見出し画像

カメラ片手に、プロの写真家と散歩した話〜浅草編〜 第2話

この記事は何?

・写真を撮ることが好きな素人が、プロの写真家・和田剛さんと街を歩き、撮った写真を見ながらプロからアドバイスをもらい、カメラの腕を上げてしまおうという連載。

対象読者は?

・写真撮影が上手くなりたい!と思っているカメラ初心者。
・プロは何を考えて写真を撮っているのか興味がある人。

前回の浅草編では、東京メトロの地下エリアでの撮影で、ISOの話などを中心に聞きました。

今回は、いよいよ地上に出ての撮影です!が、あいにくのひどい雨で、途中休憩(昼酒)を入れながらのんびりスナップを撮りました。今回の撮影エリアは、以下の地図の青いエリア周辺でお届けします。

1)東京メトロ浅草駅の地下(赤いエリア)
2)商店街と浅草寺裏の飲み屋街(青いエリア)
3)浅草寺周辺(黄色のエリア)

画像1

雨の中の商店街でのスナップ

設楽:
地上に出ると、かなり雨が降っていましたね。でも浅草は結構アーケードが充実してて、あんまり撮影に影響ないのかなーと思っていたんですが、やっぱり雨の中の撮影は大変でした。

今回はさっそく私が撮った写真を見て頂きたいんですが、これは商店街から伸びる脇道のおばあちゃんを撮ったものです。どうですかね?

画像4

画像5

和田:
これは、右側の消火栓を入れたのがいいですね。これを入れることで遠近感が生まれています。

そして画面のセンターにおばあちゃんがいますよね。右にある消火栓から真ん中に目が行くので、見ている人の目がいきつくのはおばあちゃんなんですね。だから設楽さんが見せたい、伝えたいことがよく伝わっている写真だと思いますよ。

ハプニング感が出てないのが残念ですが(笑)、1枚目は本当にいい写真だと思いますよ。見てる人は「おばあちゃん、路面濡れるほどの雨なのに、なんで傘さしてないんだろう」って思いますよね。

あと、この写真ですがおばあちゃんが路面の「止まれ」の「ま」あたりにいたら最高の写真になりますね(笑)。あとはこれ、モノクロに変換したらいいい写真になりますよ。

設楽:
モノクロ変換かー!それは全然発想がなかったですね。

画像6

さて、次なんですが、浅草ってすごく雰囲気のある喫茶店が多いですよね。たとえばこういう店なんですが。

画像7

すごくいい佇まいなんですが、この写真だとこの店の良さを最大限伝えきれてない気がしていまして、こういう「いい雰囲気のお店」の写真を撮る時に気をつけることってありますか?

和田:
まずは、こういうお店の「いい雰囲気」というのが、どんな要素で「いい雰囲気」になっているかを考えて、その特徴をきちんと捉えることですね。

まず気になったのは、せっかく看板がいい感じなのに、誰かのリュックサックが邪魔になっている。あとドアにこのお店のロゴがありますよね?このロゴをきちんと撮しきれてない。こういう部分に気をつけることが大切ですね。

こういういい感じのお店って、最初に全体を見て「いい感じのお店」というよりも、味わいのある看板やショーウィンドウやドアのロゴのような「部分部分」に目がいって「あ、いいお店だな」って思いますよね。だからこの店のいい雰囲気を醸し出している「モチーフ」の部分から撮っていった方がいい、というのが一つです。

そしてモチーフを撮った後に、4歩か5歩後ろに下がって、全体で捉えることですね。多分このハトヤの横って、衣料品店とか食料品店だと思うんですが、そういう横にある店も入れることで、いい意味で「普通じゃない」ハトヤの外観が浮き立ってくるはずです。

【ポイント】
被写体を立たせるために、周囲も利用してみる。

この写真は、窮屈に見えるのがちょっと残念ですね。もっと引いてこのお店を撮ると、このお店の良い部分がもっと捉えられると思います。

設楽:
なるほど、撮りたい対象があって、その良さを伝えるために周囲を使うんですね。

さて、この後雨が激しくなってきて撮影どころではなくなりまして、休憩がてら一杯やった後に、花やしきの方に行きましたよね。ここで撮って気に入っているのが以下です。

画像8

画像9

これは以前、四谷編のときに和田さんから教えてもらった、「いつもなら当たり前の景色が、このご時世で当たり前でなくなっている」というのを意識しました。

本来なら花やしきって休日に賑わうものじゃないですか。でもこういうご時世で浅草に全然人がいないから、花やしきもちょっとさみしい感じでハトしかいない。これを伝えたかったんです。

和田:
なるほど。発想としてはいいですが、残念なのは、見る人はこれだと花やしきだってことが伝わらないですよね。なのでもっと花やしきとわかる対象を入れた方がいい、というのがまず1つ。ちょっと看板が小さいですね。

ただ、良い点は、設楽さんはこの写真を撮る時にしゃがんで撮影してますよね?鳩目線を狙ったんですかね?(笑) こうやって体を動かして色々なアングルを探ろうとしているのはとてもいいので、しゃがむだけでなくて、腕を上に伸ばして撮ってみるとか、色々なアングルで撮ることを意識すると、面白い写真が撮れますよ。

【ポイント】
撮影する時に、体を動かして色々な角度で撮ってみる

設楽:
構図の話でもう一つお聞きしたいんですが、私基本的に単焦点のレンズしか持っておらず、ZOOMのレンズは使ってないんですが、単焦点だと自分で近づいたり遠ざかったりしないと、いい感じで構図を決められないですよね。なんか構図の決め方のコツってありますか?

和田:
そうですね、たとえばこの2枚目の写真でいうならば、左側の「ふきや」っていう看板は入ってこなくもいいですよね。だからもう少し寄って撮ってみる。それを見て何かもう少し入れたいものがあればちょっと引いてみる。

同じ単焦点レンズを使っていると、どういう距離で撮るとどんなものが入ってくるのか?っていうのが段々わかってきます。ですから、自分が構図の中に「どういう物が入ってほしくて、何が不要か?」ということを考えながら撮影を続けていくと、自分と撮影対象との距離と構図が身についてきますよ。

逆説的にいうならば、ズームレンズしか使ってない人は、残念ながらこれを身につけることはできないですよね。

設楽:
たしかに。やっぱりもっと写真を撮る機会を増やさないといけないですね。(つづきはこちら

【プロフィール】

和田 剛/Tsuyoshi Wada
フォトグラファー。1974年生まれ。
人物撮影と旅行が好き。
写真をまなぶ人のオンラインフォトスクール「good! Studio」を主催。
近日オープン。
http://tsuyoshiwada.com

画像2

設楽幸生/Sachio Shitara
編集者。1975年東京生まれ。週末カメラ片手に飲み歩くのが趣味な、写真の素人。Twitterやってます。

画像3


この記事が参加している募集

カメラのたのしみ方

東京都八王子市高尾山の麓出身。東京在住の編集者&ライター。ホッピー/ホルモン/マティーニ/アナログレコード/読書/DJ