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最高の愛の確認方法を知っているか〜マリッジストーリー〜

「実は離婚したんだよね」

これに対する適切なアンサーを教えて欲しい。

もちろん様々な理由から離婚したくなかったけど、そうせざるを得ない状況になった時は事前に聞いていることが多く、回答も困らない。
しかしSNSや普段の会話で仲が良いイメージがあった既婚者から突然、「実は離婚したんだよね」と言われたらどうしたらいいのか。
右脳左脳、全ての脳にインプットされている語彙力をフルに使っても、「ひとまず飲もうぜ」しか言えないと思う。

それは自分の語彙力が乏しすぎることが問題なのだが、本当に回答がわからない。というのも、お互いが出会い結婚をし、そこから離婚を決断するまでに至るその人の並々ならぬ想いや、お互いしか知らない事情を考えてしまうと、自分など到底口出ししてはいけないと考えてしまうからだ。

でもわざわざ話してくれたのに、「うんうん、そうなんやね」といって相槌を打つのも話を聞いてないと思われて悪いし、「え?何で?何で?」と聞くのもデリカシーがなくて相手の気分を害してしまうのではと考えてしまう。
うーん、一体何が正解なんだろう。

だから自分の中で「離婚」という言葉は極力避けたいイメージがあったが、映画「マリッジス・ストーリー」 はその考えを180度ひっくり返した。

作品名:マリッジ・ストーリー(製作:2019年 アメリカ Netflixオリジナル作品)
監督:ノア・バームバック
出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー他
あらすじ:
離婚について話し合っていた二人が実際に離婚するまでの姿を描いた映画。
ニコール(スカーレット・ヨハンセン)とチャーリー(アダム・ドライバー)は結婚し子どもにも恵まれていたが、些細なすれ違いが溜まり離婚という決断をする。最初は話し合いで円満に離婚出来ることを望んでいたがニコールが知人から紹介された弁護士を立てたことから状況は一変、チャーリーも弁護士を立ててお互い争う離婚劇に発展してしまう。
出展:Netflix「マリッジ・ストーリー 」公式サイト

※今回はネタバレありなので、何も知りたくない人は飛ばしてくださいね


離婚はゼロではなく、愛を続けていくもの

最初に断っておくがこの映画は「離婚」のみをテーマにした映画である。
「やっぱり君が好きだ!もう一度やり直そう!」「うん!あなたが大好き!」
みたいな甘いシーンは登場しないので悪しからず。
そういうとドロドロした重い映画と思われるかもしれないが、そんなことは全くない、恋愛映画となっている。

映画では最初、離婚を進めていく中で弁護士が入ったことにより、相手のことを考える余裕がなくなり、お金や子どもの奪い合いに発展していく。そういうことを望んでいなかった二人だが、それは次第に役を演じ相手を陥れようとして勝利を勝ち取る、「離婚劇」に巻き込まれていくようである。

しかしそのような状況になっても二人だけでもう一度話し合うのだが、それは話し合いという可愛いものではなく、思わず固唾を呑んで見守ってしまう凄まじい感情を爆発させた喧嘩になるのだ。
しかしこれは言葉とは裏腹に「お互いを深く愛していた」ことを極限までぶつけ合う、愛と憎しみは紙一重という言葉に近い気持ちを感じるではないか。

また離婚で話し合っている最中に見せるお互いの相手に対する優しさ、離婚が決定した後にふとしたことで見つけたニコールのチャーリーに対する想いを書いた手紙の内容など、お互いを尊重し、愛し合っていることが非常に良く描かれている。

だからこそこの映画は、離婚は終わりでなく、二人の愛を確認しそこから一緒に進んでいく必要性を説いた最高の恋愛映画なのだ。

もしかしたらテーマ的にカップルで見ることを敬遠するかもしれないが、是非二人で観てお互いが思っていることをこの機会に語って欲しい。

しかし、Netflixは去年のROMA(ローマ)といい、マリッジ・ストーリー も今年のアカデミー賞にノミネートされている。スカーレット・ヨハンセンとアダム・ドライバーもこの作品で主演女優・男優賞にノミネートと、本格的にNetflixが圧巻する時代は遠くないのかもしれない。

愛が無くなるとはなんだろう。

男性と女性は付き合っていく中で、何気ない普段の会話や遊んだり食事をしたり、またSEXをする等一緒に過ごす時間で愛を確認している。

しかし別れの時になると冷めてしまい、もうこの先相手に対してそのような感情はなくなると思う人もいるかもしれない。僕も何回か女性とお付き合いしていく中で、どちらかというとその考えを持っていた方だ。

しかし、それは正確には無いものにしようとしていたのだと思う。

付き合っている時はどうして隣にいて当たり前の存在だったのか。
それはその人を愛し、隣にいることの大切を理解していたからでは無いだろうか。
一緒にいた時間、愛を突然忘れようとするのは無理なことだ。
もちろんそれぞれの状況にもよるが、その思いを忘れることなく、お互いが思いを持ったままこの先も良い関係で続けていくことが、離婚の本当の意義だと教えてくれた映画だった。

だからもし「実は離婚したんだよね」と言われたらこう返すつもりだ。

「これからがお互いのスタートだね」

と。

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