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「政治は私たちが見えていますか?」に応える。 日本記者クラブ 新党代表選討論会《質疑抜粋》

9月9日、日本記者クラブで合流新党代表選の討論会が行われました。討論会では、泉候補と互いにテーマを決めて質問をしあい、また企画委員の方からも多くの質問が寄せられ、新党の目指すべき方向や新型コロナウイルス対策、選挙や外交安全保障、エネルギーやジェンダーなど政策について答えました。

枝野冒頭発言(要約):国民の皆さんの暮らしをしっかりと見つめ、政権の選択肢となり、リアリティのある政治を実現するために合流を決意、立候補しました。コロナ危機は、生きるために不可欠なベーシックサービスの脆弱さを顕在化しました。現場力を失い、惰性で政治を続けることは許されない。長期政権が終わる今このときに野党勢力の結集が実現したことは時代の要請だと考えています。この間、積み重ねてきた貴重な経験と教訓を生かすことで、国民のために戦うチームの先頭に立っていきます。

政策の4本柱は、こちらのnoteをご覧ください。

質疑の内容(抜粋)は、次の通りです。

地に足をつけた外交・安全保障を


イージスアショア、敵基地攻撃能力は現実性がなく、もっと言えば防衛省が長年たててきた計画にはなかったものを安倍政権が無理矢理いれたため混乱がおこっている。『野党は外交・安全保障問題が弱い』と言われ続けてきたので、まずはそこから伺いたい。

枝野
集団的自衛権や、敵基地攻撃能力というものよりも、地に足をつけた安全保障が必要。自衛隊の訓練や、日常的な装備の充実が何よりも重要だと考えています。特に、南西地域の島しょ部の防衛が日本にとっては一番のポイント。そのためには海上自衛隊の充実、実際に生じうる事態に対応した訓練が必要だ。日米、ASEAN、オーストラリアなど、相手のあることではあるが、経済にとどまらず防衛の面でも協力体制の検討が必要だと思います。


防衛問題でもあり、外交問題でもある沖縄の基地問題をとりあげたい。我々は辺野古の工事を中止すべきだと訴えてきた。国会では日本プログレッシブ議員連盟で、進歩的なアメリカの研究者と米軍再編、日米地位協定の見直しのための議論をしています。

枝野

日米関係について、私は従来『タカ派』と呼ばれている人ほど卑屈な態度であることを不思議に思っています。決して一方的に守ってもらっているわけではないのだから、信頼関係のうえでしっかりと交渉することが必要。巡回することでコミットメントしてきた海兵隊にとって、沖縄に海兵隊の基地があることが必ずしもメリットというわけではない。

企画委員:普天間基地の危険除去、日米地位協定の見直しについてはどうか

枝野
相手の同意がないと出来ないことです。工事を止めることはできるかもしれないが、沖縄にあんなに大きな基地が必要なのかというところから、即時交渉に入るということが責任ある態度だと思っています。そうした交渉の末に改訂も可能だと思います。


同じ意見です。

新型コロナウイルス感染症への対策

枝野
新型コロナウイルス感染症対策において、検査が拡大せず、いまもしていないことが深刻な入り口の問題。経済を活性化しようと思っても、何をやっても限界がある。諸外国ではかなり広い範囲、低価格で検査が広がっている。政府を広めるとは言っていますが、これは国会で我々野党が広げろ広げろと言い続けてきた成果だと思っています。PCR検査を現実的に広げていくにはどうしたらいいか伺います


官邸、厚生労働省、大臣は西村さん、誰の指示を聞けばいいのかわからない状況なのではないか。例えば、本気で検査を広げようと思えば、獣医師が活躍できるはずだが農水省にそういった話はきていない。資材が足りない、人材が足りない。政府は1日に可能な検査数をあげているが、実態が伴っていないのが現状。県同士の横のつながり、広域的な体制も必要だと思います。

枝野
欠けているの強いリーダーシップ。東日本大震災の時には、会議体が多すぎるとの批判もあったが、各省庁から人をあつめて支持をだして国民生活を守ることが出来たという側面もある。感染症対策の中心は厚生労働省だが、機材なら経済産業省、医師会や総務省、農林水産省など管轄の違う省庁から人を出してもらい、大臣の頭越しというわけにはいかないがそれぞれに支持を出し、動いていくという形にするべきではないか。


強いリーダーシップは大事だが、注意すべき点もある。その裏側に閉鎖性があってはならない。安倍政権は途中で国会を閉じた。マスクも、給付金も、GOTOキャンペーンも、各省庁の実務者からも専門家からも話を聞かずに進めてしまった点が問題。危機の時には国会を開くという姿勢を我々は示すべきだと思います。民主党政権時の良くなかった点は、事務次官ポストが据え置きになってしまい、その結果として省庁の意思疎通がうまくいかなかった。そういうところは検証していかなければいけない。

企画委員:コロナ収束の指標は何だと考えるか

枝野
有効性の確認されたワクチンが普及するか、特効薬が普及するまで。


決して1年ではない。2年、3年というスパン。コロナ危機以前から景気が低迷していたことを考えると、デフレから完全に脱却しきれない日本であるということもふまえ、インフレ率が2%に届くまでというのが1つの指標。

企画委員:来年のオリンピック開催についてはどう考えますか


やりたい、やってもらいたいという思いはある。再延期はないとのことで、小規模開催という可能性があるならば最大限その可能性を模索したい。

枝野
私はコロナという病気の収束について話し、泉さんは経済も含めた社会状況の収束について話されたということは確認しておきたいと思います。

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安心を高める経済政策

枝野
我が国の経済状況は、この30年間、実質経済成長率はずっと横ばいできている。アベノミクスなど景気刺激策がとられてきたが、実質的な成長のためには格差の是正、ベーシックサービスの充実が必要ではないかと思っている。


株価や為替は堅調のように見えたかもしれないが、コロナ危機においても全く株価が変わらないというのは、これはかなり異常な事態だということがわかると思う。いま『将来は安心です』と答えられる人はほとんどいないのではないか。消費を上向かせるための消費税減税、アベノミクスで大手企業に内部留保がかなり積み上がっている、本来ならそれは賃金に反映されるはずのもの。賃金に反映されるかによって所得税を検討するというようなこともあってもいいのではないか。

枝野
消費減税は否定しないが、バブル後の経済トレンドを見ると、消費税が景気低迷の主たる原因ではない。例えば、200万円しか収入がない人は、200万円しか消費できない。社会のベーシックサービスを充実させることで、医療や介護などにかかる費用が消費にまわることになる。生活するうえでの安心を高めるのでなければ、刺激策を繰り返しても安倍政権の7年間と同じになってしまう。

企画委員:経済対策として、消費税減税を否定しないということか

枝野
消費減税は副作用も大きい。法改正が必要で、これまでも選挙の争点として与野党が割れてきたのが消費税。それを考えると、与野党で合意できる余地のある時限立法でやるのであれば、可能性はあるかもしれない。

企画委員:インフレ率2%を指標としていたが、それは事実上の消費税廃止ではないか。その分の税収減についてはどう考えるか


税収が減ることの解決策として、1つは国債。そして景気が回復すれば税収も上がっていくので、消費税減税というのは、税収が減るだけの話ではないと考えています。

企画委員:税体系の見直しは、三党合意と離れるのではないか

枝野
消費税も含めたバランスが必要。直接税が減りすぎ、間接税への依存度が上がりすぎているのが現状です。公平な税負担をやったうえで、同時に消費税についての複数税率、これは三党合意とは全く関係ないですから、景気刺激策との兼ね合いで消費税を下げることでバランスを取るということは視野にいれています。


直間比率がおかしくなっているから、国家財政がおかしくなっていることは見直さなければいけない問題です。

使用済み核燃料の行き先を決めなければ、進むことも戻ることもできない。エネルギー政策は?

企画委員:2030年までに原発ゼロを目指すと掲げておられたと記憶している。原発政策で与党との違いを野党に求めている国民も多い。原発の否定か、共存か


合流新党は、対立で乗り越えられなかった課題を動かすことができる政党だと思っている。多くの国民、野党にとっても大事なのは、ゼロに向かっていくこと。不毛な論争ではなく、省エネ、新しいエネルギー、地域の電力構成を変えていくことに全力で取り組みたい。

枝野
党の代表選においては喫緊の政策にしぼって18項目をあげていますが、原発政策、エネルギー政策は綱領ではっきり書いた通りです。まず、使用済み核燃料の行き先を決めること。方針は従来と変わらない。核燃料の行き先を決めなければ、進むことも戻ることもできない。その議論をするということは、スローガンを掲げるよりも明確に指針を示しているのではないか。

企画委員:汚染水の問題もある、福島の復興についてはどうか

枝野
住民の皆さんの生業、コミュニティが全く復元できていない。ハードに比べて、ソフトの施策が全く追いついていない。安全の問題であると同時に、安心の問題である。それを置いて汚染水の問題をというのは反対です。


福島の復興、希望の面を世に伝えていきたい。国が関与して安全性の証明をしていく必要がある。

「政治は私たちが見えていますか?」という問いに答える選挙


総選挙は10月25日かもしれないと言われています。7年8ヶ月の総決算、皆さんの暮らしを振り返る時であるということ、様々な疑惑や不祥事をどう総括するかということ、様々な争点があると思います。全国の総支部長の皆さん、自治体議員の皆さんとお話をすると、すみやかに候補者調整、組織統合、国民の負託に応える組織体制を整える必要があると思いますが。

枝野
1つの政党になりましたので、1つの選挙区から複数の候補者が出ることはできないということはご理解いただいた上でご参加いただいていると思う。選定の基準さえしっかりと作れば、別々の党で調整するのは難しいが、これはそれほど難しいことだとは思っていない。しかし、地域の事情などはそれぞれにあるので、候補者調整を形式的に進めるというよりは、一人の候補を応援するというための心合わせが必要だと思います。


総選挙に向かって、党内コミュニケーションの在り方は、新しい時代に合わせた形にしていかなければいけないと思っています。声をあげにくい、届きにくいと言われてきたマイノリティや、政治から遠かった若者や主婦の方、そういった方々ともオンラインであれば党との対話が簡単に可能になる。その延長線上に選挙があると私は思っている。提案型政党ということを私は言っているが、これは政府への提案というより、国民への提案という意味。

枝野
これまで、ネット会議方式などで、一番頻繁に話している方だと週一くらい、様々な政策提言をしていただいています。我々が政策を伝えることも重要だが、オンラインで有効なのは皆さんの声を聞くことができるということ。「政治は私たちが見えていますか」と問いかけられたことが大きな決断の要因になっている。

企画委員:選挙の体制について。野党勢力の方が、与党に比べてより協力が必要になると思うが

枝野
従来の姿勢と変わらないと私は信じているが、相手のあることなので、私の立場から言えるのは、新たに政党を作られる方も含めてぜひ最大限の協力をと思っています。


国民の皆様にわかりやすい構図を作りたいと思っています。綱領、基本政策に基づいて、政権政策と構想を作る。しかし、選挙においては与党対野党、それを作ることが重要ではないか。

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女性も、政党も、同じ社会の壁に立ち向かっている

企画委員
次なる選挙において女性議員が増えなければ、国際社会における日本の地位はがた落ちになる。女性活躍について伺います。


もしかすると次の選挙は来月にも、という話なので難しいとろこもあると思う。ただ、議会のなかに女性が一定数いることのほうが正常なんだという認識で進めていく必要があると考えています。

枝野
次の選挙では期間が足りないし、すでに準備をされている方をどけて女性をということは現実的ではないと思う。しかし、女性が社会の壁に立ち向かっているのと同じ様に、政党もパリテ実現のために大きな壁に共に立ち向かっていきたい。

企画委員:クォーター制についてはどのように考えていますか

枝野
クォーター制を導入する以前に、名簿の順位の付け方について柔軟性をつけて欲しいということについては、一度議員立法を出しているのかな。例えば、名簿を男女別にして、それぞれの一位から選んでいくというようなやり方をとれば飛躍的に女性議員は増えるはずです。


超党派で取り組んでいることでもあります。

それぞれの3年間の良いところ合わせて、合流新党へ

企画委員:お二人の話を伺っていると、同じ党になるのだから方向性は同じだが、細かなところでやはり違いはあるように感じます。今回の合流は、希望の党で分裂した民進党が戻っただけではないか、という見方もある。何が新しいんだろうか、合流新党のセールスポイントは何か


政治のプロがつくる政党ではなく、149名がつくる開かれた政党であるということ。政権をとってしまうと政治と市民の距離は開いてしまうところがある。ある意味では、立憲民主党は市民と改めてつながって立ち上がってきた政党でもあるのではないか。

枝野
2つの側面で全く違っていると考えています。1つは、綱領。民進党までの綱領は自己責任や自助という視点が残念ながら残っていた。明確に新自由主義を否定しているのが現在の綱領です。それから、立憲民主党は地方議員ゼロ、地方組織ゼロ、というところから始めたので、草の根の市民に支えられてきた3年間だった。国民民主党さんは、野党第一党でなくなるというまた違うご苦労をされてきた。全く違う3年間を送ってきた2つの政党ですが、その3年間を捨てるつもりはない。その違った歩みの3年間の良いところ合わせていきたいと考えています。

企画委員:産別、連合系の方との付き合いは

枝野

現時点では国民民主党の内部問題ですので私がコメントすべきことではない。


私は共に歩むことができると思います。国民民主党が別れることになりますが、どちらに大義があるということではなく、どちらにも大義があるということだと理解している。

企画委員:れいわ新撰組との連携についてはどうか


当然、連携の対象だと考えています。

枝野

あらゆる政治勢力、自民党とは違う真っ当な政治をという皆さんには門戸が開かれていると思っています。従来も、門戸は開かれていました。

「政治ってふつうのおじさん、おばさんがやっているんだ」というところからじゃないと伝わらない

企画委員:安倍さんが退陣して、あがった世論調査をどう分析するか

枝野
世論調査の分析は皆さんのお仕事だと思いますが(笑)
もちろん我々も世論調査を分析しているし、この10年おそらく皆さんが思うよりも世論調査をしっかりと見てきている。地域に広がる根っこという部分では、一朝一夕で自民党と同じことが出来るとは思っていない。しかし、広がりかたという意味では、熱意や危機感でカバーできる部分もあると思っています。


安倍総理退陣のあとに支持率が上がったことについては、国民の皆さんの優しさを感じます。ただしそれは政権への評価ではなく、総理ご苦労さま、ということではないかと思っている。政党の支持率と、選挙区の支持率は違いますから。政党が、みんなが自民党になってしまっては良いとは言えない。変わる可能性、変えられる可能性があってこそ、国民生活は向上する。

企画委員:若い世代は安倍政権しか知らない、そういう方にどうアプローチするか


そういう方は多いと思います。政治は悪いもの、派閥が決めるもの、なにか利益のために動く、権威的なもの。そうではないということを訴えていく必要がある。

枝野
アメリカの大統領制など、8年間同じ大統領が続く諸外国も多いので、日本では特別というだけであって、あまり重要視すべき点だとは思っていない。
例えば、私はこの場にも『出来るだけ漢字でなくひらがなで話す』というアドバイスいただいて来たのですが、わかる言葉で話すということが大事。
政治って普通のおじさんや、おばさんがやっているんだ、ということからじゃないと伝わらないと思っています。普通の人がやっている、だからあなたにも出来る。変えられる。そういうことじゃないかな。
政治に関心がない人に「この政策、あなたにいいでしょ」と言ったって伝わらないんじゃないでしょうか。

現政権の問題と、新党が目指すもの

枝野
情報公開と、公文書管理、民主主義のベースが壊されてしまったことが問題。形式的な民主主義すら保てない状態に近づいてしまっていると思う。


公文書管理、情報公開については、立憲民主党の逢坂政調会長と共にかなりやってきました。消防車や救急車など、公的なサービスというのはちゃんとしているものだと国民の皆さんは信頼されていうと思う。しかし、現に官邸や役所で面会をしたはずの人の記録が無くなっている。このことを重く受け止めなければいけない。ましてや、そのことで亡くなった人までいる。
情報は国民のもの。データはなぜ永久保存ではいけないのか。いまあるものを適切に管理するだけでなく、きちんと保存するという観点も必要。

枝野
ご飯論法なども話題になったが、聞かれたことに答えないという状況が繰り返されたのでは、国民の疑問を解き明かすことはできない。


追求する姿だけが国民に見えるようになってしまうことを懸念している。報道にのらなくても、インターネットや、街頭や、チラシで、野党が訴えていることを何度も何度も訴えていく必要がある。そういったことをしたうえで、国民への提案型野党が実現できると思っています。

選挙のためではなく、国民の皆様にわかりやすい選択肢を用意するということが最も大事だと思っている。そのために自民党とは違う、という体質。トップダウンではなく、党内の風通しが良く、誠実に回答し、謙虚にふるまうこと。つまり、多様性と共生を尊重する政党であることを示す必要がある。

枝野
党内の風通しという面では、国会議員が149名しかいないわけですから、世代や性別に関わらず議論ができると思っている。党内で意見が違うことは当然あるが、それをメディアやSNSを通じて外に発信してしまえば、『対立』という風に見られてしまう。内部ではしっかりと議論をする、しかし同時にガバナンスもしっかりとする必要があると思っている。


今回の代表選では、国会議員だけの投票になってしまったことについてはお詫び申し上げたい。時期総選挙後、すみやかに代表選挙を行うべきだと思います。

枝野
次の代表選挙については規約には2年後にということになっていますが、2年を待たずともやれる状況になればやった方が良いと思っています。しかし、総選挙の直後は、我々が最も忙しい時期。また、サポーターやパートナーズ、党員の党費の違いなども含め、これまでお互いが丁寧に説明ができたわけではない。形だけ代表選があったが置いてけぼりになってしまった、ということがないように丁寧な説明が必要だと思います。

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最後に一言


菅さんが叩き上げだ、ということで話題になっていますが、叩き上げが珍しい自民党ではなく、みんなが叩きあげの野党に期待していただきたい。

枝野
明日の暮らしにも困っている皆さん、老後や将来に不安のある皆さん、政治の現状に憤っている皆さん、諦めてはいけません。共に戦いましょう!

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