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「自国優先主義」の時代、サッカーファンが対立緩和に役立つ6つの理由。

グローバル主義を拒否し自国の利益のみを追求するという考えが世界中で拡大している。欧州では反移民を主張する急進的な右派政党が急速に支持を伸ばしている。日本国内でも様々な軋轢が生じ、無用な対立が緊張感を高めている。人種や民族に対する差別も露呈している。いまだに、グローバルスタンダードとなった人権の考え方とは大きく乖離する発言をする人が日本には多数いる。そして、そんな発言を支持する人が顕在化している。

スタジアムに通うと、そんな対立が違う世界の嘘のように見えることがある。なぜだろう。

サッカーの代表戦は自国の代表チームが勝利を目指す戦い。しかし、スタジアムでは、極端に政治的な「自国優先主義」は、めったに見えてこない。サッカー観戦(サッカー場)には何があるのだろう。

サッカーファンが対立緩和に役立つ6つの理由を書き出してみた。

1 多国籍、多人種が一つのチームを形成するのが当たり前になっている。

Jリーグでは「外国人選手」「外人選手」と表記しない。「外国籍選手」と表記する。理由は、人としては同じだが「外国籍を有する選手」だからだ。多数の国籍を持つ選手がクラブに所属している。国籍は日本だが出身は外国という選手も多数いる。在日コリアンも多数いる。出場選手枠こそあるが、例え政治的に対立している国の国籍を持っていても「国籍よりもクラブの所属選手」であることが優先されるのが当たり前。クラブを応援するサポーターから、何の疑問もなく声援を受けるのが普通のことなのだ。

2 多くの人が知らないような国・地域・民族の歴史を知る機会が生まれる。

フェロー諸島というデンマークの自治領のことを知っている日本人はどれくらいいるだろう。日本のサッカーファンには有名だ。

旧ユーゴスラビアで、どのような分断の悲劇が起きたのか、そこで暮らす人の視点を意識して語れる日本人はどれくらいいるだろう。サッカーファン同士ならば、きっと一夜で語りつくせないくらいの話題だろう。世界中でサッカーは人々の日々の生活と密接に関係してる。Jリーグや日本代表を追いかけているファンは、来日している選手・監督や国際試合のニュースで多くを知る。選手もそれを自ら語る。だから、自然と国際感覚が身につくのだ。

3 実際にアウェイ遠征で海外を体験する機会が生まれる。

多くのサッカーファンは韓国国民が本音と建前のような二重性を持って日本人と接していることを実感している。例えば、政治的には日本政府と対立する発言が多い韓国国民だが、実際にアウェイ遠征で訪問すると、その手厚い歓迎ぶりに驚かされる。親切にされる、というレベルをはるかに超越し「ガイドに食事も交通費も全て支払ってもらった」というエピソードもある。普通の観光旅行では体験できない交流がスタジアムにはあるため、アウェイ遠征をすると訪問国の本当の姿を理解することができるのだ。

4 差別に No ! と声を上げられる。

サッカースタジアムにも人種や出生を差別するメッセージが掲出されることがある。未だに、これらがなくなることはない。しかし、一つ言えることは、遠慮なく、これらに No ! と声を上げられる環境であることだ。JAPANESE ONLY事件も浦和レッズサポーターの一部が、この幕の存在を問題視し指摘し発信したことから発覚した。

5 世界統一ルールで世界基準の権利や契約の考え方が徹底されている。

サッカーのルールは世界で統一されている。そのルールは、プレーに関することだけではない。例えば、選手の契約、移籍に関しても、一部の例外的なことを除けば統一されている。特に、重視すべき点はルールの根底にある哲学が世界中で共有されていることだ。かつて、選手(労働者)は所属クラブ(雇用主)に強く縛られる存在だった。しかし、ボスマン判決(1995年12月に欧州司法裁判所で出された、契約期間が満了した選手は移籍の自由を得られる判決)により国際移籍制度を改正。これは欧州で労働者の権利が強化されたこと、EU法によって、EU加盟国の国民はEU内を原則自由に移動し、働くことができるようになったことが影響している。このルール改正により、世界中で、契約を満了した選手は元所属クラブに拘束されることはなくなった。そして、サッカーのルールとしてだけではなく、先進的な欧州の移民や労働の考え方を、日本のサッカーファンはいち早く実感することができた。

6 サッカーがあると仲良くなれる。

例え、その人の国ことを知らなくても、その人のことを知らなくても、言葉ができなくても、相手と共通のお気に入りの選手や思い出深い試合を見つけられれば意気投合できる。旅先で、とんでもない田舎のバス停に下されたときに、ドイツ人夫婦と片言の英語で自己紹介し、Jリーグに所属するドイツ人選手の名前で意気投合して共に窮地を脱したことがある。サッカーは世界で最も人気があるスポーツ。サッカーが好きならば心が通じ合う接点がある。

サッカーファンが自然と身につけている国際感覚が対立緩和にきっと役立つ。


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