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切ない夜。

仕事の日には毎晩のように、私の帰りはかなり遅いので、それを待っている彼女のことを思うと、本当に申し訳なく思う。

仕事から帰ってきたら、なぜか部屋の中は真っ暗で、明かりをつけて、腕時計を外して、私がほんの少しのあいだ、小さな不安を抱えていたら、彼女が部屋の奥からまぶしそうに出てきて

「ごめん・・・いつのまにか寝てた」

という少しかすれた声。

なぜだか心が… なんとなくその光景が… とても切なく思えてしまって、そう思った自分に対して、ひどく慌ててしまっていた。

真夜中の食事くらい、自分で用意すればいいのだけど、毎日のハード過ぎる日常の中、私にはもう余力はなくて、つい、彼女に甘えてしまう。

いつしかそれが、あたりまえのように感じていた。きっと、彼女も同じように、疲れているはずなのに。

彼女がガスに火をつけながら、ぼんやりとそれを見つめている。まだ、どこか頭のすみに、さっきの夢が残っているのだろう。その夢の続きがせめて、楽しいものであったらいいのに。

「もう、いいから」と私がそう言ったとき

「何のこと?」と彼女が小さく微笑んだとき

少し涙が、こぼれそうになった。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一