エーちゃん
憲法の論文試験の考え方
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憲法の論文試験の考え方

エーちゃん

はじめに。

司法試験、予備試験の受験を予定されている皆様、はじめまして!

2012年(平成24年)新司法試験合格者のエーちゃんといいます。

このnoteでは、司法試験の論文問題(旧司法試験を含む)を題材に、その解き方のプロセスを無料でお伝えしていこうと思っています。

僕は、大学3年から司法試験(当時は旧司法試験でした)の勉強を始めて、今では法律の勉強が楽しくて仕方ありません(^_^)

「好きこそものの上手なれ」

やはり、司法試験もできるだけ「楽しく」勉強した方が合格へ近づくのではないかと僕は思っています。

第2 具体的な憲法の論文問題の解法(旧司法試験の問題を使って)

1 まず、これから旧司法試験昭和53年の憲法第1問の改題を使って、憲法の論文問題の解き方を具体的に紹介していこうと思います。

2 以下、旧司法試験昭和53年の改題の設問を載せますので、まずは事案をざっくりと読んでみてください。

(旧司法試験昭和53年論文式試験憲法第1問(改題)

A県では,自動販売機による有害図書類の販売を規制するため,次の案による条例の制定を検討している。
「第5条 自動販売機には,青少年に対し性的感情を著しく刺激しまたは残虐性をはなはだしく助長し,青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると認めて知事が指定した文書,図画またはフィルムその他の映像若しくは音声が記録されている物を収納しまたは陳列してはならない。
2 知事は,前項の規定に違反する業者に対し,必要な指示または勧告をすることができ,これに従わないときは,撤去その他の必要な措置を命ずることができる。この命令に違反した業者は,3万円以下の罰金に処せられる。」

〔設問〕
あなたは,A県から依頼を受けて,法律家として,この条例案が合憲か違憲かというについて,意見を述べることになった。
その際,A県からは,参考とすべき判例があれば,それを踏まえて論じるように,そして,判例の立場に問題があると考える場合には,そのことについても論じるように求められている。また, 当然ながら,この条例案のどの部分が,いかなる憲法上の権利との関係で問題になり得るのかを 明確にする必要があるし,自己の見解と異なる立場に対して反論する必要があると考える場合は, それについても論じる必要がある。 以上のことを前提として,あなた自身の意見を述べなさい。

3 いかがでしたでしょうか?

ちなみに、この問題は昭和53年の旧司法試験憲法の問題を直近2年(令和元年、平成30年)の新司法試験の論文の出題形式に合わせたものです。

旧司法試験時代は、裁判官的な立場から自分の意見を述べれば良かったのに対し、直近の新司法試験の問題は、反論を踏まえて複数の視点から考えさせたり、判例を元に考えさせる問題なので、だいたい書くべき内容が浮かんだ方も、どう書いたら良いか迷うと思います。

ただ、憲法も、当然ですが、憲法21条1項(表現の自由)などの条文を扱う点では、他の法律科目と変わらないため、他の科目と共通の思考方法で、順序立てて考えてやると、解決の糸口は見つかると思っています。

そこで、以下では、まず、憲法を含む7科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法)に共通する思考方法をお伝えして、そこから、憲法の論文問題の具体的な解き方に移っていこうと思います。

4 法律科目(7科目)に共通の思考方法

(1)前述した通り、法律科目には共通の思考方法があります。

 ①当事者の主張②法律構成の検討(条文など)→③条文の法律要件の検討(答案に全部書くかは別です)→④条文の要件の意味の確定(問題文の事実から法律要件(条文)のうち問題となる要件の意味を判例や通説などを参考に解釈する(規範定立))⑤④で立てた規範に問題文の事実があてはまるかどうかを検討する(事実→評価→あてはめ)→⑥法律効果(条文に定められた効果)が発生するかしないかを検討する※法律要件を一つでも満たさないと法律効果は発生しません)→⑦当事者の主張(ここでは②で検討した法的な主張)が認められるかどうかを検討する。

 基本的には、この①から⑦までの思考プロセスを辿ることとなります。(ただ、⑥法律効果自体に争いが出る場合もあります)

 今回の設問について、この思考方法で見てみますと、まず、①当事者の主張についてですが、A県条例5条が制定されるとした場合、具体的にイメージして、「誰が、どのような不利益を被るか?」といった視点から、考えてみます。

 まず、A県条例5条1項で業者は「青少年に対し性的感情を著しく刺激しまたは残虐性をはなはだしく助長し,青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると認めて知事が指定した文書」などを自動販売機に収納してはならない(もし、収納すると同条の2項で最終的には罰金刑に処されてしまう)とされています。

 率直に考えると、この条例ができると困るのは、自動販売機業者さんですよね。

 もし、このような文書などを自動販売機で販売できないとすると、業者さんの売上が減ってしまいますよね。

 これは、自動販売機業者さんの営業活動が条例5条によって侵害されているといえ、条例5条は業者さんの営業の自由を侵害しているのではないか、ということがまず考えられます。

 次に、具体的にA県条例ができることで、他に誰がどのような不利益を被ると思いますか?

 少し、考えてみてくださいね。

まず、考えられるのは、18歳未満の青少年(高校生、中学生、小学生など)が、「有害図書類」を自動販売機で買えなくなり、ひいては、それを読めなくなるということですね。

また、18歳以上の人(便宜上成人といいます)も自動販売機で「有害図書類」が購入できなくなり、その本などを読む機会が減ってしまうことが考えられます。

(なぜ、読む機会が減るにとどまるかといいますと、例えば、本屋などでは成人は「有害図書類」に相当する本は購入しようと思えばできるからです。あとは、ネットで購入することも考えられますね。青少年に関しては、そもそも本屋で購入することは、法律上の禁止プラス心理的抵抗(要は店員さんの前で購入することは恥ずかしいということ)があり、ほぼ本屋などでは買えないことになると思います。(もちろん度胸がある子は別ですが(^_^;))

次に、②法律構成を考えてみます。

(ちなみに、今回は、紙面の関係上明確性の原則は省略して、その他の点に絞って検討していきます。)

まず、条例案5条によって、自動販売機業者さんの営業の自由が侵害されているという点については、「職業選択の自由」を定めた憲法22条1項に反するのではないか、という法律構成が考えられます。

次に、同じく、5条によって、青少年が有害図書類を読めないという不利益すなわち、青少年の知る自由の侵害であり、「表現の自由」を定めた憲法21条1項に反するのではないか、という法律構成も考えられます。

これは、成人にもあてはまり、5条は成人の知る自由を侵害し、憲法21条1項に反するのではないか、という法律構成も考えられます。

(ここでは便宜上「法律構成」と書いていますが、答案上は「問題点」などのように、書いた方がよいです。)

では、次に、それぞれの③法律要件を満たすかを検討していきましょう!

まず、前提として、ここでは、三段階審査という考え方に基づいて法律要件を考えていきます。

ご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、三段階審査とは、ざっくりと要約しますと、主に自由権(憲法14条1項、25条などは除きます。)について、それを制約する法律が憲法に違反するか否かを、

㋐保護範囲、㋑制限、㋒制限の正当化、という三つのプロセスに分けて、順に検討していこう、という思考方式です。

(ちなみに、僕は「憲法上の権利の作法」という小山剛先生の本を主に参考にしています。)

今回は、問題を検討しながら、三段階審査について理解してもらおうと思いますので、上記㋐、㋑、㋒においてどのような検討をするのかは、以下読み進みながら、何となくでいいですので、つかんでみてください。

(正確に三段階審査を学びたい方は、上記の小山剛先生著「憲法上の権利の作法」(第3版)の10p~92pを読んでみてください。)

そこで、③法律要件を上記の㋐から㋑に基づいて、以下検討していきたいと思います。

まず、憲法22条1項違反の点について、㋐保護範囲というものを検討していきます。

ここでは、自動販売機業者さんの営業の自由が、憲法22条1項の「職業選択の自由」によって保障されているか、という点を検討することになります。

なぜなら、憲法22条1項には「職業選択の自由」とだけしか文言上は書いておらず、そこに営業の自由が保障されるとは明らかにされていないからです。

そこで、次は、④条文の要件の意味の確定(規範定立)に移ることになります。

憲法をある程度勉強された方はご存じかもしれませんが、営業の自由が憲法22条1項によって保障されるという結論については、判例も学説上も争いはありません。

ここでは、最近の司法試験(令和元年、平成30年)の傾向から、上記の点について、判例に基づいて、検討していきたいと思います。
(続く)



 



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エーちゃん