える術を持ちません。人間だけが、他の個体と愛情を辛さを苦しさを伝えることができるのです。

我々は3つのことを行うことでしか生を実感することができません。

1,自己検証、自分の思考や行動を客観的に見直し、修正すること。

2,自己嫌悪、自意識過剰さや自己顕示欲を恥じ、自分のずるさや狡量や、怠慢さに苛立つこと。

3,自己否定、自己満足を排し、成長していない自分や、自分が拠って立つ場所を否定し、新たな自分を手に入れること。

一見すると、毒っぽすぎないか?と思うでしょう。しかし、彼に言わせれば人間の本質的な人間力は苦しい時にこそ磨かれるます。戦後、日本は高度経済成長を遂げ、奇跡的復活を遂げたのも、戦争を知っている世代が、その磨かれた力で、経営を行ったから。現代の名だたる経営者も、幼い頃に単身アメリカ留学したり、路上ライブをやって稼いだり、並ではない波乱万丈な生活を送ってそこで人間力を鍛えたのです。しかし、ほとんどの人にそんな波乱万丈な生活は送れません。そこで、本の登場です。本の登場人物の心を理解しようとすることで、他人の一生を生きたような気になれます。それも、命を削るように本に感情移入すること。僕も、よく本を読むと、涙が勝手に出てきて止まらなくなったり、息ができなくなるほど胸が苦しくなります。僕はそこまで人生経験が豊富ではないですが、本を命を削るように読むことで、強くなっていると思います。

また、人間力を高めるのに著者は恋愛と旅行も良いと言っています。ただ、普通の旅行をしても全く役に立ちません。感受性が高く、僕のように、マレーシアに行き、日本にこのままいたらヤバいと肌で感じ取り、留学に行くくらいの行動力があれば別ですが、ほとんどそんなことは起こりません。何故かというと、インターネットのせいです。もちろん、多くの人が楽しむために、良いスポットがネットで検索できるようになって、そこに行くのは経済的に健全なんですが、人間力を高めたいと思っている人が、観光スポットに行っても何も得るものはありません。スマホ無しで、英語も通じないような国にいってこそ、人間力が得られると思います。また、恋愛は全ての力を鍛えるのに有効です。どれだけ短い言葉で相手の心を射止めるか、相手のことを考えて行動できるか、様々な外的要因を考慮しつつ、簡単に言えばゲームみたいなもんです。もちろん、そこに、人間臭さが出てくるからこそ、人間力が磨かれるわけです。

少し前に「美意識」についての記事を書きました。山口周さんと見城さんは全く違うタイプですし、言葉選びが真逆です。しかし、本質は似ているのではないでしょうか。それを圧倒的な熱量で表現しているのが見城さん。スマートに解説しているのが山口さん。

表現者と呼ばれるような人たちの言葉を知り、読み、読みまくって自分の血肉にする。命を削るように毎日を生き、本の中で表現者と言葉と戦う。そんな、地獄のようなこの世界を生きることでしか生を実感することはできない。検証し嫌悪し否定する。そうやって毎日を生きていくしかない。そんな血の匂いのする一冊です。

正直、僕は文章を書くのが苦手で、この本の良さはなかなか伝わっていないと思います。僕のお気に入り10に入るような本です。是非是非、読んでください。ガチでおすすめです。

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