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先端技術の教育利用②​ ​子供たちはVRでどのように学習を進めたか。

(2020年8月27日記事の再投稿です) 前回はVRとは何かについてその機能や効果、おすすめの動画などを紹介したが、では実際にどのようにVRを学習に取り入れれば良いのだろうか?今回は生物の授業にVRを取り入れた、関西大学高等部の導入例や生徒たちの意見などを紹介していきたい。


​関西大学高等部

関西大学高等部では、教科書や資料集などでの理解と観察実験での理解との間にある隔たりを埋めるため、生物の授業でVRを使用した。一年生の生徒たちは「細胞と遺伝子」、二年生の生徒たちは「遺伝子の発現を調節する機構」といった、実際に肉眼で見ることの出来ない単元の弱点を補完し、より立体的な角度での学びへとつなげることを目的に自分自身が細胞小器官の目線となり、細胞内の構造や働きを体感した。

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生徒たちの意見


教科書や資料集は細胞の外から見て理解している感じがしていたが,見ている視点が全然違った。頭の上をミトコンドリアが動いていて,足元には大きな小胞体がある。自分が細胞小器官になったような気分だった。

教科書は文字情報だが,これは感覚器官を使って理解している気がする。距離感がわかる。形も,絵だけだとただの丸い形だと思っていたが,表面はゴツゴツしていたり,すごくリアルに感じた。

学んだことが目の前で起きている。mRNAからタンパク質が発現している横で,モータータンパク質が細胞骨格の上で細胞小器官を運んでいる。自分の前で全てが繋がっている。

授業で使っている動画は見せられている感じがするが,VRは自分で見ている感じ。だから何だろう?って色々気になってくる。そして,それが知っていることと繋がるとすごく楽しい。

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【宮本先生からの実践を通しての感想】

いつもと教室内の雰囲気が違っていました。全員がVRゴーグルをつけて,顔の表情もほとんどわかりません。
しかし,全員が夢中であちこちに顔を向けていることはわかります。

すでに学んだ知識がVRの視覚情報と繋がることで,細胞などミクロな世界のことをより興味を持って身近に理解することができているようでした。

いろんな学習方法で知識理解が深まっていくことはすでに知られていますが,VRもまたその一つとして広まっていくのではないかと期待しています。

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関西大学高等部 宮本 裕美子 先生


以上のように、VRを取り入れることでよりリアルに細胞の中の雰囲気を感じ、教科書や観察実験での理解を超えて体感的な理解が深まっただけでなく、自らの意思で視線を向けることで学習者の主体性も引き出されているのがよく分かる。また、自身のペースで細胞内で何が起きているか考えを巡らせ,知識を再構築していく時に知的好奇心が高まり、科学的にものを見る力を養うことが出来ていると考えられる。生命進化の過程で培われた自分自身の体の価値をいつか実感してくれることだろう。​

VRは他にもいくつもの可能性を持ったツールであり、授業や学校生活で活用できる場面もたくさん考えられる。最後にこちらでいくつか学習向けのVR用動画を紹介していきたい。

①稲作体験

特に都心部に住む生徒たちは、社会科で稲作について学んでも具体的に想像するのはなかなか難しい。VRを使うことで、短時間で全ての工程を自分が田んぼにいるかのように体験することができ、また積極的に考えグループで意見を出し合うことで食物を育てるということへのより深い理解が得られるだろう。

NHK「今すぐ使える!VR教材」

②戦国時代へタイムスリップ

時代と共に生活様式は変化し、生徒たちが歴史について学んでもそれらを具体的に想像し理解することが日々難しくなってきている。こちらのVR用動画では実際に戦国時代の屋敷や合戦にいるような迫力ある体験ができ、また武田信玄を用いた物語になっているため生徒たちも夢中になって学ぶことができる。

【甲府市公式VR】500年前にタイムスリップ「Experience SHINGEN〜為せば成る〜」

③英会話

こちらは一人称視点でVR空間にいるアバターを操作しながら学習を行うプラットフォームであり、周りの生徒たちを気にすることなく集中して楽しく英会話を学ぶことができる。ネイティブ講師とのコミュニケーションも可能で、実際に授業に取り入れている高等学校もある。今後は語学学習だけでなく、文化体験学習などのコンテンツも開発する予定とのこと。

英語だけでなく異文化学習等も可能「immerse」

④避難訓練

VRが活用できるのは授業中だけではない。こちらの動画では学校で火災が発生し、非常ベルを押して避難口から逃げるという避難体験ができる。教室内を模したリアルなCGが使用されており、火に巻き込まれるという状況から火災の怖さを身近に学べるようになっている。また、生徒たち自身で体験できるよう複雑な操作は必要なく、訓練に集中できるよう作られている。

防災VR for Kids 火災編

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