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ケリー・ライカート【ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択】|普遍的な普通の人々

映の会 会長
アメリカ北西部モンタナの田舎町を舞台に、厄介なクライアントに振り回される弁護士ローラ、新居の建設のことで頭がいっぱいのジーナ、夜間学校で法律を教える弁護士エリザベス、牧場で馬と暮らすジェイミーら4人の女性たちが、それぞれ悩みを抱えながら懸命に生きる姿を描く。
映画.com

ケリー・ライカートというと、蓮實重彦さんが『ショットの撮れる映画監督』として称賛していることで知っている方々も多いのではないでしょうか。
そういう私も、蓮實重彦さんのインタビュー記事で気になっていて、ついに鑑賞に至ったくちです。

■こんな画面をもっと観たい
なるほど、どのカットも、いやショットも、素晴らしいです。
ロングショットもクローズアップも、積み重ねも拍手もの。
ただ身を委ねて画面の前にいるだけで、アメリカの田舎町の時間の流れ、登場人物の意識の流れを、臨場感たっぷりに見せてくれます。

■語らずとも伝わってくる映画
特に登場人物たちが、何を言うわけでもないのに、それぞれの心情がすごくよく分かる、伝わってくる。
語らずとも、人生のやるせなさが痛いくらい共感できる、素晴らしい手腕で紡がれた映画だと思います。
語弊を恐れずに言うと、映画は物語よりも大切な観せるべきものがあるんだなと感じてしまいました。
出色は、牧場で馬と暮らすジェイミーを演じている女優リリー・グラッドストーンさんは、孤独な人物としてそこにいる、こんな人いるなと不穏感すら覚える静かな演技に胸が苦しくなります。

■アメリカなのに、アメリカでなくてもいい
雄大さはあるものの、そこがアメリカなのかどうかも分からなくなるというか、日本にもこんな場所があるなと思えるような、普通の田舎まち。
また、日本にもこんな人たちいるよな、こんな日常だよなと思える街と人々の風景。
そんなふうに、撮ることができる監督って、なかなかいないように思います。
なんだか、私は、2度ほど訪れたことのある島根県雲南市界隈の美しい景色を思い出しました。

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