見出し画像

バスの運転手さんに大声でお礼を言うことについて

 バスに乗っていて、これは一体何なんだろうとモヤモヤすることがある。それはバス停に着いたときに、一部の人が大きな声で「ありがとうございました!」と言いながらバスを降りること。


 お礼を言いながらバスを降りるのだから、むしろ礼儀正しくてよいではないか、なんでそんなにつっかかるんだ、と思われるかもしれない。


 ちなみに私が乗っているバスというのは、前のドアから乗って運賃を払い、後ろのドアから降りる路線バスである。


 私がモヤモヤするポイントは「ありがとうございました!」は言っている人の自己満足でしかないということ。


 バスは降りる人がいれば乗る人がいる。「ありがとうございました!」と言っている人は、果たして運転手さんの様子を見ているだろうか。あなたが「ありがとう」と言っているとき、運転手さんは乗る人の対応で忙しいかもしれない。乗ろうとする人の「一日乗車券をお願いします。」という声をさえぎっているかもしれない。


 しかも、今はまだコロナウィルスが収束せず、みんながマスクをし、会話は控えめにしている状況。それなのにバスという閉ざされた空間でわざわざ大声を出してお礼を言う必要があるだろうか。


 実はこのお作法はコロナ前からあって、ずっと気になっていた。コロナのおかげでなくなってよかった、と思っていたのに、まだ絶滅していなかった。

 だいたい「ありがとうございました!」と言う人はパターン化していて、ほぼスレンダーなお母さんと幼児~小学校低学年の娘さん連れである。きっと「ありがとうございました!」と言いながらバスを降りることが正義なのだろう。どこかでそう指導されているのかな。
 

 でも、少し想像してほしい。それが正義で礼儀正しい動作なら、みんながそうすべきだろう。しかし、仮にもしバスを降りる人全員が口々に「ありがとうございました。」と前方にいる運転手さんに言ったらどうなるか。きっとバスのなかはうるさくてたまらないだろうし、それは運転手さんの仕事の邪魔にしかならない。だから大声で降車時にお礼を言うことは自己満足でしかないと私は考えている。

 では、肝心の運転手さんの反応はどうだろう。たまに「ありがとうございました。」とお礼にお礼を重ねる運転手さんもいるが、ほとんどはリアクションなし。しかも「ありがとうございました」と言う人はバスを降りながら言っているので、運転手さんがリアクションをしても聞こえていない可能性がある。

 バスの運転手さんにお礼を言うのに適しているのは、終点で前方のドアから降車するときだけだと私は思う。そのときは普通の大きさの声で「ありがとうございました。」と言えば伝わるし、乗って来る人がいないので運転手さんは降りる人たちのことに集中できるから。


 そして不思議なのは、お母さん&娘さんの組み合わせ以外で「大声降車時お礼」を言う人は見たことがないということ。もしかしたらこのお母さんや娘さんは一人でバスに乗るときはお礼を言わないのかもしれないなあ。それならどうして一緒のときだけお礼を言うのだろう・・・。また、「大声降車時お礼」が作法として定着したのなら、その人たちの年齢は上がり、人口も増えていくはずなのに、その気配はなさそうだ。


 「ありがとうございました!」という声の余韻が残るバスは、次の停留所に向かって走っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?