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ぼくが音楽の道を志さなかった理由は、藤井風がいたから

 誰にも求められてなさそうな身の上話をしますが、ぼくは両親ともに音楽業界の人間でして、自身も幼少期からピアノをやってたりしていかにも音楽の道に進みそうな音楽少年でした。
 高校生からは軽音部に入ったりしてバンドのキーボードやったり下手くそな弾き語りやったりDTMやったりしていわゆる「全校生徒の前でバンド演奏」なんかも数え切れないほどやったんですが、「大学行ってもやろうな!」なんて声を掛けてくるイケイケなバンドマンに「いや、大学は別にバンド活動しないんで……」と返してびっくりされました。

 かつても、そして今でも「なんで音楽の道目指さなかったの?」と聞かれるたび、「才能ないから」とか「食っていくの大変だから」とか微妙に本筋から逸れた答えをしていたんですが、今ならはっきり言えます。

 藤井風がいたからです。

 不思議ですね。そうです。当時藤井風はいません(厳密には既に生を受けてますが、15年前なので Youtube も始めてないですね)。それでも、それが理由なんです。音楽をかじっていたことがある人なら、これだけでわかってくれるかもしれません。でも、わからない残酷な人には藤井風の凄さを、ほんの断片的にでもいいので伝えられたらと思います。

※ 特定の誰かを dis る意図の記事ではありませんので、あくまで身の上話と藤井風を讃える記事としてご理解いただければ。



藤井風という人間

 彼を一言で形容するなら、ナチュラルボーン音楽マンです。囁くだけで凡人が敗北する圧倒的に魅力的な声。アップテンポで弾き語りできる技術。様々なバックグラウンドを思わせる唯一無二のコード進行とリズム。そのうえでルックスも良く色気もあり高身長。紅白の舞台に実家みたいなスウェットと意味不明なふわふわスリッパ(3万円)で出るメンタル。パワーが高すぎるんですよね。
 生まれついての天才というよりは、ポテンシャルが高すぎてレベルアップするだけで天下を取れるイメージです。今はまだ「きらり」しかマスにヒットしてませんが、今後何曲も紅白に出るような曲を出してくることでしょう。全然メディアに出てこないのもニクいし、Youtube の PR ですら独自のスタイルを築いているのが半端ない。

 この藤井風の何が問題かというと、ゆゆうた氏なども言ってましたが「こいつは俺の上位互換だ」と感じさせるパワーがありすぎるんですよね。
 歌手と一言で言っても、色んな音のスタイルや声質、演出や世界観があります。レーベルやメディアはそれを知っているので、アーティストに色んな要素を付加して唯一無二にしていきます。しかし、結局花形であるシンガーソングライターにおいては、やっぱり才能の部分が大きすぎるんですよね。小細工ができない。圧倒的な才能の前では、あらゆる小手先のテクニックも通用しない。
 あらゆるアーティストがタイアップやメディア展開で下駄を履かせてもらっているなか、素足の藤井風が颯爽と現れるわけです。そしてこのルックスでこの声と技術、その絶望感たるや。それが多くの人にとっての藤井風のファーストインプレッションだったとおもいます。

 その象徴たるものが、藤井風が Youtube で過去に上げているカバー。一度歌えば、あっという間に自分の世界観に取り込んで自分の歌にしてしまう魔力を持っています。野球で例えれば、あらゆるピッチャーの必殺の変化球をどんどんコピーしていくようなもの。悪夢以外の何者でもありません。自惚れも悪意も無いのに「俺はめちゃうまいぞ!」と一つ一つの動画のインパクトが強すぎる。
 もし、自分より上手く自分の曲をカバーされたら……という恐怖は計り知れないでしょう。多分、椎名林檎とかも当時の女性ボーカルは戦々恐々としたんじゃないかな……。

 唯一勝ち筋があるとすれば作曲センスですね。これだけは、売れたもん勝ちです。「何なん」「もうええわ」の頃の藤井風はまだ「知る人ぞ知る」という感じで「曲がもう一歩なんだよな~」なんて偉そうに思ってましたが、「きらり」は完璧にキャズムを越えましたね。ただ、まだここは戦える舞台なんですよ。他の圧倒的な敗北しか無い部分に比べれば。


いつか、そんなヤツが来る。

 ぼくの音楽の才能はといえば、まあ、頑張れば食っていけるくらいにはなったでしょう、程度です。ピアニストには絶対なれないし、藝大に入れば二秒で打ち砕かれるとは思いますが、まあ細々と作曲してコンペに出したり場末でゲームミュージックのコンポーザーやったりくらいならなんとか、という感じです。
 母はまあ歌が上手いんですが、ぼくは全然なので、カラオケでネタ曲を歌って輝くあたりが関の山です。それでも、ボイトレをちゃんと受けて、レーベルのオーディションなんか受けて、シンガーソングライターなんかでやっていく道もあったでしょう。

 でも、どこか心の片隅で分かっていたのかもしれません。いつか、圧倒的に歌が上手く、ピアノもできて、作曲もできて、顔も良い、そんなヤツが来る
 そうなった時に、音楽の道を選んでいたら、自分はその敗北感と向き合えないだろうな、と。イケメンじゃないし。

そもそも、そんなに頑張れなかった

 そも、自分は努力のできない人間なので、そんな真面目に音楽に取り組むことができなかったんですよね。一日何時間もピアノ練習するのも無理だし、自分の声が好きなわけでもないし、四六時中曲作ってるわけでもない。仮に原石だったとして、磨く布のスピードが遅すぎる

 なぜそれがわかったかというと、自分は小学生の頃から既にゲームを作っていたので、ゲームを作る時ののめり込みと比較して音楽は全然だったんですよね。ゲーム作ってれば音楽も作れるし(神主並感)。
 エンターテイメントの業界では、結局一番を目指すよりバカになれるかどうかが最も重要なので、ぼくにとってゲームはそれで、音楽はそうではなかったのです。

 なので、楽しむための音楽という枠で、高校生時代まではバンドとかやってましたが、大学に入ってからはDTMで作る程度になりました。ただ、ピアノができると BGM 作りは音速でできるので、重宝しています。無駄になることは何もない。

だって、藤井風がいるから

 というわけで、「才能がない」「頑張れない」「イケメンじゃないし絵にならない」「ポテンシャルがない」「歌一本で勝負するのが怖い」みたいな色んなニュアンスをひっくるめて、

「だって、藤井風がいるから」

 という言葉はこれ以上なく自分が音楽の道を志さなかった理由を表してくれるのでした。来たよ、「そんなヤツ」。ぼくは正しかったんだ。


まとめ

  • 藤井風はパない

  • 藤井風と殴り合うのは無理

  • それでも歌一本で戦う人たちはスゴイ


といいつつ、まだ完全に諦めたわけでもない

 まあ、ゲームはずっと作れますので。50歳くらいになって、なんか声がいい感じになったら、どこかで音楽やるのもいいかもしれませんね……。まあ、ただのおやじバンドになるかもしれないけど……。

余談

 高校生の時に一緒にバンド組んだこともあるイケメンボーカルの彼は、アイドラ(I Don't Like Mondays.)というバンドでバリバリ活動中です。BTS にも匹敵する(とぼくは勝手に思ってる)おしゃれなサウンド作るので、是非聞いてみてください。最近ワンピースの OP 歌ってた。

 今日はあとがきないよ!

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