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ジョセフ・H・ルイス【拳銃魔】|激しい雨と少年と拳銃

アメリカ映画|1952年|86分|Gun Crazy

今は、絶版で高値になってしまっている書籍『B級ノワール論――ハリウッド転換期の巨匠たち』(吉田 広明 著)で、ジョゼフ・H・ルイス、アンソニー・マン、リチャード・フライシャーの3人の監督が論じられてるということで、今回アマプラで検索して観て見ました。
ちなみに、書籍『B級ノワール論』は持っておらず、読んだこともなく、目下ネット上で手頃な価格で出ないものかとパトロールしています。

学校に自分で買った銃を持ってきて自慢するバート

■心躍る、序盤のテンポ
始まりのどしゃぶりの夜の街角に現れた少年が覗くのはショーウィンドウに飾られている美しい拳銃。
少年は、レンガでウィンドウを破り、拳銃を手に逃走しようとする。
ここから少年の拳銃への強い愛着が露わになっていくのだが、この序盤のテンポには心踊らされる。

■経済的なつくりというものか
そんな出色の序盤があり、【拳銃魔】(原題はGun Crazy)という変態的なタイトルにも関わらず、意外とまともな物語になっていく。

殺生が嫌いなのに、銃に異常な愛着を示すこの少年・バートは、野球好きの少年がバットに愛着を持つように銃を抱きしめる。
やがて大人になった少年は、得意の射撃を生かして大戦に参加したのち地元に復員してくるが、同じく射撃を得意とするショーガール・アニーと恋仲になって、二人だけの世界に没入し、やがて強盗を繰り返し、破滅していく。
という、いかにもB級ノワール映画なのだ。
経済的なつくりというものなのか、凄まじい速さで進むし、素晴らしい画面の連続だが、テンポが単調なるのか86分がちょっと長く感じるところもある。
ただ、だとしても、傑作だ。

■B級ノワール映画で最後に辿り着く場所
逃避行するバートとアニーは、バートが幼い頃に幼馴染と共に遊んだという幻想的な湿地帯に辿りつくが、間も無く幼馴染たちが二人を追い詰める。
B級ノワール映画では、ラストの舞台として、悪党である主人公の透明さを象徴するような場所に辿り着いたりする。
だいたい幻想的になるそういうシーンが、私はたまらなく好きだ。
ふと思ったが、例えばデビッド・リンチなどは、そういうもののフェチなのかもしれない。

Wikipedia【拳銃魔】


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