0224-2noteサムネ

"Black Lotus / ブラックロータス" 購入の指標

お問い合わせでこのような質問をいただいた。

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Serra様
いつも楽しくコラムを拝見させていただいております。

さて、いちマジックファンとしてBlack Lotusを是非とも手に入れたいと考えているのですが、
版や状態、売っているお店等様々な条件により価格帯が違いすぎるため、
いくらなら買うべきか、どこまでお金を出すべきか、自分の中で判断基準が定まらず、
とてもとても悩んでいます。
何か良い指標があれば教えていただけないでしょうか。

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以前"Black Lotus"の価値などについて書いた記事はこちら。

《Black Lotus / ブラックロータス》というカードのすごいところの1つは、
常に話題を提供してくれるところだ。
何年経ってもMTGプレイヤーを魅了し続けている。

よく聞く言葉の1つで、
迷う理由が値段なら買え、買う理由が値段ならやめておけ
というものがある。

安定した供給とは言い難いコレクションの世界では、
この言葉だけでは語り尽くせないものがある。
MTGの高額カードはまるで美術品のような扱いでありながら、
投資対象でもある不思議な存在だ。

適当な例を書くと、画商が絵を売る時に、
その絵が仮に50億円ほどする品だったとして、
画商は仕入れ値40億円だったとする。

これを
45億円で売るか、
50億円で売るか、
55億円で売るか、
それはその画商次第。

500円のものを400円で仕入れ、
450~550円の間で売るのとでは、
割合は一緒でも差額が違い過ぎるので、
高額な品ほどこういう事に敏感になるのは当然のこと。
買う側も売る側もこの差では全く違う気持ちになるだろう。
これを全て、
「迷う理由が値段なら買え、買う理由が値段ならやめておけ」
で片付けられる人は多くない。

《Black Lotus》ほどの品ともなれば、
こういった美術品と同じ扱いになるのも理解できるし、
質問者の方のように悩む理由も理解出来る。


《Black Lotus》いくらなら買うべき・・・?

画像1

これは言う必要が無いかもしれないけれども、
《Black Lotus》に限らず、
状態次第、版次第という点が必ず影響する。

この点については、
1:とりあえず何でもいいから欲しい《Black Lotus》
2:デッキで使いたい《Black Lotus》
3:眺めるための《Black Lotus》
4:デッキで使う用とコレクション用は別だ!2枚欲しい!
5:いいや!4枚!最低が4枚!
6:冷静に考えて鑑賞用と使う用は別だから8枚だろ。
7:α版にしか興味が無いしα版8枚だな。

という観点で相当に変わる。

これを読んでいる方はどこに該当するだろう。

●1~3に該当する人

問題ありません。
良きMTGライフを。

●4に該当する人

道を踏み外しているかどうか見直す必要があるかもしれません。

●5に該当する人

危険な兆候です。まだ引き返せなく無いラインです。

●6に該当する人

セカンド・オピニオンも匙を投げるレベルです。
ゴーイングマイウェイ。

●7に該当する人

遺書を今すぐ書きましょう。
内容は「全てのカード資産を加藤英宝さんに寄付。」だけでOK。

何?店主はどこだって?
現状なら4。気持ちは6。

という事で、
4~7にいる人は置いておこう。
この人達は基本的に札束を複数用意しないと駄目な人達なので。

基本的には1~3に該当する人がほとんどのはず。

1の人は状態も版も気にしないタイプなので、
これは単純に本物であれば状態は問わないものを買えば良し。

状態が悪くとも記念にPSA鑑定しておくのも良し。
予算としてはそれほど多くなくても買える・・・
と言っても《Black Lotus》の市場価格の最低値が必要なわけで、
決して安い買い物ではない。

2の人で状態を気にするのはオススメしないのだが、
一定層はNMクラスを求める人がいる事もわかる。

けれども、スリーブに入れていようと、
何度も使っていれば、必ず劣化してしまうので、
あまり状態をこだわらないほうが、
自分へのダメージも少なくて済む。

状態の良い《Black Lotus》を買って、
予想もしない事故で傷や折れを作ってしまったら、
自分への精神的ダメージも大きい。

EX以下に割り切れるなら予算は1とほぼ同じ。

NM以上にこだわるなら3の人と同じ。

3の人は状態を求める人、または黒枠を求める人、もしくは両方の人。
・コレクションならUnlimited版であろうとNMが良い!
・コレクションなら黒枠が良い!
・いや、NMで黒枠が良い!
のどれかという事。

これは少々予算多めに用意が必要。
特に黒枠のNMはかなり。

これを前提に考えると、
1の人:《Black Lotus》の市場価格の最低値付近
2の人:1or3の人と同じで価値観次第。
3の人:《Black Lotus》の市場価格の上のほうを見なければならない。

ただ、日々変わっていく相場と、
状態の上と下での価格差が激しい事から、具体的な数字は出しにくい。
「どこまで出すべきか」という事については、
なかなか回答は難しい。

2020年の4月の今、
《Black Lotus》は安くてもだいたい100万円くらいするのだが、
これが1年、2年したら同じ金額だとは言えない。

それは相場の変化の話だけではない。
関税、消費税という、
本当は無関係でありたい税金の変化も考えられる。

β版の状態の良い物となると、
現在500万円ほど必要。

それなりの収入を得ている方の年収に等しい1枚のカード。
なんだろうこの骨董美術品は。

結構信じがたいのだが、
10年前には50万円で買えた。
20年前には10万円で買えた。
10年で10倍。
20年で50倍。
なんだろうこの骨董美術品は。
銀行の利子の率とは比べ物にならない。

いくらなんでもここから先の10年で、
さらに10倍は無いような気もするが。
1枚5000万円のカード・・・なんて時代が来るんだろうか。
もうここまで来たら家と同じ値段。
土地付きで新築一戸建て買える、都心部以外で。

なお、最高レベルの状態では、
α版のPSA10でおおむね現在2000万円で買えるかどうからしい。

そもそも誰が手放すんだという話なので、
この数字には正確さは無いと思ってほしい。
下手すればもっと上。
2000万円、一般的な社会人が何年貯めたら辿り着けるのだろう。
1年で100万貯金しても20年。
しかも20年で《Black Lotus》の相場が変わらない前提。

無茶苦茶だなぁ。

どこかの富豪が、
「お前はカード博物館をリアルで作りたいらしいな。
 ならばこれを飾れ。」
とか言い出して寄付してくれない限り、
手に入らなそう。

現状でこの有様であるとすると、
「どこまで出すべきか」
と言っても、個人の支払い能力の差で明らかに手を出せる領域と、
手を出せない領域がある。

家や土地のようなものを買うのと、
美術品等のコレクターズアイテムを買うのでは大きく違う。

家や土地は生活に根ざしているものだが、
コレクターズアイテムは生活に根ざしているとは言えない。
確実に個人差で決まるところだ。
年収1000万円ある人なら、
頑張れば2000万円の《Black Lotus》を買える。
年収300万円の人ではまず無理だ。

さすがにPSA10クラスを望まなければ、
こんな金額にはならないとはいえ、
最低100万円の出費は一般的に考えて安い出費ではない。

質問者の方のように、
「判断基準が定まらず」
というのもよくわかる。

ただ、金額云々よりも気持ちの問題が大きいのではないかと思う。
そこで質問者の方の
「良い指標があれば教えていただけないでしょうか」
の言葉へは、
・ヴィンテージにデビューする気がある。
・生涯の趣味としてMTGを選ぶ。
・MTGの象徴たる存在は自身の手に1枚は置いておきたい。
・αかβかUnlimitedをコンプリートしたい。
・Christopher Rushさんの絵が大好きだ。
以上からどれか1つ該当したら購入を考えるというのはどうだろう。

簡単にここまでをまとめると、
Q:いくらなら買うべきか?
A:希望する状態次第だけれども、最低が100万円からスタート。
 上は2000万円にもなるが、現実的ではない。
 希望する状態は自分のスタイルがどこにあるかで決まる。

Q:良い指標があれば教えていただけないでしょうか?
A:自分の《Black Lotus》への思い次第。
 上記の5つのうち1つでも当てはまるなら購入を考えてみては。

といった感じ。


どこで買う? その決め手は・・・?

画像2

さて、
あとはどこで買うかという、お店のお話。

いくつかの例を書いてみたので、
購入の参考にしていただければ。

1:問題発生時の対応に不安があるかどうか。
これは、海外ショップを使う場合や、
メルカリやヤフオクなどの個人売買の時の問題。

海外ショップでは言語の壁という問題の他にも、
輸送時の事故、税関の問題などがある。

ややこしい事に巻き込まれたくない場合は、
海外ショップは避けるべき。
個人売買で高額商品を買うのは相当怖い。

特に近年見られる危ない傾向では、
商品画像は本物を掲示し、
発送する時は偽物を送るという手口。

これがトラブルに発展すると非常に厄介だ。
出品者は
「その品は私が送ったものだと証明出来るのか?」
「ノークレーム、ノーリターンと言ったはずだ。」
「私は本物だと思う。」
等の反応をしてくるだけではない。

仮に偽物だったと証明させ、相手から、
「すまない、私も偽物だとわからなかった。商品を交換する。」
と言われて、希望の品が手に入ったとしても
ストレスと時間の面で損をする事になる。
特に、
「もうお金も戻ってこないし、品も手に入らないかも。」
という不安をかかえながらトラブルに対処する事は、
万単位の金額に相当するマイナスだ。

言語の壁、個人売買のトラブル、税関問題、輸送事故、
これらは国内ショップとの取引ではほぼ起きない。
ここをどうするかも購入者次第。

2:価格帯について。
高額商品というものは、同じものでも結構値段の差があったりする。
とはいえ相場というものがあるので、
度を越した高値も無ければ、度を越した安値も無いというのが一般的だ。

ここでの問題は極端な一例を出してみればわかりやすい。
写真で見る限りではほぼ同じ状態の《Black Lotus》が2つあるとする。

1つは顔も素性も知らない中国人が90万円で貴方に売ろうとしている。
もう1つは顔と素性を知る日本人が120万円で貴方に売ろうとしている。

貴方はどちらを買うか?
信用にお金を払って日本人から買うか、
それとも安さ重視で中国人から買うか。

1の話題にも多少近いけれども、
信用にどれだけのお金払うかという事。
価格帯については相場が大きく変わらない以上、
異様に安い場合には怪しいと思わなければならない。
怪しくない範囲の差であれば気にしなくて良い。

3:オーナーや会社の姿勢。
これは現実にあった例を出したい。

店主は行きたくない牛丼屋がある。
それは吉野家だ。
理由と経緯を軽く説明したい。

キン肉マンは作中で「吉野家」にちなんだ「吉野屋」を登場させている。
(最初はなか卯として描いていたが途中から変更したという。)

その後アニメ化の際に「吉野家」にしてくれと吉野家から頼まれたという。

この頃(1980年代)の吉野家はすでに経営が行き詰まっていて、
会社更生法の適用を申請し倒産していた。

しかし、このキン肉マンの大ヒットの影響から、
2000年までに吉野家は経営を元に戻す。

作者のゆでたまごさんは吉野家から、
「店に持っていけば永久にただで牛丼が食べられるという丼」
を贈られる。

この丼をゆでたまごさんは実際には1度も使った事が無かった。
2003年10月、フジテレビの番組「トリビアの泉」で、
「この丼を持って吉野家に行くと、本当に牛丼を無料で食べられるか?」 
という番組が企画された。

番組中でゆでたまごさんは吉野家に丼を持って店内に入るが、
牛丼を食べさせてもらえず店を出る。


この時、作者のゆでたまごさんは、
「トリビアの時も店員はゆでたまごが来るのを知っていて、
周囲の客もみんな吉野家の社員でした。
つまりみんなして私がタダで食べられないところを見ていたという事です。
悔しかったです。恩を仇で返されたとはこのことです。」
と述べている。

その後、2008年、キン肉マン29周年という年をむかえた。
この時にキン肉マンを連載していたジャンプ、つまり集英社から吉野家に、
「恩返しのチャンスですよ。」
と連絡をしたのだが、吉野家はこれを断る。

ところが、
すき家やなか卯を経営する株式会社ゼンショーホールディングスは、
「たとえ、描かれていたものが吉野家であろうとも、
それが元で日本に牛丼チェーンというものが浸透した。
そしてそれを支えたのはキン肉マンだ。
是非とも29周年をお祝いしたい。」
として、キン肉マン29周年キャンペーンをおこなった。

画像3

当時のキャンペーン告知


店主はこのゼンショーホールディングスの姿勢に感動した。

吉野家はキン肉マンのスポンサーなどをした事もなく、
無料で広告宣伝をしてもらったにも関わらず、
作者とその作品にこの仕打ちである。

企業やオーナーの姿勢として、
長くお世話になった存在を邪険に扱うという事はしてはいけない。
店主も一企業の起業者で、数々の失敗をしてきている。

Cardshop Serraなど信用しないと思うお客様もいる。
それは自身の力不足によって招いてしまった事で、
多くの反省点であり、今後の改善点だ。
全ての方に満足していただける会社にする事はとても難しい。
けれども、こういう事だけはしたくないと思っている。

このお話を聞いて、
「吉野家のようにはなりたくない。
ゼンショーのような姿勢でありたい。
ゼンショーの考え方は素晴らしい。」
と感じた。

吉野家は非常にもったいない事をしたと思っている。
もしキン肉マン29周年を祝っていたら、
もしゆでたまごさんに贈った丼で無料で牛丼を食べさせてあげていたら、
日本中の人達の吉野家を見る目は変わっていたのではないだろうか。

牛丼であろうと、宝石であろうと、《Black Lotus》であろうと、
お客様は自分のお金を払ってそのサービスを購入するのだから、
「なんか好きになれない。」
と思う所で買う事は、後悔に繋がりかねない。
「なんか好きになれる。」
と思わせるサービスは大切で、
吉野家はそれに失敗し、ゼンショーはそれを手に入れた。

自分がこんな理由で吉野家を選ばないように、
どこかの誰かがCardshop Serraを選ばない事がある。
それを肝に銘じて、会社を作っていきたいと思った出来事だ。

以上、3点。
1つ目と2つ目は単純。
「安物買いの銭失い」をするなという事。
3つ目は品を購入する時にその会社やオーナーの姿勢も大切という事。

《Black Lotus》を主軸にお話を書いてきたけれども、
このお話は高額な品を買う際には結構共通するお話だ。
もし今後購入を考えている高額な品がある時に参考になれば嬉しい。
そして出来る事なら《Black Lotus》を買う時は、
仮に在庫が無くても入手の可能性も含めてCardshop Serraへご相談を。

ではまた。


【Magic:the Gathering専門店 Cardshop Serra】

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