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「馬鹿げたアイディア」と思われていたとしても | NIKE本社に行ってきた

新年のご挨拶としてはすっかり遅れてしまいましたが、みなさまあけましておめでとうございます。

2017年10月に、ナイキ創業者フィル・ナイト氏の自伝「SHOE DOG」を読み、あっというまに引きこまれ、ついには今年のお正月にオレゴンのNIKE本社にアポイントをいただきお邪魔してきました。

そこでいろんなことを感じてきたので、2018年の抱負という訳ではないですが、忘れないうちに備忘録を残したいと思います。

写真は、これくらい離れないと「NIKE」の文字が入らない作りの正面ゲートです。オレゴンは雨が多く、毎日がどんより雲。この日は何とか天気ももって、フィル・ナイト氏も今もほぼ毎日訪れるという(本に書いてあった)ナイキ・キャンパス内を案内してもらいました。

フィル・ナイト氏も普通のランナーだった

そもそも若かりし頃のフィル・ナイト氏は、スタンフォードMBA卒ではありますが普通のランナーです。ですので、この本では「あ、この人走っているな」という空気が文章全体からビンビンに伝わってきます。

「SHOE DOG」の出だしは、日本製のスポーツシューズをアメリカの市場で展開するという、本人曰く「馬鹿げたアイディア」を思いつき、ランニング中に走りながらそのアイディアがどんどんクリアになり、いつのまにかペースが上がって、すると考えがさらに大胆でポジティブになって、またペースが上がって、最後には全てがうまくいくような気がしている、という「ランナーあるある」からスタートします。この時点でもう引きこまれていました。

僕も起業前に、走りながら「Runtrip」のことを考えていたら、やっぱりもういてもたってもいられなくて、絶対これを形にしよう!と"ハイ"になり、どんどんペースが上がっていったことを思い出します。

ちなみに彼は、こんな表現でランニング中の肉体の変化を表しています。

体が目を覚まして、頭の中がはっきりしてくる素晴らしい瞬間を味わった。ろっ骨や関節がやっと緩み出し、固体から液体になるように体が溶け始める瞬間だ。

ああ、わかるわかる。個体から液体になる感じって確かにそうです。村上春樹さんくらい「走ってる時の心情の言語化」がうまい気がします。(ちなみにポートランドの本屋さんでは、「SHOE DOG」のすぐそばに村上春樹さんの「走ることについて語るときに僕の語ること」が置いてありました)

本を読めば読むほど、本当に彼は普通のランナーという印象でした。競技者としては頂点を目指せなかったので、ランニングをもっと楽しめるような活動をしている点など、共感できる部分がとても多くありました。

だからこそ僕は、たった1人で日本製のオニツカのシューズを売り歩くことを決意したこの青年が、一体どんな景色を見て育ったのかを現地で見てみたくなったのです。

みんなが走るようになれば、世の中は良くなる

僕は常日頃から「ランニングが人生の幸福度を高める」とか「みんながもっと自由に走れたら、世界は平和になる」とか、走らない人からしたら多分ちょっと宗教っぽいことをずっと言っているんですが(でも本当にそう思うんですよね)、実は若い頃のフィル・ナイト氏も同じような考えだったようです。

みんなが毎日数マイル走れば、世の中はもっと良くなると思っていた。信念だ。信念こそは揺るがない。

彼はこの想いだけで、1962年に戦後の日本にある「オニツカ」に単身で乗り込み、オニツカ役員に「将来アメリカの靴市場は10億ドルになる」と全く根拠のないハッタリをかまして、会社も作ってないのに自分の部屋にある「ブルーリボン」を思い出して「ブルーリボンの代表です」と伝え、米国での代理店契約を決めてしまいます。

とにかくいいシューズでもっとみんなを走れるようにしたい、という想いだけをエネルギーに走り続けている感じです。ナイキのプロダクトやプロモーションなどでは、「ランナー愛」を感じることが多いのですが、今もこのDNAが流れているのではないかと思います。

ナイキ・キャンパスにある日本庭園

さて、この写真はナイキ・キャンパス内にある「日商岩井」の名が彫られた日本庭園です。今や3兆円企業となったナイキですら、過去には何度も窮地に陥っています。本を読んでいても「あ、これはもうダメだ」と思う瞬間が何度もありますが、日本企業の日商岩井が何度もフィル・ナイト氏の危機を救います。NIKEは何十年もたった今でもこの恩を忘れずに、庭園として日商岩井の名前を社内に残していました。

名前といえば、キャンパス内のビルやグラウンドには人の名前がつけられています。ここは「マイケル・ジョーダン・ビルディング」。他にはタイガーやロナウドなど多数の超有名アスリートたちの名前が刻まれています。こうした選手たちをフィル・ナイト氏は「ナイキをブランド以上の存在にしてくれたスーパーアスリート」と本の中で表現しています。

この歴史への感謝と、それを常に超えていくという空気こそが、この場所で世界有数のイノベーションが生まれいてる秘訣なのかもしれません。実際にこの施設の中で、今年の箱根駅伝も大いに沸かせた話題のシューズ「ヴェイパーフライ」や世界的なバッシュ「エアジョーダン」などが生み出されています。

さらにランニングをカルチャーとして広げるために

NIKEはシューズを通じてランニングを誰もが楽しめるカルチャーの1つとして大いに普及させてきました。(ポートランドも本当に走っている人が多い!)

この領域は引き続き素晴らしいイノベーションが起こるんだろうし、ひょっとすると新たなブランドが出てくるかもしれません。既存のメーカーからだってもちろん素晴らしいプロダクトを提供されています。

しかし、僕はランニングをさらに「トレーニング」から「アクティビティ」に変え、現状では苦手意識を持っている人たちの意識も変えるくらい次のステージにいくためには「ロケーション」「コミュニティ」をランナーに提供する必要があると考えています。これは、インターネットやスマートフォン、ウォッチ型デバイスなどのテクノロジーが普及した、今の時代だからできることです。

「ロケーション」と「コミュニティ」と「ギア」をもっと手軽で自由にチョイスすることができるようになれば、きっともっと楽しく走れる人が増えて、間違いなく素晴らしい世の中になると信じています。

フィル・ナイト氏はこのような言葉を残しています。

1962年のあの日の朝、私は自分にこう言い聞かせた。馬鹿げたアイディアだと言いたい連中には、そう言わせておけ・・・走り続けろ。立ち止まるな。目標に到達するまで、止まることなど考えるな。"そこ"がどこにあるのかも考えるな。何が起ころうと立ち止まるな。50年後の今思い返しても、私にとってそれは最良のアドアバイスであり、かけるべき言葉はそれしかなかっただろう。

今は「馬鹿げたアイディア」と思われていたとしても、やっぱり何度考えても、こういう世の中が絶対に来るし、僕はこんな世界が作りたいと思う。

この本と旅で学んだ「信念」と「感謝」を忘れずに、2018年も走り続けたいと思います。


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