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「生まれ始めた若者たちのチャレンジの灯を消してはいけない」 北山公路


こんにちは!運用ディレクターの髙木です。EDIT LOCAL LABORATORYでは、毎月会員の方にリレーコラムを書いていただき、メールマガジンにて配信しております。リレーコラムでは、全国にいるラボのメンバーがそれぞれの現場で考えたことや、ご自身の活動をご紹介いただいております。みなさまもぜひ覗いてみてくださいね。

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「生まれ始めた若者たちのチャレンジの灯を消してはいけない」
北山公路

 私が生まれ育ち、今も住んでいる花巻市は、南部藩南端を守る城下町として、釜石線のターミナルを持つ三陸への玄関口として、14〜15もある温泉を持つ観光地として、そして江戸時代からの水運を使った商業の街として、かつては岩手県第2の都市だった。宮沢賢治が生まれ育った聖地でもあり、県内唯一の空港を持つ交通の要衝でもある。しかし、コンテンツが豊富すぎるせいか、活発な商業活動により資産家が多いせいか、はたまたよく言えば奥ゆかしい、悪く言えば田舎町特有のコンプレックスのせいか、バブルのころを境に目に見えて市街地が衰退してきても、具体的に動こうという機運が起きなかった。工業団地に大手工場を抱える隣の北上市に街の規模が抜かれても、嘆くだけで何も変わりはしなかった。


 潮目が変わったのは、市街地のランドマークだったマルカンデパートが閉店を発表した時から。デパートの売り場は相変わらず閑散としていたが、ここには市民誰もが幼い頃に家族と食べに行った思い出の大食堂があったのだ。昭和47年から何も変わっていないレトロな雰囲気、180円という値段も昭和な箸で食べる30cm近い巨大なソフトクリームなどが全国的にも知られてきていて、最近はある意味観光スポットにすらなっていた食堂だったが、その価値にようやく地元市民が気づいた瞬間だった。


 高校生たちが存続署名活動を行い、若手ベンチャー経営者が立ち上がってクラウドファンディングなどを使って資金集めをし、存続賛同者たちが次々に寄付金付きの応援グッズを売り始めたムーブメントは注目を集め、営業再開を果たした時にはYahooニュース1面にもなるほどの話題となった。

 存続可能な都市形成のため、コンパクトシティ構築を図っていた市も動く。大食堂再生のきっかけとなったリノベーションスクールの市開催を始めたのだ。ちょうど、マルカンムーブメントに影響を受けた若者たちが市外からも花巻に集まってきたタイミングにマッチし、これまで2度のスクールから新たな事業が生まれてきた。その動きを察知した市民も追随してきていて、いま花巻のまちは大きく動き始めている。


 このチャンスを逃すわけにはいかない。そのために、若者でも、よそ者でもない私が編集者としてできることは何かを考えた。「まちの編集」のサポートとして、この動きを広くプロモーションすることではないか。若者たちの活動を紹介しながら支える市民を増やしつつ、後押しすることではないか。東京の出版社の仕事が多かった私だが、若者たちの動きをきっかけに、そんな思いを持って今地元の仕事を仕掛け続けている。

Profile
盛岡の老舗印刷会社役員を経験後独立。主な仕事は首都圏の出版社の書籍や雑誌のプロデュース・編集、地元の紙やwebメディアのディレクションなど。2017年4月より、「花巻まち散歩マガジンMachicoco」主宰。https://www.facebook.com/pages/category/Magazine/花巻まち散歩マガジンMachicocoマチココ-202435156920366/

(本記事は,EDIT LOCAL LABORATORYメールマガジン4月分より抜粋したものです)


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