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大人だって、読み聞かせをしてほしい

「きょうのわくわくタイムは、よみきかせですかぁ?」

勤めていた小学校で、担当の子たちが楽しみにしている時間だった。

木曜日の朝は、地域の人たちが、ご自身で選んだ本をもって教室まで来てくれる。

短縮バージョンの朝の会をした子どもたちは、楽しそうに教室の机を全部うしろに下げて、教室にスペースをつくる。

その間にわたしは、椅子と、テーブルと、ちょっとした物置きを用意する。そこが、きてくださった方のステージになる。

子どもたちは、わあわあと自分にとって一番いいポジションを探して座る。簡易ステージの前に、ぎゅっとかたまりができる。

準備ができると、廊下で待ってらっしゃるうちのクラス担当の方に声をかけて、教室に入っていただく。なんとかくんのお母さんなこともあるし、お子さんはずっと前に成人したのにずっと通い続けてくださっている方のことも。朝早くから、ありがたい限り。

「おはようございます、おねがいします」を全員でして、もってきた本を読んでいただく。

後ろからそっと、子どもたちの表情をのぞく。床に座って友達との距離が0cmになったのがうれしくてそわそわしていて気になる子たちも、2ぺージ、3ページと進むたびに本の世界に落ちていく。みんなが落ちついてきたのを見届けてから、やっとわたしも本の世界へ。どうしても、冒頭は聞いているけど聴けていないのでちょっと遅れをとりつつも、みんなを後から追いかけていく———



と忙しくもちょっと懐かしい記憶がよみがえったのは、はじめてのオーディオブックを聴いたとき。これがハッとする体験だったんだ。



オーディオブックの存在を知ってはいたけれど、関心を持てずにいた。

わたしは普段から、毎日本を読んでいる。読みたい本が渋滞していて、毎日毎日読んでいる。「本は1日1冊まで」と言いながら、去年は結局600冊くらい読んでいた。

そんな生活を送っているから、本を聞く必要を感じなかった。

耳で聞くなら、聞くしかないものを聞いていたい。本だけじゃなく、聞くコンテンツだって渋滞している。youtubeの学習動画とか、オンラインセミナーの動画とか、もちろん好きなアーティストの音楽も。移動中の耳は予約がいっぱいだ。目からインプットできるものは、目からするべき。わざわざ聞く必要はないだろう。そう思っていた。



そんなわたしが本を聴くことになったのは、『 心をつかむ超言葉術』が、オーディオブックになったから。この1年間ずっと手元において、折に触れて読み返す教科書として使っている。


新しいことをするとき、何かアイデアがほしいとき。わたしは「超言葉術」に立ち返る。

そもそも、それって何だっけ」
たとえば、こんなこととか、あんなこととか・・・」
つまり、こういうことなんだ!じゃあこの方向で考えてみよう」

「あの人とこんなことやってみたいんだよな。でもな、でもな・・・」
「とりあえず、企画書つくってみようかな。企画書はラブレターだった」
「こんなの送って大丈夫かな? ①自分は本気? ②相手は喜ぶ? ③本当にできる? ・・・うん、いけそう」

本が出て1年。著者の阿部広太郎さんの講座でも半年間学んだおかげで、本で紹介されていることが、考える時のベースになった。

それでもまだまだ、習得したとは言えないでいる。迷ったとき、ヒントはいつも教科書にある。

オーディオブックだったら、本を持ち歩いていない外出先でも参照できて便利だな。

「紙の本の代わり」としか思っていなかった。

が、しかし。




機械による一本調子の読み方を想像してたけど、思った以上に朗読。

読むのとは、まったく別の体験だった。何十回と読んでいる本でも別な本みたいに思えたし、著者の阿部さんの講義を聴くのともまた別物。

阿部さんの文体と相まって、目の前で自分に語りかけてくれているみたいだった。泣けた。

なんだよなんだよオーディオブック。めちゃくちゃいいじゃないですか、、




正直なところ、読み聞かせは、必要ないんじゃないかと思っていた。

担当した子たちは中学年以上になれば自分で十分に本を楽しめる。

勤務校では高学年にも読み聞かせがあったけれど、読んでもらうよりむしろ各自が好きな本を読みたいんじゃないのかなと想像していた。

でも、オーディオブックを体験して分かった。同じ内容でも、読むのと聴くのは別物で、それぞれがすばらしいエンターテインメントであること。一つの作品を原作と映画の両方で楽しめるのと同じだから、好みの方を選べばいいんだ。

そういう意味では、いくつになっても読み聞かせは必要だ。聞くことでしか見えない景色もある。


オーディオブックは、大人への読み聞かせだった。

「もう大人だからなんて」言わないで、これからは大人だって読み聞かせしてもらおう。





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