短編小説『炎』
会社員Hは、口の中の違和感に気づいて目覚めた。洗面台の鏡の前で下唇をめくると、数ミリの範囲で火が吹いていた。
「口内炎だ」
と思ったら、家の中の温度に違和感を覚える。暖かすぎる。両親の寝室に向かうとドアの隙間から火の手が伸びている。
寝室を死に物狂いで開けると、火の波がHを襲った。それをなんとか凌いで部屋に入ると、父と母のお腹から火が登っている。
「最悪だ。胃炎か、腸内炎だ。
とりあえず消防車と救急車を呼ばないと」
Hはふと思い出す。
昨日の晩ご飯。Hは残業で帰りが遅くなって、テーブルに出してあった寿司を食べた。
Hのお腹が痛くなり、熱くなる。
Hはトイレに駆け込み、肛門から火を噴いた。
おわり
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