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ロバート・アルドリッチ【北国の帝王】|ラギッドな映画

アメリカ映画|1973年製作|122分|Emperor of the North Pole
Blu-ray

■無賃乗車犯vs鬼車掌の中毒性ある映画

映画監督の先輩から紹介してもらいましたが。
”無賃乗車する奴ら”と、”無賃乗車を阻止する車掌”が、殺し合いの対決をする映画だと聞いて、そんなドンキーコングみたいな映画が面白いかのだろうかと思ったものです。

もう少し最もらしく書くと、

1930年代大不況下のアメリカを舞台に、職を求めて鉄道の無賃乗車で放浪を続けるホーボー(浮浪者)と無賃乗車犯を阻止する車掌との対決を描く。

ということになりますが。
変な映画なんです。
その変な映画が、なんか、滅法面白いんです。
記憶に残って、後々面白さが増すんです。
それに、殺し合いの対決といっても、アメリカ大陸を走る列車が舞台ですので、どこか牧歌的です。
緊迫する展開なのに牧歌的な感じが、またクセになる。
どうしても愛してしまう映画です。

■無骨な映画

これは、ラギッドな映画です。
「ラギッド」とは、「無骨な」「ごつごつした」という意味を持ち、そこから「男性的でたくましい」という意味でも使われるということですが、もうこの映画にこそ似つかわしい言葉だといえます。
当初、サム・ペキンパー監督によって企画されましたが、ロバート・アルドリッチ監督が完成させたらしいですが。
この二人の名前が並ぶだけで、もうラギッドですよね。

そして、主役の二人を演じるのが

・”北国の帝王”として語り継がれている伝説の列車乗り「A・ナンバーワン」:リー・マーヴィン
・”俺の列車に乗った奴を五体満足では降ろさない”と言う腕利きの鬼車掌「シャック」:アーネスト・ヴォーグナイン

ラギッドですねえ。

■ジャック・ロンドン、ビートニクとの繋がり

実在する「A・ナンバーワン」は、レオン・レイ・リビングストンという名で有名なホーボー兼作家でした。
彼はホーボーに寛大な人々や、無料の食べ物、仕事、悪質な犬などがどこにいるかを知らせるホーボーシンボルシステムまで完成させた伝説の人物です。
また、ホーボーといっても貧乏人ではありませんでした。
どうやら、貧しくてホーボーになったわけではなく、ロマンとしてホーボー生活を楽しんでいた人たちも多いみたいです。

映画評論家の町山智浩さんが話していたのですが。

有名な作家のジャック・ロンドンは、「A・ナンバーワン」の弟子としてホーボー生活をしていたらしいのです。
つまり、「A・ナンバーワン」は、ジャック・ロンドンの師匠であるということです。
さらに話を広げると、ジャック・ロンドンの「野性の呼び声」という本を愛読していたのは、映画【イン・トゥ・ザ・ワイルド】の主役ジョン・クラカワーです。
その、クラカワーはケルアッの「オン・ザ・ロード」も愛読書だったということです。

町山智浩さんが話していた

そう考えたら、【北国の帝王】って、ビート文学とのつながりもあるんじゃないかと思いました。

■ヒットしなかった?

私は、この映画をリアルタイムでは知りません。
紹介してくれた先輩曰く、この映画は大変評判で、映画好きがこぞって面白いと言っていたといいます。
ただ、「ロバート・アルドリッチ大全(国書刊行会)」には、こんな記述があります。

アルドリッチ監督は語る:
この映画がなぜ当たらなかったのか、どうにもわからない。主要人物の人物像はこれ以上ないまでに明瞭で、観客がそれを見落とすなんて想像もできなかった。つまり、ボーグナインは大勢で、マーヴィンは反体制の個人主義者、そしてキャラダインは身勝手なご都合主義者の若者だ。誰だってこういうだろう。「マーヴィン演じるホーボーの生き方はよくわかる。彼は鋳型にはめられるのを嫌い、抑圧されるのを憎むんだ。こういう人物にこそ声援を送りたい」と。ところがそうはならなかった。誰もそんなところを見ちゃいなかったんだ

ロバート・アルドリッチ大全(国書刊行会)
アラン・シルヴァー (著), ジェイムズ・ウルシーニ (著), 宮本高晴 (翻訳)

■予告編【北国の帝王】

Wikipedia【北国の帝王】

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