エヒラ ナナエ

日記を書いた。 わたしのために、わたしたちのために。 instagram @ehi…

エヒラ ナナエ

日記を書いた。 わたしのために、わたしたちのために。 instagram @ehirananae Twitter @comnana

マガジン

  • クリームソーダ日記 「緑色の彼女をさがして」

    クリームソーダと、それを飲んだ日の記録

最近の記事

個展「ME TO ME 私たちが、日記を書く理由。」に寄せて

そもそも、 私はなぜ日記を書くようになったのか、ということ。 正しくは、書いた日記をなぜ公開したのか、ということについてかもしれません。 二年前の夏からどうも気持ちのやり場がなく、去年の春、ふいに「クリームソーダ日記」を書き始めました。 クリームソーダや喫茶店レビューではなく、クリームソーダを飲んだ日の、私の日記として。 それから書き溜めた日記は膨れ上がり、今年の春に日記集「SOMEDAY」として一冊の本が完成します。 全200ページ弱。 去年の

    • 冊子「SOMEDAY」についてのこと

      2015年夏の記録から、 2016年7月までに書き下ろした日々をまとめた冊子「SOMEDAY」vol.1が完成しました。 SOMEDAYについてのこと 小学生の頃くらいから、眠る前に文字を書いてから眠るのが癖になった。 誰にも読まれない、自分ですら読み返さないような日記。 東京で一人暮らしを始めてからは、枕の横にはいつもノートとペンがあった。 一日の終わりと始まりにそのノートを開く。個人的な気持ち、一日の予定、日々を振り返ること、いつからか叶えたい願いも付け加え

      • 緑色の彼女をさがして vol.38

        商店街の一番外れ、二階の窓際のカウンターでナポリタンを食べた。 夕方5時すぎの商店街には、買い物帰りの人達が過ぎていくのが見える。 店内には、私と、中央のテーブル席に男女四人のバンド仲間みたいな人達が座っていた。 朝から何も食べていなかったから、 商店街を過ぎる人達を眺めながら無心でナポリタンを食べる。 何かと忙しく毎日が過ぎていって、楽しかったり、悲しかったり、虚しかったり、そういう感情も平坦になって、この前までひどく落ち込んでいた気持ちも少しだけ薄

        • 緑色の彼女をさがして vol.37

          円形のグラスに、濃いブルー。 夕方、駅前を見下ろす喫茶店に一人。 店内は心地よい暖かさで、クリームソーダがちょうど良かった。 この日の朝は、 なかなか起きれなかった。 雨の音がしていて、 体はとてもだるいまま、 しばらくベッドの上で天井を見た。 あの時に、 あの言葉を耳にしたとき、泣かなかった自分を褒めてあげたいと心から思いながら、しばらく動けなかった。 ひとつ、 終わってしまった気持ちがあった。 友達は、また新しく始まることだってあると

        個展「ME TO ME 私たちが、日記を書く理由。」に寄せて

        マガジン

        • クリームソーダ日記 「緑色の彼女をさがして」
          38本

        記事

          緑色の彼女をさがして vol.36

          春みたいだった。 冬なんてことを忘れるくらい暖かくて、私たちはコートを脱いで歩いた。 日曜日、 北千住の喫茶店サンローゼで待ち合わせ。広い店内の、窓際の端、背の低い白いソファー。 一人、遅れて来るという友達の到着を待たずに、私たちはナポリタンとオムライスを注文した。 友達のナポリタンが運ばれてきてからしばらくして、遅れていた友達も席に着き、私のオムライスも到着。 薄い卵につつまれたハムとマッシュルームが入ったケチャップライス。たっぷりと乗

          緑色の彼女をさがして vol.36

          緑色の彼女をさがして vol.35

          二人は笑っていた。 私がトイレから戻ると、テーブルに運ばれたクリームソーダを見ながら友達が笑っている。 「すごい、こぼしたよね。」 二人はテーブルにこぼれたソーダを見て笑っていた。私がいない間にクリームソーダが運ばれて、店員さんは、こぼしたことには何も触れずに去っていったらしい。 私も一緒に笑いながら、白くて細いストローをグラスに入れた。とたんに勢いよく緑色の泡が沸き上がり、グラスの淵から流れ落ちていく。それを見て、私たちはまた笑うのだった。

          緑色の彼女をさがして vol.35

          緑色の彼女をさがして vol.34

          ビートルズの「ヘルプ・ミー」がかかっていた。 ショッピングセンター特有の、オルガンみたいな音をした軽快なリズムのやつ。「ヘルプ・ミー」のサビから流れ出して、時折、店内のアナウンスを挟んで、またサビが流れる。 私が小さい時からずっと変わらない音だった。 12月31日のショッピングセンター。 いつもより混み合っている。母と私は食べ損ねた昼食を食べに、店内の一角にある喫茶店に入った。 時間が時間だけに、喫茶店にはワッフルとか、パンケーキを食べている人がほとんど

          緑色の彼女をさがして vol.34

          緑色の彼女をさがして vol.33

          夕方、 友達との待ち合わせに10分遅刻した。走って改札を出たけど、そこに友達はいなかった。 携帯には「今から電車に乗る」という友達からのメール。人を待つのはむしろ好きだから、むしろちょうど良かった。 駅の中は少し寒くて、駅前のコンビニ。 同い年のあの人が撮った写真が雑誌の表紙を飾っている。別に知り合いではないけれど、知り合いの知り合いくらいの。 学生の頃「天才だよね」と讃えていたあの人は、あれよあれよというまに売れっ子になった。そういえばさっき、再来週

          緑色の彼女をさがして vol.33

          緑色の彼女をさがして vol.32

          あのクリームソーダが飲みたくて、 駅前に行った。 日が暮れて、小雨が降っている。 交差点に落ちた枯葉は湿っていて、踏んだら鈍い音がした。その音が懐かしくて、子供の頃、落ち葉の中を歩いた感覚が蘇る。とりわけ目立つような記憶ではない、あの頃の日常を思い出した。 駅前の本屋のビルの二階、ガラス窓から見える店内は薄暗く、看板には「定休日」の貼り紙。 そこで、私の予定は呆気なく無くなってしまった。 どうしてもこの喫茶店に入りたかった。 窓際の少し冷えるあの席で

          緑色の彼女をさがして vol.32

          緑色の彼女をさがして vol.31

          駅の改札口で友達と待ち合わせをした。 夕方の駅前は混んでいて、改札口で誰かを待つ人達は、みんな目が泳いでいて面白いなぁと思う。 無事に友達を見つけて、 何と無くカレーを食べに行った。 カレーを食べながら「急にご飯行こうって連絡きたから何かあったの??」と言われて「何もない!なんとなく誰かに会いたくなって!」と答えた。 何となく誰かとご飯が食べたくなって、友達に数日前に連絡をしたところだった。 友達は高校の同級生で、新潟から上京してきた友達との会話はホッと

          緑色の彼女をさがして vol.31

          緑色の彼女をさがして vol.30

          9月から一ヶ月に渡り展示させてもらっていた「THE END OF SUMMER」が終わった日、本当に私の夏が終わった気がした。 その日は、夕方から横浜のライブイベントに似顔絵屋として参加させてもらっていて、イベントが終わってから電車に飛び乗って、展示させてもらっているカフェに着いたのは23時を過ぎた頃だった。 カフェのお二人が最後のクリームソーダをご馳走してくれて、最後の緑色の彼女を飲みながら、壁に貼った夏の記録を眺めた。 夏の全部が、とても遠い思い出のよう

          緑色の彼女をさがして vol.30

          緑色の彼女をさがして vol.29

          ソックスがいた。 ソックスが生きていた。 あの青葉荘の、 道路を挟んで二軒先のボイラーの上に、黒と白の、あのソックスがいた。 仕事が終わった後に、展示しているカフェに顔を出して、展示を見に来てくれた Cさん に会った。Cさんには、春先にお世話になって、そのとき打ち合わせがてらクリームソーダを飲んだりもした。 久しぶりにお会いしたCさんから、黄色い花と、Cさんの作った詩集をいただいた。お花をくれるなんて、素敵なんだろうと思う。 会話をしていたら、 カフェでコ

          緑色の彼女をさがして vol.29

          緑色の彼女をさがして vol.28

          新潟から、 東京行き最終の新幹線に乗った。 肌寒くて、雨も冷たかった。 本当は 一つ前の新幹線に乗る予定だったのに、お母さんの夕食が名残惜しくて、最終の新幹線になってしまった。 2日前の金曜日の夜。 仕事が終わってから新潟に帰った。駅を出ると、母と、運転席に座っている弟がいて、弟の運転でそのまま夕食を食べに行った。 母と父が 結婚する前によく行っていた店。 その店で3人でステーキを食べた。弟だけ高い肉を注文していて、少し生意気だなぁと思う。

          緑色の彼女をさがして vol.28

          緑色の彼女をさがして vol.27

          ソックスがいなくなった。 古いアパート「青葉荘」の玄関に、 ソックスはもういない。 いつも青葉荘の玄関か、道路を挟んで二件先のボイラーか、塀の上に座っていて、私の姿を見つけると「ニャーニャー」と鳴きながらこっちを見る。姿が見えなくても、その声ですぐにソックスの居場所が分かった。 二週間くらい前の夕方。 ボイラーの上にいたソックスに会った。私と目が合うと「ニャー」と鳴きながらボイラーから飛び降りて、いつもと同じように公園まで一緒に歩いた。そしてまた、青葉荘の玄関に

          緑色の彼女をさがして vol.27

          ナイーブと音楽 vol.5

          Homecomings「HURTS」 夕方、 疲れた顔のまま電車に乗ってCDを買いに行った。 吉祥寺のココナッツディスク。 ドアを開けて、ホームカミングスの新譜を手にして、他にも欲しいものがあったけれど我慢して、ホームカミングスだけを買った。 ココナッツディスクを出て、 またすぐに電車に乗る。 (この数分後にHomecomingsが来店したことを後で知って、少し落胆した) 電車を降りて、 立ち寄ったスーパーの青果売り場は桃の匂いがした。高くて買えな

          ナイーブと音楽 vol.5

          緑色の彼女をさがして vol.26

          7月に入ってから、 初めて晴れた日だった。 私は書き上げたZINEの原本をかかえて、印刷機を借りに向かう。 印刷機に入れる小銭がなくて、 仕方なくコンビニでエクレアを買って小銭を得た。エクレアは道路の端でひっそりと食べた。 クリームがやけに冷たかった。 ZINEは思ったより早く刷り終わり、 夜8時のビアガーデンの約束まで、時間を持て余す。 「クリームソーダをひとつ。」 新宿の喫茶店「らんぶる」 地下に広がる洋館みたいな空間と赤い椅子。ホーンテッドマンション

          緑色の彼女をさがして vol.26