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仏検読解問題の解き方(0)

 わたし自身は仏検を一度も受けたことがありませんが、試験監督をやったり、受ける・受けたいという方々を数年にわたりフォローしてきて合格まで漕ぎつけた経験を経て、いろいろとわかったことがあります。

そこで、今回から長文読解問題にどのように挑むべきかというのをざっと紹介していこうかなと思います。ちなみに、これから書くことは、DELF・DALFの読解問題にも使えますし、もっと言えばあらゆる文章の読解に役立つものだと思います。

※ ちなみに、公益財団法人フランス語教育振興協会が試験問題のコピペを禁止してしまったので(`ε´)、問題の引用をする際には、問題の元ネタを引っぱってきて解説することもありますので、実際に出題された問題とはやや文章が違うこともありますが、ご了承くださいまし。出題問題を読みたい方は、公式問題集を買わなくちゃなんないんすね・・・高い。

読解は3つの側面から読むべし。

読解問題が苦手な人によく見られる文章の読み方は次の傾向があります:

・ひたすら訳す「ザ・伝統的長文読み」

・初級文法を無視して妄想世界に突入する「安定のナナメ上走行読み」

・流れを無視した根拠のない決めつけで強引にねじ伏せ、軌道修正しない「猪突猛進ジャイアン読み」

読解嫌いな人はたいがい、この3つのコンボ、いわゆるイペールミオップ(hyper myope)「超ド近眼読み」を武器に、実際に書かれている内容から遠いパラレルワールドに旅立たれてしまいます。

実はこれらの傾向を裏返すと、読解を解くためのコツ、というより欠かせない要素となるんですよね。例題を使った詳しい解き方は次の記事から解説を始めていきます。今回は、読解が苦手になってしまう理由について考察してみたいと思います。

長文読解は仏文和訳問題ではない

 かつて、フランスで語学学校のクラスに入って驚いたのは、課題の取り組み方が日本人と欧米人では全然違うということでした。

日本人の学生はすぐに辞書を開く。わからない語を片っ端から引いて明らかにしてからでないと「読もう」としません。だから読了に時間がかかり、しかも一つ一つの言葉の意味は判明したのに、文意がさっぱりわからない「木を見て森を見ず」ということがよくあります。

それに対して、欧米人の学生は、あまり辞書に手を出さない印象がありました。下手をすると、知らない語があるまま読み終え、先生の問いに

「あ、その言葉知りません。どういう意味なんすか?」

なんて平気で言ってのけるのにぎょっとしたこと多々あり。

まあ、ラテン語を母語とする言葉を使う国の人たちは、まずアルファベットに慣れていますし、母国語と同じ綴りの語の発音を変えたり、言葉の順番にちょっと注意するだけで、基本的な構文ルールはそんなに変わらなかったりと、私より明らかに優位なわけですから、それと比べるのは乱暴かもしれません。

例えば、フランス語を習得した後に英語を学ぶことはとても楽に感じます。フランス語ベースで、すでに文法体系が出来上がっているので、それを英語ベースに入れ替えたり、発音に気をつけたりすれば、基本的な文法についてはそれほど苦労することはありません。(ただし、その知識を自由に使いこなせるようになるかどうか、というのは個人差があると思います。)

わたしも学生の頃は、わからない言葉を放置したまま読み進めることが苦手でした。その語が気になり読み進められない。辞書を初めから使うなと言われても、わかんねーもんはわかんねーんだから使わせてくんろ!と、その助言を無視してきました。

しかし!いつもいつもそういう甘やかした読み方ばかりしていると、試験の場で自分の首を締めることになってしまうのです。

試験の時には、もちろん仏和辞書を使うことなど許されません。つまり、自前の語彙で戦うしかないわけです。当然、知らない語が出てくる。その時に、普段どのように読解と付き合ってきたかで勝負が決まるといってもいいかもしれません。

わからない語のある文は、モザイクがかかっているエロ画像のようなもので、周囲の情報から見えない部分を脳内で補完していくことで、我々の脳は全体を把握しようとします。けれど、普段から100%意味クリアーな文しか読む練習をしていないと、モザイク語を流れから外さずに補うことができず、迷走モードに突入してしまう。

このような「全て洗い出してから読解」の致命的な点は、仏検では初級から登場する虫食い問題に対応できないというところです。特に、2級以上で出題される長文中の「( )に最も適切なものを入れなさい」は選択肢の文が長く、内容も微妙で難しいのです。

また、普段の学習で、全ての語の訳を洗い出して満足し、結局文章を理解できていないまま、ということに自分で気づいていないということもあります。仏文の読解問題は、隅々まで完全に理解していなくても正解を導き出すことは可能です。つまり、知らない語があるのは当たり前で、それを含めて文脈を理解できるかどうかの訓練をしなければならないということです。

試験対策の勉強をする時、辞書を片手に長文を丁寧に訳す勉強も大切ですが、その勉強方法が、かえって試験の時に足を引っ張ることになっているかもしれませんよ!

ざっくり話してみる。

 では、読んだ文を理解できているかどうか、手っ取り早く確認するにはどうすればよいか?

長文対策の勉強をする時は、まず辞書禁止で取り掛かります。(次の記事から、実際にどのように長文を読んでいくか、詳しく解説していきますね)

一読したら、読んだ内容を日本語で話してみてください。友達や家族に「今日こんな話を聞いた」とか「こんな記事を読んだ」と話したりしますよね?その感覚で、今読んだ記事をラフに話してみます。このとき、口に出して話したことをノートに書いておくと、後できちんと辞書を使って読み直した後に、自分が勘違いしていた語や文が明確になって、自分の癖や間違うパターンが視覚化できるのでお勧めです。

 読めていれば、話すことができますが、理解できていなければ、自分の言葉で再構築し、内容を伝えることができません。すなわち、読んだけど、読んだだけ。目で文字を追っただけだったわけです。まず、自分は「読んだつもりになっていただけ」と自分で認識するところから始めてください。

内容は、5W1Hを使って簡単に述べる習慣をつけるといいです。すると、読む時もこの6つを手掛かりにできるようになってきます。

Qui 誰? 

Quand いつ? 

 Où どこ? 

Quoi 何を?

 Comment どうやって ? 

Pourquoi なぜ? 

では、次回は読解問題を実際に解きながら、どんな風に文を扱うかについて書いていきますね。

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