【松山市出身初】来秋・真打昇進!噺家・入船亭遊京
こんにちは!note更新担当のたぬ子です。
今回は、来秋に松山市出身初!真打に昇進される噺家の入船亭遊京さんに、落語と出会ったきっかけや、真打昇進への想いについてお伺いしました。
中学生から想い続けた落語の道へ
― 落語と出会ったきっかけを教えてください。
落語と出会ったのは、中学生の時ですね。ちょうどその頃、『タイガー&ドラゴン』というドラマが放映されていて、書店で落語関係のフェアをよくやっていたので、”落語”という文字が目につくことが多かったんですね。
コミセン(松山市総合コミュニティセンター)で落語のCDやカセットテープを聴くうちにハマって、漠然とですが「噺家になりたいなあ」と思うようになりました。
― 本格的に噺家を目指されたのはいつ頃ですか。
真剣にというと、大学卒業間近です。大阪に寄席が久しぶりにできて、関西の落語会がすごく活性化していた時期だったんですね。在学中に東京、大阪様々な寄席へ行って噺を聴く中で、うちの師匠の落語に惹かれて弟子入りを志願しました。
でも、何をしたらよいのか分からなかったので、鈴本演芸場へ行って本番終わりの師匠を出待ちして、後ろから追いかけました。今でも覚えてますよ。横断歩道を渡って、マクドナルド(昔はマツモトキヨシ)の前で、最初はファンとして気持ちを伝えたあとに「弟子にしてほしいです」と伝えましたね。師匠も突然のことにびっくりして「弟子入り?一度断らないといけねえんだよなあ」と。
本当は、何度も断って覚悟があるか確認するみたいなんですけど、私の場合は東京に住んでいなかったので通うのも大変だからと、日を改めて話を聞いてもらい、無事弟子入りすることができましたね。
― 噺家人生で、一番思い出に残っていることを教えてください。
初高座ですね。私は師匠の会でもなく、師匠が出ているわけでもない寄席の前座が初高座でした。立て前座(その日働いている前座のなかで一番上の先輩)の兄さんが「初高座だからなるべくお客さまが多い日にしよう」と、
平日でなく土曜日に上げてくださいました。そこで寿限無をやりましたね。
それまでも、高座返しといって座布団を裏返しに、高座へ上がっていくんですけれど、座ってみるとこんなにもライトが眩しいのかと。ほとんど客席が見えないような眩しさは今でも覚えていますね。あんなにライトが眩しく見えたことは、あの一度きりです。
お客さまに教えてもらう
― 落語の魅力を教えていただけますか。
一番の魅力は、お客さまが自分で絵を想像するところかと思いますね。最初は絵が浮かびにくいので、ドラマや映画のほうがおもしろいと思うんですけど、絵が浮かんでくるようになると落語も楽しくなると思いますよ。
同じネタでも噺家によって演出が変わりますし、同じ噺家でも日々研究しているので何度聴いても新たなおもしろさがあるというところも、どんどんハマっていくポイントかなと思いますね。
一言増やすだけでウケるようになることもあるんですよ。
例えば、お手洗いという意味の“憚”という言葉があるんですけど、言葉だけ聞くと意味が分からないですよね。なので、小学校でやる時は「憚でおしり拭くのに使うんだ」と、“おしり拭く”と一言入れるだけで子どもたちに伝わって、ものすごく笑ってくれるんです。
そんなふうに場所や聴く人によって、落語が変わるところもおもしろいと思います。
― 言葉を付け足してもよいのですね。
段階がありますね。前座のうちは、20~25分あるネタを自分で10~15分に編集して披露するので、言葉は足さないけれど、どう切り取るかという部分で創造してますよね。言葉をぬくと、逆にウケるようにもなったりしておもしろいんですよ。
そのあと10年ほど経った時に師匠から「そろそろ自分で考えてやったほうがいい」と言われて、それからはやり方を変えるようにしています。ただ、うちの師匠の魅力というのは”変えてないところ”なんですよ。一言一句教わった方のままなんですけど、人柄が出ていてすごいことだと思っています。
覗き見するぐらいがちょうどいい
― 公演中に大切にしていることを教えてください。
気持ちよく帰っていただくというのは心がけていますね。
これは小三治師匠(十代目・柳家小三治)の教えなんで「登場人物は噺の中でその人たちの人生を生きているわけで、決して聴いてる人に笑わせようとはしてない」と。常連さんがいると「前と同じ噺になって申し訳ないな」と思うんですけど、そんなことは登場人物には関係ないし、彼らは同じ人が来てるなんて思わないんだから気にしなくていいという教えなんです。
笑わせようと来られることが、合う人と合わない人といますからね。私たちが噺に集中して、お客さんに登場人物の人生をちょっと覗き見してもらうというのが、いい落語なのかなと思っています。
でも来秋、真打に昇進するので、寄席でトリを取る時に多くの方に来ていただきたいので毎日が宣伝で、ここ1~2年は「ウケることも大事だ」と思うようになりましたね。「おもしろいと思ってもらえないと、もう私の噺を聴きに来てくれないぞ」ぐらいの気合で、来年に向けて日々勉強中です。
見習い、前座、二ツ目、そして真打昇進
― 肩書や昇進について、詳しくお教えいただけますか。
まず見習いというのがあって、師匠の家で礼儀作法や着物の畳み方を教えてもらいます。師匠の家にいる時間が一番長い期間ですね。
次に前座になって、寄席で自分の師匠以外の噺も聴いたり、働きながら気遣いを覚えて、生きていく基本のようなものを教わります。
それで、二ツ目。まだまだお世話になるんですけれども、一人でもやるようになって。だいたい入門から15年ほどで真打に。
真打が一番多いんですよ。逆ピラミッドで、うちの協会だけで前座が30人、二ツ目が50~70人で、真打だけでも200人近く。二ツ目だとキャリア10年ぐらいの噺家との戦いになるんですけど、来年からは師匠も私と同じ真打ですから、どうやったら選んでもらえるのか果てしないですね。
― 真打昇進に向けてのお気持ちを教えてください。
様々な流派があるんですけど、落語協会の寄席というところでは、前座が師匠方の着物を着せて、お茶を出して、自分の師匠が出ていなくても、1年中休みなくずーっとそこで働くんですよ。それで、いろいろな師匠方に怒られたり、教えてもらったりしながら、寄席全体で育ててもらうんです。
そこから二ツ目になると自分の羽織を着て、一人で仕事をしてもいいようになって、「何をやってもいい」と言われます。私なんて中国一周しましたし、自由に芸の幅を広げる時期ですかね。ただサボったらサボったなりになりますし、難しいですよね。この時期に何をやっていたかが「あとでじわじわ効いてくる」と言われています。
そして真打。真打は、寄席でトリを取る資格を持っている人のことなんですけども、私の噺家人生は寄席で始まったわけですから。寄席で修行を始めて、そこのトリに上がることができるというのは夢の1つです。どれほどの方にお越しいただけるか不安もありますが、自分は何をやるんだろうと、自分自身が楽しみですね。
多くの方に聴いてもらう努力
― 今後、愛媛でやりたいことを教えてください。
もちろん愛媛で落語もやりたいんですけど。
正岡子規のような愛媛にゆかりのある偉人や、愛媛にまつわる出来事を落語にすることで、その噺をきっかけに寄席や公演会へ来ていただけないかなと思っていますね。
落語を聴いたことがない方でも「地元の話だったら聴きにいこう」と思っていただけるかもしれませんし、様々な方に聴いていただけるよう、噺の稽古だけじゃなく、人に聴いてもらう努力もしていきたいと思っています。
絵しりとり たぬ子 ⇒ こ○○○
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