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カメラ片手に、プロの写真家と散歩した話〜新宿編〜 第3話

対象読者は?

写真撮影が上手くなりたい!と思っているカメラ初心者。
・プロは何を考えて写真を撮っているのか興味がある人。

撮影場所の詳細

今回の撮影地は、以下のエリアを中心にお届けします。

1)コクーンタワー、東京都庁周辺(赤いエリア)
2)新宿中央公園エリア(青いエリア)
3)新宿アイランドタワー周辺(黄色のエリア)

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前回は、新宿中央公園エリア(上の地図の青色)で撮影した写真について、和田さんからアドバイスを頂きました。西新宿最終回の今回は、地図の黄色のエリア、新宿アイランドタワー周辺をお届けします。

設楽:
いよいよ最終回となりました西新宿編ですが、最後もこのエリアの特徴ともいうべき色々な被写体を撮りました。中でもやっぱり新宿アイランドタワーにあった面白いオブジェが個人的には好きだったので、この話からしましょうか。

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和田さんもこのオブジェを撮影されてましたね。

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このオブジェなんですが、あとから調べたらルチアーノ・ファブロというイタリアのアーティストが作った「Passi」っていう作品らしいです。

和田:
この写真に関しては、正直言うと設楽さんのほうが一枚上手かもしれない(笑)。
理由はいくつかありますが、私は写真が上がってから気づいたんですが、このモニュメントって、石の上に何か文字が書かれてありますよね?これが設楽さんの方が綺麗に映し出されています。
あとこの作品って、椅子っぽい形をしていますよね?これは私は撮影時には気がつきませんでした。作品の特徴を表しているという意味では、設楽さんの写真の方がいいかもしれません。

設楽:
ありがとうございます。素直に嬉しいです。でも個人的は私の写真よりも和田さんの方がいいなと思っています。というのも、右側の建物のカーブが立体的に写っているのと、そのカーブが水底のタイルのアールとちゃんとシンクロしてて、その影響かとても奥行きのある写真に仕上がっていますよね。

和田:
そうですね。まさに設楽さんが今言ったことを見て欲しくて、それを狙って撮りました。

設楽:
やっぱりそうですよね。ここがプロと素人の違いだなとあらためて思うのですが、プロは「こういう風に見て欲しい」という自分の意図をきちんと技術と経験で一枚に入れ込めることができますよね。そこがあらためてすごいなと。

和田:
自分が伝えたいもの、というのがあって、それが写真を通して見てる人に伝わって感動してもらう、というのが写真の一つの醍醐味ですよね。それが意図してできるようになるためには、やっぱり自分が何を伝えたくて、どう撮ればいいのか?が理屈でわかっている必要がありますよね。ここはやっぱり訓練ですね。

設楽:
訓練ですよね……。頑張らないといけません。さて和田さん、このエリアで有名なロバート・インディアナの「LOVE」ですが、これ和田さんの写真リストになかったんですが、これは撮らなかったんですか?

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和田:
あーこれですね。これ有名ですよね。これは人を入れ込まないとちょっとしんどい写真になるなーと思って撮らなかったんですよ。こういう被写体って、そのまま撮ると、「オブジェ」になってしまうんですよね。

こういう被写体って、たとえば草間彌生さんの直島にある有名な「南瓜」ってありますよね。
ああいうの作った作家って、おそらく自分の作品と人をかけたいと思っているはずなんですよね。その作品単体ではなくて。
だからこの時、「LOVEだけ撮るのはなぁ……」って思っていました。

設楽:
確かにそうですよね。こんな都会のど真ん中の往来が激しい場所に置かれてるんだから、何かそこには意味があるはずですよね。なるほど……そこまで考えてシャッターを切ってるのかー。

【ポイント】
その被写体がそこにある意味を考えながら撮る

さて、次なんですが、これまた「これぞ西新宿」です。新宿警察署の裏にある、この不思議な信号機。

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和田:
これはこの円状の不思議な形が全部入ってて、意図が伝わる写真ですね。

設楽:
ただ、個人的には和田さんのこの写真の方がいいなと思っています。これ、私のレンズが広角だったからたまたま全体が写せただけで、和田さんのこれは全体が写ってないですが、左右が切れててもちゃんと「あ、この形状は円なんだな」ってわかる上に、この信号機の迫力をきちんと表現できていますよね。

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私の写真はどうしても奥のコクーンタワーに目がいってしまうのですが、和田さんのこっちはちゃんと信号機のインパクトを出せてるなと思います。

和田:
設楽さんの写真は、わざわざ視線を下げて、信号機を下に入れて上の風景も入れていますよね。撮りたいものが何かは伝わってきますし、仮にこの信号機の左右が切れてても円状だってことはわかります。逆に切れていた方が近未来感が出て面白い写真になっていたかもしれないですね。

以前に少し話をしましたが、大切なのは自分がいま使っているレンズの画角がどのぐらいで、どの距離なら被写体がどのぐらい入るのか?そこから寄るのか引くのか足で試してみて……、というのを繰り返して距離感を掴むことです。

設楽:
さて、今回もいよいよ最後の1枚となりましたが、最後はこれについて話したいと思います。まず私の撮った写真がこちらです。

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これは新宿西口の飲み屋街の一角なのですが、こんな一等地のビルが取り壊されてて、周囲のビルの壁の汚れが印象的だったので撮った一枚です。
和田さんも同じ構図を撮っていますが、私のとは全然印象が違います、こちらです。

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和田:
これに関しては、設楽さんの写真はなんでこんなに空を入れ込んでいるのか?ここが謎ですね(笑)。
この工事現場って、新宿西口の一等地なのですが、なんでこんなビルが取り壊されているんだろう……と考えた時にやっぱりこういう所にも今の御時世の影響が出ているのかなと思いながらシャッターを切っていました。
そしてこの写真は、もう背景はこの薄汚れたビルの壁にすると決めていて、さらに人が通ったらシャッターを切ろうと考えて撮った一枚です。

設楽:
確かに僕の方が空が多くて白いエリアがたくさんある分、壁の薄汚れた感じとか、この一等地でビルが取り壊されているのは何故?みたいな疑問というか物語性に欠けますよね。うーーむ難しい……。なんであんな空抜けにしてしまったんだろう……(笑)。

和田:
ずっとビル群を撮っていたから、そこに意識が引っ張られすぎちゃったのかもしれないですね。これで入道雲とかが出てたら面白いかもしれないですが、この構図にこんなに空はいらないですね。
何をこの一枚で伝えたいか?そこから計算して構図を決めていくことを心がけてみてください。

設楽:
今回もありがとうございました!

【プロフィール】

和田 剛 フォトグラファー
旅行と温泉が好き。
写真をまなぶ人のオンラインスクール「good! studio」主宰

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設楽幸生/Sachio Shitara
編集者。1975年東京生まれ。週末カメラ片手に飲み歩くのが趣味な、写真の素人。Twitterやってます。

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カメラのたのしみ方

東京都八王子市高尾山の麓出身。東京在住の編集者&ライター。ホッピー/ホルモン/マティーニ/アナログレコード/読書/DJ