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最強のライバル ~マドリディスタから見たリオネル・メッシとクラシコ~ 下編

粉砕

いつも大量に水が撒かれるカンプノウだが、その必要がないほどの雨が降りしきる中でのキックオフとなった。モウリーニョはそれまでの戦い通り、フィールド中央付近からプレスをスタートすることを選択した。序盤はマドリーも素早いカウンターで敵陣に進出していたが、イニエスタの矢のようなパスをシャビがひらりと舞ってカシージャスの牙城を崩す。その後もバルサがボールを持ちマドリーはカウンターを仕掛けるという展開は変わらないが、「散歩」を終えたメッシがそこかしこで、ボールに絡み始めたことで徐々にボールを奪える回数が減っていく。そして延々とボールを持たれサイドを変えられ、ビジャの折り返しをペドロに押し込まれ二失点目を喫する。その後は永遠に続くかに思われる「ロンド」の中にマドリーの選手たちは閉じ込められることになった。

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後半開始、モウリーニョは0-2の状況にも関わらずエジルを下げてラス・ディアラを投入し、殴り返しに行くのではなく、これ以上の出血を防ぐために力を注ぐことを選んだ。しかし状況はさらに悪化し、ボールを持ってもあっという間に回収され、ロンドを繰り返されるという無限の地獄に入り込んだかのようであった。(この時代のバルサの試合にはよくあった光景だが)私はこんなレアルマドリーはその時まで見たことがなかった。世界最高のスター軍団を自任し、あれほどの選手達を集めていながら、ボールをハーフウェーラインから敵陣に送ることすらできないのだ。選手たちの憔悴しきった顔は、「敵わない」ということを何よりも雄弁に語っていた。その後メッシのスルーパスに、守備陣も私の心も切り裂かれ(当時の彼はまだドリブル主体でこういったプレーは多くなく、クラシコの舞台でパスの才能が本格的に開花したように思えた)5-0「マニータ」という屈辱を味わい、白い灰になったかのようであった。

試合後のモウリーニョの「この試合を忘れることは簡単だ。なぜならこの試合には1チームしかいなかったからだ。」という‘負け惜しみ‘が虚しく響いた。

反撃

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