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with コロナ COVID―19時代は「クラブとサポーターのチーム力」が試される。5つ目の視点は東京ヴェルディのコールリーダーを務める嘉納伸吾さんの単独インタビュー。

「with コロナ COVID―19とコアサポーター 5つの視点で探すJリーグの明日」の中に掲載したコールリーダー の座談会と単独インタビューだけを読みたいという声にお応えして、小見出しをつけて限定公開することにしました。今回は、コールリーダーが何を考え、何に悩み、どこに向かおうとしているのか?について紹介します。ぜひ最後までお読みください。

 JリーグはJ1を2020年7月4日に再開、J2とJ3を6月27日から再開することを発表しました。この章で紹介するコールリーダーインタビューは、Jリーグが再開を発表した2020年5月29日の翌日30日にZOOMで行ったものです。

(4名のコールリーダーの座談会も併せてお読みいただくと、コアサポーターの現在地をご理解いただきやすくなります。)

ZOOMインタビュー、座談会を開催後、Jリーグからは、具体的に、どのように無観客試合を運営していくのか?横断幕やフラッグは持ち込めるのか?いつからサポーターはスタンドに足を踏み入れることができるのか?といった方針が発表されています。

名門クラブのコールリーダー は、無観客試合開催を前に、何を考えているのか?

 東京ヴェルディは言わずと知れた名門クラブ。1969年に設立した当初からプロ志向のクラブ運営をしてきました。ホームタウンは大都市・東京。Jリーグが始まる前から長いサポーターの歴史があり、その延長線上に、現在、嘉納伸吾さんが所属されるサポーター団体VERDISTA(ヴェルディスタ)もあります。そして、東京ヴェルディは二度目のJ2降格となった2009年シーズンオフに、深刻な存続危機に陥った経験もあります。嘉納伸吾さんは、どのような視点から、withコロナCOVIDー19 時代の応援を見据えているのでしょう。

 Jリーグの再開が決まり、先が見えたということで明るい兆しだと思います。でも、東京都も、また感染者が増え始めているのでJリーグ再開までに第二波が来たらどうなるのだろうというのがある。もう一度、感染者を出さないように気をつけなければならないと思います。通常のオフシーズンと違って、こんなに試合間隔が空くということが無い、しかも、いつ終わるかわからない・・・期限のある中断であれば気持ちを保てたけれど、逆にサッカーのことを完全に忘れるようにして生活していました。

自分たちの首を絞めないように冷静に判断していきたい。

 こういう状況なので、無観客試合という判断が下されることについては仕方ないと思います。その中で応援をどうしていくかということに関しては「何かあったとき」にクラブに迷惑をかけたくないので、Jリーグとクラブが決めたレギュレーションの中でやっていきたいです。もしくは、クラブが裁量を持ってレギュレーションを決められるのであれば「俺たちが出来ること」を最大限盛り込めるように協議をやっていきたいと思います。クラブとは情報交換を密にとっていきたいと思います。(無観客試合でスタジアムの)外で応援とかをして、そこから感染者を出してしまうと「Jリーグやっぱりやんねぇ方がいい良いじゃん」という世論になってしまうので、自分たちの首を絞めないように冷静に判断していきたいと思っています。クラブの担当者とは雑談レベルで、いろいろなアイデアを話したりしています。古くからのサポーターに以前のユニフォームを持ってきてもらい座席に着せれば(緑の)色が出るよね、とか。せめて横断幕くらいは貼らせて欲しいという要望はありますが、例えば横断幕をスタジアムに入れるときに、サポーターをスタジアムに入れるとなったときに感染リスクを回避するための検査が必要なのかとか、消毒が必要だったりとか、クラブに余計な手数がかかるのであれば我慢したほうが良いのかなという考えもあり、まだなんとも判断しにくいですね。
(スタジアムへの入場のルールを)クラブ単位で決めてほしくないと思います。例えば、ヴェルディのような大きなスタジアムで観客数が少ないクラブの試合はアウェイの観客を入れるとか、逆に柏だとかスタジアムが小さくてファンが多いクラブの試合はアウェイの観客を入れないとかをすると不公平感が出る部分もあると思うので。今年は全クラブでアウェイのチケットを販売しなくても良いんじゃないですかね。ま、本当は行きたいですけどね。「感染者数が減ったので来週からアウェイサポーターを受け入れます」とか急に発表されても、一週間ではキツいですし「急に言うな!」みたいな(笑)。

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やっぱり今までの応援方法が一番熱狂的にアツくなれる方法だったのですが。

 ソーシャルディスタンスを保った応援については、まだ何もイメージしていないですね。無観客試合が解消されて(スタジアムで)感染者が発生したりクラブイメージを損なったりしたり、あと、サポーターはみんな顔見知りになったり友達だったりするので、そうした人たちの家族だったり関係者に感染してしまう責任を負いたくないですし、不幸の連鎖を生み出したくないのでルールは守ってやりたい、なるべく安全にやりたいです。
 やっぱり今までの応援方法が一番熱狂的にアツくなれる方法だったのですが、僕らも変化を受け入れるということはやっていかなければならないのだけれど・・・大声で歌うことが禁止になると「そもそもコールリーダーなんて要らないじゃん」ってことにもなりますし、もしかするとコールリーダーという役割の終わりが見えてくるのかもしれない。(レギュレーションで)大声がダメだとしたら大声の基準って何なんでしょうね。声は出せないけれど動きは見せなければならないとなると、極端な例ですが北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)のマスゲームみたいなことをやってくるクラブもあるでしょうね。
 手拍子だけの応援というのが、どのような雰囲気になるのかも分からないですし(J1開幕戦で手拍子だけの応援を当時の)神戸だからできたというのはあると思うのですが、5万人キャパシティの10%くらいを収容した味の素スタジアムでやったらザワザワくらいの雰囲気になったりするかもしれない。そうなってくると僕らの最適解ではないとなるかもしれません。味の素スタジアムは(観客がいないと)全体がグレーで無機質なスタジアムなので少しでもホームスタジアム感を出すためにどうしたら良いのかは頭を捻っていかなければならないと思います。

「クラブとサポーターのチーム力」が試される。

 ソーシャルディスタンスを保つために指定席になってしまっても仕方ないと思います。でも、今までのようにコールリーダーが中心にいて音頭をとって太鼓が叩かれて、それを周りに広げていきみんなで歌っていくというやり方がなくなるのであれば、あまりサポーターが座っている位置は関係なくなるのかなと思います。得点してハイタッチとかも出来ないのであれば隣が誰であろうと関係ないですし。
 横断幕やフラッグのようなビジュアルの部分のスタジアム外での議論が増えて行くのかなと思います。クラブとかリーグ主導でやり方を決めて行くことが多くなるので、これからの応援は「クラブとサポーターのチーム力」が試されるような気がします。クラブとサポーターが同じ方向を向いて手に手を取り合ってお互いを尊重して何をできるのかが重要になります。

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今までは裏方だった人が表舞台に出てくるかもしれません。

 サポーターは「当日に決めてよしやるぞ」みたいな人が人柄的に多いので、それを事前に調整してやって行く必要が出てきます。やり方を今までとは全く変えることを意識していかなければならないです。もしかするとサポーターの中心人物が変わってくるかもしれませんね。今までの、現場で決めて動くやり方のときは声がデカくて現場のリーダーシップがある奴が中心でうまく回っていたのですが、こういう状況ですと、事前に決めて事前に準備をしておく必要が出る。どちらかというと「勢いでやる人」よりも「理論的な人」の方が中心になって動いてもらうこともありそうです。今までは裏方だった人が表舞台に出てくるかもしれません。声が大きいとか毎試合スタジアムにいるといったことで目立つことはできなくなってくるので、周囲からの評価基準が変わってくると思います。

 未来展望は想像がつきませんが、僕は今までの応援方法が好きなので、医療の力を借りてなんとか元の方法に近づける方法を期待しますね。僕らは、過去に、ヴェルディが潰れかけたことを近くで見てきているのでクラブの足を引っ張りたくない。クラブと一緒に効果を最大化できるようなことを考えて、一緒にやっていきたいということが行動基準の最初に来ます。別に良い子ちゃんになるわけではないですけどね。




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