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第20回絵本まるごと研究会

1.はじめに

 第20回絵本専門士によるまるごと研究会を担当させていただきました、
第5期絵本専門士の増田穂里です。私は、東京都荒川区の小学校で学校司書をしています。そこで、「ようこそ学校図書館へ ―学校図書館と絵本―」をテーマに、学校図書館で絵本がどのように使われているかを、ワークショップを交えお話しをさせていただきました。その様子をレポートにまとめさせていただきます。

2.学校図書館のこと

 みなさんが学校図書館と聞いてもつイメージは、どんなものでしょうか。
 よく、「暗い。」「じめじめかび臭い。」「埃っぽい。」と言われますが、みなさんはいかがですか。

 そもそも、「図書室」と「図書館」の違いは何でしょうか。『広辞苑』を引いてみると、「図書室」 図書をおさめてある室。「図書館」 図書・記録その他の資料を収集・整理・保管し、必要とする人の利用に供する施設。とあります。このことから、収集・整理のための人員がいるかいないかで、その違いが区別されていることが分かります。さらに、「学校図書館」 学校図書館法に基づき、児童・生徒の読書指導及び教職員の調査・研究などのために、図書・視聴覚資料等を収集・整理・保管する学校内の施設とあります。

 ここに示されている学校図書館法とは、1953年8月8日に公布された法律です。この第3条に、「学校には、学校図書館を設けなければならない。」とあります。このように、学校図書館は、法律で定められた施設です。言い換えれば、学校図書館がなければ学校とは呼べないということです。

 では、なぜあのイメージはぬぐえないものなのでしょうか。
 それは、法律は制定したものの、学校図書館を運営し活用できる人材の育成が進まなかったからです。それは、日本は昔から座学中心の教育で、探究的な学習を重視してこなかったことが主な原因に挙げられます。他にも様々な要因がありますが、学校も教員も図書館で授業をするという考えをもたないまま50年以上放置状態が続きました。

 しかし、平成に入り流れが大きく変わります。
 全国学校図書館協議会が「学校図書館憲章」を採択し、学校図書館の役割として、「読書センター」「学習センター」「情報センター」と位置づけました。これを受け、肥田先生が中心となり国に働きかけ、平成5年に、「学校図書館整備5か年計画」を当時の文部省が発令しました。現在は、5次「学校図書館等整備5か年計画」を行っています。実は、この「等」が大変重要です。それまでの資料を買えば整備は進むという考えが、図書館の活用には、環境整備の専門家が必要だと国が気付き、学校司書の配置を促します。これにより、本置き場の「図書室」から司書が居る「学校図書館」へと、全国でその整備が進んでいきます。

 荒川区ではこれに先駆け、平成21年度から区内の全小中学校に、1校1名常勤の学校司書が配置されました。学校司書は、学校図書館長である校長の指示の下、司書教諭と連携し、学校図書館を活用して子どもたちの指導に当たる先生方と協働しています。その際、指針となるものが、「学校教育計画」「学校図書館を活用した読書活動・探究活動の年間計画」「学校図書館司書活動計画」「月間図書館活用計画書」です。これらを基に、学校司書は教員と打ち合わせを重ね、児童の読書活動と学習の支援を行います。

3.学校図書館と絵本

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 それでは、学校図書館で絵本はどこで使われているのでしょうか。読書や読み聞かせは皆さんも思いつくところだと思いますが、実は、全教科で絵本の取り入れは可能です。

 本校の国語では、光村図書を使用しています。6学年10冊の教科書の中で、写真付きで絵本は200冊(物語・昔話138冊 科学絵本62冊)が掲載されています。この絵本は、単元ごとに読み聞かせやブックトークで紹介し、さらに広げ、並行読書や調べ学習のワークで活用しています。また、道徳でも、各テーマに合わせた絵本の活用は欠かせません。

区では、すべての教科で学校図書館を活用するという目標を掲げています。各クラス週に1時間学校図書館を活用した時間が設け優先的に図書館を使います。また、利用予定がなければいつでも利用可能です。国語や総合以外、算数や図工、音楽まで図書館を利用し、各教科各単元の導入に合わせた絵本を活用しています。学校図書館活用絵本例につきましては、別紙ブックリストをご覧ください。

4. 読書を深める活動 ワークショップ

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学校図書館では、読書を深める活動も日々取り組んでいます。
 絵本を読み聞かせした後に、塗り絵を活用した感想画やテーマに合わせたアイテムを作る壁面制作なども行います。また、読み聞かせを行ったのち、その絵本の冒頭と巻末だけをそのままに、児童それぞれが間を結ぶ物語を創造ることも行います。これらの活動によって、深く絵本を味わい豊かな心を育みます。また、繰り返しの言葉のある絵本の活用や物語の登場人物になりきって絵本に参加する体験、リズムのある読み方で本の世界に引き込むほかに、絵本に音をつける、お話のいい間違いを探す、お話の順番を並び替える、お話に出てきたかなど、いろいろなアプローチで絵本の世界を楽しむ工夫(作戦)である「アニマシオン」も取り入れています。そこで、今回は、いわむらかずお作『14ひきのあさごはん』(童心社)を使い、同じ時間に絵を見る活動を行いました。

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『14ひきのあさごはん』(偕成社 1983)
いわむらかずお

5.まとめ

 絵本は素敵なことを模擬体験させてくれる素敵なアイテムです。短い時間でも、じっと絵を見つめることで、たくさんの発見があり、読み込めば読み込むほど、五感が研ぎ澄まされます。絵から暖かさや寒さ、水の音やその冷たさ、火のぬくもり、パンやスープのおいしいにおい、生き物の声、頬を撫でる風など感じてきませんか。その体験をたくさんの子どもたちに味合わせてあげたいと思っています。そしてそれが、子どもたちの知識を増やし想像が深く広がっていくきっかけになるのではないかと思います。子どもたちの豊かな心と生きる力を育むために、学校図書館はたくさんの絵本も活用して今日も支援をしています。そして、就学前に、子どもたちに携わってくださる保育園や幼稚園の先生、地域や学校に読み聞かせに来てくださるボランティアの皆様と学校図書館はつながっています。皆様が読んでくださる1冊1冊が子どもたちの心を温め、潤いを与えてくれています。これからもぜひご一緒に、子どもたちの心の栄養貯金をふやすしていただければ幸いです。

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絵本専門士による絵本まるごと研究会は、絵本・応援プロジェクトに参加しています。

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