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PATM、奇病か?精神病か?

PATMという奇病がある。                     PATMとはPeople (Are) Allergic To Me の略でアメリカで生まれたネットスラングである。2008年くらいに出てきた言葉らしいが該当する患者は以前からいたのだろう。                           訳すと「周囲の人々が私に対してアレルギー様反応を起こす」となる。  つまりPATMの患者の周囲の人々が鼻水、クシャミ、咳込みなどアレルギー様反応を起こすというものである。 

PATMはもともと体臭、口臭などにコンプレックスを持っているに人に多く、ストレスなどが起因して発症することが多い。           本人は何らかの体臭、口臭などで悩んでいる人が殆どであり、それが原因で周囲の人々が自分の体臭に反応していると思っている。         そして、周囲のアレルギー様反応に耐えられなくなり、精神的に病んでいる患者も少なくない。                         そして周囲との交流を避けひきこもり、外部との接触を好まない人が非常に多い。                                精神病の一つとしてとらえている方が8割くらいだと思われる。     私はPATM肯定派なのだがPATMの存在を証明する根拠というものはあまりなく力不足を感じている。

似たような疾患で「自己臭症」というものがあり鑑別は難しいのだが、自己臭症が体臭、口臭に悩んでいるのは共通するが、自己臭症では具体的な匂いがあり、周りに迷惑をかけているとい悩んでいる。           それに対して、PATMは自分の体臭は実際の所よくわからないが、周りの反応が非常に気になる傾向があるというところが相違点ではないかと私は考えている。                              特徴的なのは証言で周囲の人のアレルギー様反応が非常に強いということだ。「教室だと半分以上の人が咳き込む」「一瞬にして20mくらい離れた人が反応する」「家の外の人が咳き込む」などと物理的には考えられないような不思議な現象を体験すると皆、口をそろえたように言う。ただし、「周りの人が一斉に下痢をする」とか「周りの車が車間距離を取る」など強く主張する人も多く、PATMの方は大なり小なり被害妄想を持っていることが多いと感じている

しかし、よく問診を取ってみると「実は自分の体臭がよくわからない」「体臭はたいしたことないはずなのに周囲に反応される理由がわからない」と首をかしげる患者が実に多い。                     実際にPATMの患者を診察していても「臭くてたまらない」と感じたことは私は一度もない。実際PATMの患者がそんなに匂うのなら、狭い私の診察室は臭くてたまらないはずだ。                     よって、私は匂い ≠ PATMの原因と考えている。           具体的にはPATMの原因は無臭の別の原因だと考えている。       

PATMは、日本ではもちろん正式な病気として認められておらず、診療する医師もごくわずかで、患者の多くは必然的に数少ないPATMの診療医師を盲信してしまう。                           しかもかなり高額な医療費を払い続けている患者も少なくない。    

PATMに関する情報源はごく限定されていて、SNSサイトなどで情報を得たりしているのがほとんどだ。しかし、内容はPATMを診療する医師の治療方針や処方されているサプリの内容だとかが主で、それに加え(たぶん海外からの)明かなフェイクと思われる情報や医学的に危険な治療法が記載されているケースも少なくない。

PATMの原因としては皮膚ガス、腸内細菌、代謝異常、カンジダ感染説などがあげられているが特定されていない。私がPATM患者13人に腸内細菌検査を施行したところ9人にバリウム菌をいう菌を認めた。         バリウム菌は通常口腔内などにいる菌で腸内の常在菌ではない。今後の研究でバリウム菌とPATMの関連性が判明するかもしれない。

PATMは原因がわからないので当然、根本的な治療法はない。      最近では低FODMAP食(小麦、発酵物、甘味料などを除いた食事療法)などで症状が多少軽減したとかのコメントはある。

PATMの最大の謎は「原因物質」と物理的に「理解できない現象の数々」だろう。原因は単なる精神病と決めつけている方が8割くらいいると思う。

PATMという言葉通りにアレルギー疾患だと仮定すると、その抗原性はスギやヒノキを遙かに上回る抗原性の強いものでなければいけない。しかし、それに該当するような物質は現在知られてはいない。           また、アレルギー物質を一番曝露されているPATM患者本人にあまりアレルギー反応がでていないという事実も不可解な話だ。           長期間曝露されることにより、自分は多少は脱感作され、症状が軽減することはあるだろうがアレルギーとはそんなに簡単に治るはずがない。    以上より私はPATMはアレルギー様症状を起こす疾患であるが、厳密なアレルギー疾患ではないと考えている。

シックハウス症候群などの研究などに携わっているある教授が、「PATM患者の皮膚ガステストを施行したところ基準値の400倍のトルエンを検出した」との報告があり、PATMの原因物質ではないかと注目されている。  論文自体を医学的に評価すると比較するとかなりお粗末な内容でしたが・・

しかし、仮にトルエンが原因物質だとしても、患者の証言が本当ならば「家の外の人が咳き込む」ほど野外のトルエン濃度を上げるにはトルエン濃度が0.05PPMくらい必用だ。屋内は確実に中毒症状で意識不明の濃度レベル、PATM患者自身は致死量レベルのトルエン濃度でなければいけないということだ。                               さらに、トルエンでは「一瞬にして20mくらい離れた人が反応する」ということはまず説明できない。                      それどころかトルエン以外のどの物質でも説明がつかない。       これらの摩訶不思議な現象を説明できる物質は存在しないということだ。                                体臭治療で高名な先生は「PATMは量子学の波動のようなもの」と説明している。

少し、話が飛躍しすぎていますが量子学では、物質には粒子としての性質と波としての性質があることが証明されている。             波としての性質であれば一瞬にはるか遠くに到達したり、簡単に壁を貫通することができる。                          現実感がない話かもしれませんが、物質の波としての性質は電灯の影など、日常に見ることができます。

私の個人的な意見ですが、PATMと自己臭症とは密接に関連していてオーバーラップしている部分があると考えています。           PATMとは自己臭症がエスカレートして器質的な異常を併発したものか、または患者はPATMの状態と自己臭症の状態を行き来しているものかもしれません。                              PATM患者は精神科受診を極端に嫌う方が多いです。しかし、精神疾患を否定するためにも、私は積極的に精神科受診を勧めています。

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