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「良い音」よりも「良い時間」を

一つ前に書いた "「音」という最小単位で考える" の中で「現場の音環境」について触れました。それを ちょっと広げて、もう少しだけ自分のサウンドデザインで気をつけてる事を。


◯「良い音で鳴らす」が一番ではない
いわゆる「良い音」で聴いてもらおうとすると スピーカー選び や その位置 が限定的になる場合があります。「良い音を聴かせたい」という気持ちは制作者として当たり前の気持ちだとも思いますが、それが体験価値としては良ろしくない場合も。

天井にスピーカーがあるのは、音がシャワー状に広がる特性もあり、空間全体に音/音楽を聞こえさせるため。だから、スピーカーは天井に吊り下げる・埋め込むのが絶対…では、聴覚へのデザインだけではなく止まらず、視覚的なデザインなど他の範囲にも影響を与えることがあります。
音/音楽を良い音で聴かせる よりも スピーカーが見えない という方が重要っていう場合もあると思っています。

鳴らし方も同じ。空間全体に届けるのが絶対とは考えていません。どこか一部の場所だけで聞こえてきた方が楽しかったり。定位置ではなく、音があちこちから聞こえたり、移動していたりとか。

以前、美容室のサウンドデザインに携わらせていただいた時「ウェイティングルームに置いてある商品があまり売れないんだよ…」とのご相談があり、その商品棚から音を鳴らしましょうと提案したこともありました。


◯時には無音で
こちらは空間の話だけでなく、映像にもプロダクトにもいえる事。
そこに十分な音があったら、むやみに音を追加する必要はない と判断する場合もあります。

そう考えるようになったのは、山形の絨毯メーカー「山形緞通」のブランドムービー楽曲を制作させていただいた時でした。その時は たまたま現場の音が入ったままの状態で映像をもらいました。その環境音がとても美しく、素晴らしいかったんです。まさに「伝わってくる」感覚。それを音楽で塗りつぶさないよう心掛けたのを記憶しています。

・山形緞通のブランドムービー
https://youtu.be/pRO5OTqLgwM


古民家を利用した喫茶店。客席に向かう途中、立派な日本庭園が見える廊下では、音楽は無くてもいいかもしれない。
大きめのサロン。特別なお客様がリラックスする奥のサービスルームでは、遠くで音楽が聞こえる程度でいいかもしれない。


音/音楽だけで伝わる場合もありますし、音と共に映像や空間での体験として伝わる場合も。
映像を見ている時間、その場所で過ごす時間と溶け合うようなサウンドデザインを意識していたいと思っています。

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