品質管理検定2級  #26-01-004

【問 26-01-004】

ある特性を測定する方法には、計測法$${A}$$と計測法$${B}$$がある。この2つの計測法の違いを検討したい。試験片を用意して、測定結果から求める統計量を次のように表す。

計測法$${A}$$による標本平均$${\overline{x}_A}$$、標本分散$${V_A}$$
計測法$${B}$$による標本平均$${\overline{x}_B}$$、標本分散$${V_B}$$
計測法$${A}$$と計測法$${B}$$の測定値の差の標本分散$${V_d}$$
計測法$${A}$$による測定値の平方和と計測法$${B}$$による測定値の平方和に基づく分散の同時推定量(平方和をプールしたものを自由度の和で割った標本分散)$${V}$$

試験片を20個用意して、ランダムに10個ずつに分け、それぞれの計測法で10個ずつの試験片の特性を測定し、計測法によって特性の母平均に違いがあるかどうかを検定する。ここで、計測法によって母分散には違いがないものと考えられる。
このときの検定法と検定統計量はどれか。

計測法
ア. $${F}$$検定、 イ.$${{\chi}^2}$$検定、 ウ.Welchの検定
エ.データに対応のある場合の$${t}$$検定、 オ.データに対応のない場合の$${t}$$検定
カ.適合度検定

検定統計量
ア. $${\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{\sqrt{\cfrac{V_d}{10}}}}$$  イ. $${\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{\sqrt{\cfrac{V_d}{20}}}}$$ 

ウ. $${\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{{\sqrt{\cfrac{V_A}{10}+\cfrac{V_B}{10}}}}}$$ エ. $${\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{{\sqrt{\left(\cfrac{1}{10}+\cfrac{1}{10}\right)V}}}}$$

オ. $${\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{{\sqrt{\cfrac{V_A}{15}+\cfrac{V_B}{5}}}}}$$ カ. $${\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{{\sqrt{\left(\cfrac{1}{15}+\cfrac{1}{5}\right)V}}}}$$

キ. $${\cfrac{V_A}{V_B}}$$ ク. $${V_A - V_B}$$


正解

検定法 オ.データに対応のない場合の$${t}$$検定

検定統計量 エ. $${\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{{\sqrt{\left(\cfrac{1}{10}+\cfrac{1}{10}\right)V}}}}$$

試験片(サンプル)は20個あり、それを10個ずつに分けて、それぞれの方法で計測するとしています。
2つの測定法の結果より、母平均を推定したときに差があるかどうかの検定をします。母平均の差の検定では、$${t}$$検定があります。ただし$${t}$$検定を使うには、母分散が同じという条件があります。問題文中には、母分散には違いがないものと考えられる、とありますので$${t}$$検定で行きましょう。ちなみに母分散に違いがあるならWelchの検定になります。
選択肢には、データに対応がある、とデータに対応がない、の2種類の$${t}$$検定があります。これはそれぞれの10個ずつのデータが測定法によって関連があるかどうか、を考えます。サンプルA1, A2, A3…, A10, B1, B2, B3,…,B10 とあったときに、A1とB1に関連があるか。例えば、同じサンプルを測定していれば関連があると言えます。違うサンプルであれば、独立していますから関連はありません。他の設問で、同じサンプルを測定法$${A,B}$$で測定する、というものがありました。この場合は同じものを測定しているので、対応がある、と言えます。

検定統計量は、

$${t_0=\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{{\sqrt{\left(\cfrac{1}{n_1}+\cfrac{1}{n_2}\right)V}}}}$$

を使います。
計測法$${A}$$による測定値の平方和と計測法$${B}$$による測定値の平方和に基づく分散の同時推定量(平方和をプールしたものを自由度の和で割った標本分散)$${V}$$があります。面倒くさくごちゃごちゃ書いてありますが、式にすると
$${V=\cfrac{S_1+S_2}{n_1+n_2-2}}$$
分母の$${n_1+n_2-2}$$は、自由度の和です。自由度はサンプル数 -1 ですから、$${n_1-1+n_2-1=n_1+n_2-2}$$ となっています。

分子の平方和は、
$${S=\displaystyle\sum_{i=1}^n(x_i-\overline{x})^2=\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i^2-\cfrac{\left(\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i\right)^2}{n}}$$

試験問題でいくつか出てきます。特に一番右の式を使うことが多いです。ホント、関数電卓OKにすれば良いと思います。機種指定でいいから。無理なんですかね?

サンプルはそれぞれ10個ですから、

$${t_0=\cfrac{\overline{x}_A - \overline{x}_B}{{\sqrt{\left(\cfrac{1}{10}+\cfrac{1}{10}\right)V}}}}$$

になります。

ところで、検定結果は絶対ではありません。うっかり、間違っている事もあります。計算間違いじゃなくて、棄却する、しないで、間違う確率があるということです。
帰無仮説 $${H_0 : \mu_1=\mu_2}$$
対立仮説 $${H_1 : \mu_1\not = \mu_2}$$
このとき、$${H_0}$$が正しいのに棄却することを第1種の過誤、$${H_0}$$が誤りなのに棄却しないことを第2種の過誤、と言います。

ではー。


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